ゼロから始めるSNS戦略

継続が資産に変わる。「なぜやるか」を明確に

総論 一般社団法人SNSエキスパート協会 代表理事
株式会社コムニコ コーポレートサポートチーム マネージャー 後藤真理恵氏

 

「デジタル時代の現代で、業種や会社規模にかかわらず、SNSを全く活用しないというのは、企業にとって非常に大きなリスクと言えるでしょう」
そう指摘するのは、一般社団法人SNSエキスパート協会代表理事の後藤真理恵氏だ。

リスクの正体は、競争力の低下だ。大手企業を中心にSNSマーケティングが活発化する中、アカウントすら持たず、無策のままでいては後れをとるいっぽうだ。消費者も求職者もSNSで情報を集める時代に、そこへ姿を現さない企業は、自社の情報を知られる機会を自ら手放しているに等しい。

人口が減り続ける中でも、SNSの利用率は増加(総務省調べ)を続けている。10~40代では実に9割前後にのぼり、60代でも8割近くが利用する。

 

 

SNSは若者の暇つぶしの道具、と思っている経営者は少なくない。だが実態は違う。消費者庁の調査では、商品やサービスを購入する際に重視する情報として「SNSの口コミや評価」を挙げた人が、30代以下では約半数を占めた。
「日本人の約3人に1人が、積極的にSNSを活用しています。この実態を、経営者の方こそ理解しておくことが大切です」

近年はChatGPTをはじめとする生成AIに調べものを任せる人も急速に増えているが、後藤氏によれば、AIがその回答を組み立てる際の参照先として、SNS上の情報が使われるケースが構造的に増えているという。
「生成AIの時代と言われますが、だからこそSNS上の口コミ情報の価値は、これまで以上に高まっているのです」

競合が少ない今がチャンス特に採用面で差がつく

こうした時代の変化を受け、大手企業を中心にSNS活用が広がっている。一方、社内リソースが限られる中堅・中小企業の多くは、なかなか手が回らないのが実情だ。後藤氏によれば、本腰を入れていない企業が多い今こそ、先んじて取り組めば他社に差をつけられるという。特に効果が見込めるのが、人材採用だ。
「就職や転職の際にSNSで企業情報を調べることは、若い世代では当たり前です。動画機能を使えば、経営者や従業員の顔、働く様子、自社の技術をリアルに伝えられます。これは人や現場が主役になる中堅・中小企業のほうが、メリットの大きい武器になるでしょう」

では、何から始めるべきか。後藤氏は、SNS活用を「社長直轄の全社プロジェクト」と位置づけるのが理想だとする。進める際は、メインとサブの2人体制で、担当者は兼務でも構わない。その体制で踏むべきは、次の5つのステップだ(図参照)。

 

 

まず、SNSで何を達成したいのか、認知拡大、集客、採用などの「目的(KGI)」を定める。次に、情報を届ける「対象(ターゲット/ペルソナ)」を絞り込む。さらに、各SNSの特徴と違いを理解する。そのうえで、目的と対象に合うSNSと施策を選ぶ。最後に「目標(KPI)」を設定し、定期的に成果を測る。この中でもっとも重要なのが、最初の「目的」を絞り込むことだ。
「目的がいくつもあると、必要なSNSも増え、どれも中途半端になって挫折しやすい。最重要の目的、あるいは喫緊の課題を1つだけ選ぶことがポイントです」

例えば人材採用を目的に選んだとしよう。対象となる新卒の高校生や大学生などの専門領域や居住エリア、思い描く将来像まで、できるだけ具体的な人物像を描く。そのうえで適したSNS( 若者向けならInstagramが有力)を選び、自社を就職先として意識してもらう発信を重ねていく。
「万人に向けて発信すると、結果的に誰にも届かない可能性が大きくなります。対象を明確に定め、その人が興味を持ちそうなコンテンツを届けることが大切です」

「継続は力なり」長期的目線で運用を

SNS活用は、多くの企業が同じところでつまずく。成果がすぐに表れず、続かなくなってしまうのだ。背景には、経営者の思い込みがあると後藤氏は指摘する。SNSを「無料の広告ツール」と捉え、従来の広告のように打てばすぐ売上に跳ね返ると期待してしまうのだ。しかし、その多くは裏切られる。
「SNSは、お金をかけて『消費するコスト』ではありません。ユーザーとの長期的な信頼関係を築く『蓄積する資産』です。このマインドセットの転換こそが、何より大切なのです」

評価の物差しも変えたい。フォロワー数より、エンゲージメント(「いいね」やリポストなどの反応)やリーチ数(投稿が届いたユーザー数)を重視する。そのうえで、小さな目標を1つ決め、週に3本ほど投稿し、最低3ヵ月は続けてほしい。やがて信頼は積み上がり、確かな手応えに変わるはずだ。

 

一般社団法人 SNSエキスパート協会 代表理事
株式会社コムニコ コーポレート サポートチーム マネージャー
後藤真理恵 氏

企業のSNSマーケティングを専門とし、コンサルティング、研修、セミナー登壇、執筆など幅広く活動。さまざまな業種・規模の企業に対し、SNS活用の基礎から実践までを伝えている。主な著書に『SNSマーケティング ケースで学ぶ 成果を最大化する技法とロジック』(ソシム)ほか。

 

機関誌そだとう227号記事から転載

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