ゼロから始めるSNS戦略

従業員一人ひとりが発信者。会社の魅力を多視点で届ける

CASE③株式会社ビー・アンド・プラス

 

 

亀田篤志 社長

株式会社ビー・アンド・プラス
主な事業内容 ワイヤレス給電・充電製品の開発・製造・販売など
本社所在地 埼玉県比企郡
創業 1980年
従業員数 80名

 

「従業員がそれぞれの視点や興味・関心から会社の魅力や面白いと感じることをSNSで発信していく。そのいずれかが、誰かの目にとまればいい。そのくらいの気軽な心持ちで取り組んでいます」
自社のSNS活動についてこう語るのは、株式会社ビー・アンド・プラス代表取締役社長の亀田篤志氏だ。同社は40年以上前からワイヤレス給電の技術開発に取り組んでいる、パイオニア的企業である。

ワイヤレス給電とは、空間を通じて電気を伝えることができる、昨今注目度が急上昇している技術だ。例えば、スマホを専用の充電器や充電パッドの上に置くだけで、ケーブルを抜き差しせずに充電できる「置くだけ充電」や駐車スペースに車を停めるだけで自動的に充電が始まるEV向けのワイヤレス給電、走行中に充電できる「走行中ワイヤレス給電」など、未来の充電・給電技術として知られるようになってきている。

しかし、ワイヤレス給電は決して近年生まれた新しい技術ではない。電動歯ブラシや電動シェーバーには古くからワイヤレス給電技術が採用されているし、工場では自動化を実現するための技術の1つとして、数十年前から取り入れられている。ただ、取り扱う分野がBtoB、かつ産業系が中心だったこともあり、一般的な認知度はそれほど高くなかった。
「でも、近年の技術の進歩によってワイヤレス給電の可能性は大きく広がっています。ドローンと組み合わせて地域の見守りや農作物の獣害対策に活用されたり、ガン治療への応用が進んでいたりします」

ドローンのバッテリー残量が少なくなると自動で充電ステーションに着陸してワイヤレス充電を行い、再び自動で飛び立っていく――この仕組みをつくれば、人手がほとんどかからず、ドローンを長時間にわたって継続的に運用できる。それによって空から地域を見守ったりできるようになる。すでに畑を荒らす害獣対策に利用している事例もあるという。

ワイヤレス給電は、非金属であれば送電部と受電部という電気をやり取りする部分の間に挟むことが可能。それが人体であっても問題ないという特性を活かして、ペースメーカーの充電や、体内で光を発生させてガンを治療する光免疫療法への応用も研究が進んでいるのだ。
「ワイヤレス給電は、それなりに歴史のある技術ではありますが、まだまだ未開拓の部分が多く残されている分野です。言い換えると、“未来をつくる”分野なのです。その可能性や魅力をさまざまな角度から不特定多数の人に伝えていくのに、SNSは適しています」

 

(写真左上)工場現場やトンネルなどでの活躍が期待されている、同社で検討・開発が進む自動ワイヤレス充電対応のレールロボット
(右上)近年、注目が集まるドローンのワイヤレス充電システム。これを使用すれば、無人飛行が長時間にわたり可能だ
(左下)近づけるだけで非接触給電を行える、同社のコア技術が詰まった送電・受電ユニット
(右下)自動搬送車に搭載されたワイヤレス充電システム。非接触の自動充電を行うため、人の手によるバッテリー交換の手間をゼロにできる

ワイヤレス給電情報に限定せず幅広く発信

ビー・アンド・プラスでは、YouTubeやInstagram、X、TikTokなどさまざまなSNSで情報を発信している。特徴的なところは、情報がワイヤレス給電や自社技術解説に限定されていないところだ。

メーカーである同社が取り組んでいる業務改善の事例や季節ネタ、日常の共感話といった、ワイヤレス給電に直接関係のない情報も数多く取り扱っている。
「当社のことを知ってもらいたい対象は、最終的にはお客さまなど一緒にワイヤレス給電の未来を切り拓いていってくれる企業です。しかし、当社のような中小企業と付き合いたいと思ってもらうには、会社の魅力を知ってもらわなければなりません。大企業のようにブランド力だけで信用してもらうのは難しいからです。だから、楽しそうにワイヤレス給電に触れている企業だということを感じてほしい。ワイヤレス給電の未来を創ることにワクワクしながら挑戦している企業だと感じてもらえれば、付き合ってみて面白そうだと思ってもらえそうじゃないですか」

ビー・アンド・プラスは、ワイヤレス給電技術のパイオニアというだけでなく、小型のmWからEV向けの10kW、潜水艦向けの20kWなど幅広い出力に対応し電磁誘導、電界結合、マイクロ波というワイヤレス給電の3技術分野のすべてに取り組んでいる。さらには、リーンスタートアップ=低コスト・短期間で最小限の試作品を開発し、顧客のフィードバックを基に検証&改善を繰り返すことで顧客ニーズに合った製品をつくり上げてきた実績を豊富に持っている。SNSを通じて同社に興味を持ち、少し調べてもらえれば、こういった同社の特徴や強みを知ってもらうきっかけになるというわけだ。

 

(写真上)花瓶に挿すだけで非接触給電され、明かりが灯るワイヤレスLEDインテリアライト「Bouquet」
(下)実際にInstagramに投稿された写真。従業員発案により誕生した、同社の公式キャラクター「わいにゃれす博士」が登場するものも

従業員の自主性任せで発信が盛んな理由は

ビー・アンド・プラスでは、従業員がSNSで情報発信することを義務化しているわけではない。2025年までは営業部門やマーケティング部門が主導していたが、2026年に組織再編を行い、営業、マーケティング、開発といった機能別組織を止め、工場チームやモビリティチームなど領域別組織にしてからは担当者も決めていないという。つまり、従業員の自主性任せというわけだ。それでいて、従業員の半数ほどが何かしらのSNSを通じて会社の魅力を発信しているから驚かされる。

2026年の組織再編で、
従業員同士のコミュニケーション連携がさらに活発に

従業員それぞれメインとなる業務がある中、なぜ、SNSにも取り組もうと思うのか。人事評価と連動しているなど、モチベーションを高める仕組みがあるのか質問してみたが、「特に何もしていない」という返事が返ってきた。
「月に何本アップするといったノルマなどありませんし、InstagramやXなど、ツールごとの使い分けもありません。従業員それぞれがやりやすいツールを使って気軽に取り組めばいいというのが、当社のスタイルです」

当初は、SNSに取り組むにあたってルールを決めよう、アクセス数を上げるためのノウハウを学ぼうといった声もあった。しかし、それをしてしまうと難度が上がり、発信しようというモチベーションを削いでしまうことになる。
「私たちは、アクセス数を上げることが目的ではありません。大切なのは、従業員それぞれが自分の感性で面白いこと、興味深いことを発信することなので、そのハードルを上げる要素は極力排除しています」

決めているルールは、「機密情報を流出しない」こと。その取り決めさえ守っていれば、発信内容は各従業員の裁量に一任しているという。
「守りに入っている中小企業はつまらないでしょう。とにかく前向きに、いろいろなことにチャレンジして、いろんな可能性を発信する。この姿勢だけです」

それでもSNS活動が機能するのは、従業員のチャレンジを促す同社の風土が関係している。

新しいことに挑戦することについて「基本ノーはいわない」のが社長のモットー。そもそも、社長や部長らがプレイングマネージャーとして新しいことに挑んでいき、失敗もする姿を従業員たちが見ているから「自分たちもという前向きな気持ちになりやすい」という。SNSについても、社長自ら「拙い動画を上げているから、従業員も気軽に取り組めるのではないでしょうか」と分析する。

「会社の魅力を発信しようと思えば、従業員一人ひとりが『ビー・アンド・プラスの魅力って何だろう』と改めて自分に問いかけます。黙々と日々が過ぎ去るのではなく、こんな魅力もあるのだという気づきにもなる。SNSに多くの従業員が気軽に取り組むことには、会社に対する意識を変える力もあるのだと思います」

 

 

機関誌そだとう227号記事から転載

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