企業のSNS活用における法的リスク
スマートフォンの普及で企業のSNS活用が進む一方、法的トラブルに発展するケースも増えています。
今回は松田綜合法律事務所の森田岳人氏に、企業が気をつけるべきリスクやトラブル発生時の初動対応について伺いました。
SNSは、低コストで多くの人に情報を届けられる、企業にとって心強い発信ツールです。本稿では、企業が、これから新しく自社の公式アカウントから発信する場合に絞って、その法的リスクと備えを取り上げます(すでに長年SNSを活用している企業の場合には必ずしも当てはまらないこともあります。また、インフルエンサーへの依頼など、第三者による発信は別の検討が必要です)。
主なリスクは三つあります。
❶不適切な投稿による炎上です。
昨年、ある大企業の公式アカウントが投稿した動画が「女性をばかにしている」などと批判を集め、同社が動画を削除する事態となりました。他社製品を批判したり、配慮を欠いたりする投稿は、損害賠償に発展することもあります。
❷他者の権利の侵害です。
ネット上の画像や他人の文章・写真、市販の楽曲などを無断で使うと、著作権や肖像権の侵害になりかねません。
❸なりすましと乗っ取りです。
会社を装う偽アカウントが顧客に偽情報を送って信用を傷つけたり、アカウントを乗っ取られて不適切な投稿や詐欺に悪用されたりして、会社が損害を被る恐れがあります。
なお、広告であることを隠した宣伝(ステマ)は、2023年から景品表示法で規制されています。自社の公式アカウントからの発信は広告だと明らかなため原則対象外ですが、企業の関与を隠して消費者を装うと規制対象になり得ます。
平時の備えと、トラブル発生時の初動対応
これらのリスクは、二つの備えで大きく抑えられます。第一に、平時のルール作りです。投稿してよい内容といけない内容や、投稿前に責任者が確認する流れをあらかじめ定め、担当者だけでなく社員全体で共有しておきましょう。特に、誤った情報や個人的な意見が会社の見解として発信されないよう注意が必要です。あわせて、パスワードの管理や二段階認証によって、アカウントを乗っ取りから守ることも欠かせません。第二に、トラブル発生時の初動対応です。初動が遅れるほど被害は広がります。炎上に気づいたら、まず社内で事実を確認し、非があれば誠実に訂正・謝罪します。事実を隠したり、反論したりするのは逆効果です。乗っ取られたアカウントは使えなくなるため、まず運営会社に利用停止や復旧を申請し、自社サイトなど別の手段で顧客に注意を促しましょう。誹謗中傷やなりすましの被害を受けた場合には、投稿者を特定する手続(発信者情報開示)などの法的手段もあります。
SNSのトラブルは初動が肝心です。リスクを正しく理解し、平時から社内の備えを整えておくことがSNSを安心して活用するための近道です。

松田綜合法律事務所
マネージングパートナー 弁護士
森田岳人 氏
個人情報・プライバシー、AI・データなど先端分野を中心に企業法務全般に幅広く対応。官公庁プロジェクトや大学研究にも参画し、理論と実務の双方の知見を活かした法的支援を行うほか、データ活用や新規ビジネスに関する法的課題にも対応。
機関誌そだとう227号記事から転載










