トレカン
~Treasure Company~

グローバル三極体制で、顧客の世界市場を支える

株式会社キーテクノロジー
株式会社キーテクノロジー
主な事業内容:
建設機械・産業機械などの部品・部材の製造
本社所在地:
群馬県佐波郡玉村町
創業:
1983年
従業員数:
325名(国内)、855名(グローバル)

 

敷地4万㎡を超える広々とした工場内に響き渡る、加工機械やロボットの稼働音。大がかりな溶接の火花もあちこちで飛んでいる。株式会社キーテクノロジーは、油圧ショベルやダンプカー、クレーン車などの建設機械・産業機械・重電機器の部品や部材の製造を担う企業だ。扱う生産品の規模はさまざまで、大きなものだと4トンを超える。

鉱山向けダンプトラックや、クレーン車の長いクレーン装置部分などを思い浮かべると、大きさが想像できるだろう。日々、巨大な鋼板を相手に、顧客のニーズに合わせた加工を施していくのが主たる業務である。

 

(左)広大な工場内はさまざまなセクションに分かれている。
(右)ロボットにはできない部分の溶接は技能者の手で行われる

2つの海外拠点を活かしグローバル戦略に応える

関東精密鎔断株式会社の社名で創業したのは1983年。総合部品メーカーである、勝代鎔断株式会社(現:カツシロマテックス)の東日本における拠点として、群馬の地に設立された。当時は100%、建設機械メーカー大手のコマツの仕事を請け負っていたが、現在は10ヵ所を超える建設機械メーカーの工場を中心に部品・部材を納めている。

創業当初はガス切断(鎔断)による鋼板加工のみを手がけていたものの、顧客ニーズの変化に応じて業務範囲を拡大。現在は素材調達から切断・二次加工・製缶加工・塗装・組み立てまでを一貫して担う加工体制を構築している。

独自に開発した生産管理システムを用いて、顧客の生産変動に柔軟に対応できる点も同社の特徴だ。創業から40年以上をかけて構築してきた各建機メーカー、高炉メーカーとの強固なリレーションが優位性の1つである。
「お客様はこうした当社の強みをメリットに感じてくださり、自社工場の生産を外製化しています。“ここはうちの分工場だ”とおっしゃるお客様もいらっしゃるんですよ」
代表取締役社長の津田和光氏は、顧客との関係性の強さをこのように説明する。

中国とベトナムに海外拠点を有していることも、重要な利点である。建設機械メーカーの多くは部材の海外調達戦略を取っており、それに応える意味でもこの2拠点が果たす役割は大きい。
「人件費も鋼材調達も、海外のほうが圧倒的に安い。人件費は中国ならば日本の半分程度、ベトナムならばさらにその半分以下のコストで済むわけです。建設機械は基本的に、人口増に伴う都市開発に応じて需要が伸びますが、日本も含め先進国はもう頭打ちの状態です。ですから、どの建設機械メーカーも海外販売・生産に注力し、調達も国内から海外へシフトしています。今後を見据えた上でも、海外拠点があることは非常に重要な要素です。日本、中国、ベトナムの強みを活かして、お客様のニーズに応えたい」

多様な強みを武器に、着実に顧客の信頼を勝ち得てきた同社だが、ずっと右肩上がりに成長してきたわけではない。建設機械業界は、各地域の景気や政治といった世界情勢に左右されやすい業界だからである。津田氏に「繁忙期は?」と尋ねると、「まったく読めません」との返答が。24時間の自動運転が可能な切断機械をフル稼働させるほど忙しい時期もあるが、その波が次にいつ来るかを予測するのは困難なのである。

リーマンショックの際には、年間の売上が6割も減少した。現在は、いわゆるトランプ関税の影響でアメリカへの建設機械の輸出が落ち込んでいるため、足元の売上は3割減少で底這っている。しかし、そうした停滞期にあっても、「思い悩んでも仕方ない」と津田氏は冷静に話す。
「悩まないように生きようと決めています。とにかく次に来る良い波に備えて、やれることを粛々とやるだけです」

環境変化が激しくても、やり切る気持ちを持ち続けることは、どんな状況下でも会社を率いねばならない経営者として、必要な資質かもしれない。

 

(左)建機の足回り組み立て部品も製品の1つ
(右)規定以上の重さの部材は人力での持ち上げ厳禁。
そのため、工場内にはあちこちにクレーンが設置されている

若手が定着する会社へ働き方改革への挑戦

同社は、創業30周年を機に現在の「キーテクノロジー」へ社名を変更した。同時に、先代社長が掲げていた「まごころ」という社訓に具体性を加え、経営理念を刷新。新たに行動規範を定め、全社で価値観を共有しながら、さらなる成長を目指す体制を整えた。

その変革の背景にあったのが、「人材の定着」という課題である。
「以前は、今振り返ると決して働きやすい環境とはいえなかった時期もありました」と津田氏は率直に語る。業務の効率化や制度整備が十分とはいえず、若手社員が将来像を描きにくい面もあったという。

そこで同社は、人事における「採用・定着・育成・活躍・評価・処遇」の各段階を見直し、2015年頃から段階的に施策を実行してきた。

その象徴的な取り組みが、「若手委員会」の設置である。新卒社員が早期に離職する要因を分析した結果、社内コミュニケーションの希薄さが一因と判明。そこで、入社5年目以下の社員が月に1時間集まり、自由に活動できる場を設けた。活動内容はボードゲームやバーベキュー、社内用語辞典の作成など多岐にわたる。経営層はあえて口を出さず、自主性を尊重する姿勢を貫いている。

「会社内に気軽に話せる仲間がいること。それだけで働きやすさは大きく変わりますから」と津田氏。若手の和気あいあいとした雰囲気、そして若手同士の横のつながりが、組織全体に良い影響を与え始めている。

さらに、入社3~4年目の先輩が新入社員を支える「メンター制度」も導入。月1回の面談や食事会を通じて、業務の悩みや不安を共有できる仕組みを整えた。メンターはあえて別部署の社員が担当し、本音を話しやすい環境をつくっている。そこであがった声は総務を通じて経営層や管理職へ共有され、制度や職場環境の改善に活かされている。

研修期間の延長やフォロー体制の強化にも取り組み、積極的に若手を“育てる”文化の醸成を進めてきた。また、育休制度の整備も進み、男性社員の多くが1カ月程度の育児休業を取得するなど、ライフステージに応じて働き方を選ぶ意識が広がっている。

こうした継続的な取り組みが実を結び、2024年には「くるみん認定」、2025年には「健康経営優良法人」認定を取得。こうした第三者からの評価も、同社の歩みを後押ししている。

約10年にわたる組織改革の積み重ねにより、毎年10名以上の新卒採用ができている上に、3年間定着率が90%を超え、社員の会社への定着は着実に改善している。

キーテクノロジーは今、次の成長への基盤とすべく、社員一人ひとりが安心して長く働ける組織づくりに力を尽くしている。

 

(左)木のぬくもりが温かみを感じさせる食堂。安価で食事ができ、社員に人気。
(右)若手委員会が主催し、社を挙げて実施したBBQ大会の様子

下請け企業に留まらない独自技術の開発を目指す

先代の頃から同社が地道に続けているのは、地域への貢献活動である。本社を置く群馬県佐波郡玉村町の自治体には1988年から寄附を継続。
「地元で生まれた企業ではありませんから、先代は地元に馴染もうという気持ちが強かったようです。それで、地域貢献を続けてきました」

津田氏の社長就任後は、地元の大学や工業高校などへの寄附金や工業用具の提供、「ぐんまマラソン」へのボランティア参加、群馬県への寄附など県全域へと範囲を広げて寄附や貢献活動を行っている。2025年には、群馬県立ぐんま天文台のネーミングライツを取得。『キーテクノロジーぐんま天文台』が誕生した。
「玉村町での知名度を、群馬県内へ広げたいとの思いからです。広く知られている会社のほうが、社員の働きがいが増すでしょう。“地域貢献している会社に勤めている”という誇りにもつながるはずです。今後は、採用面などにもメリットが出てくるといいですね」

創業40周年の際、50周年に向けて掲げたのは、「キーテクノロジーを確立して世界で活躍する企業集団」とのスローガンだ。社名でもある自社の「キーテクノロジー」を生み出したいとの思いが込められている。
「当社はいわゆる下請け企業ですから、お客様のニーズを満たすことを何よりも優先して事業を展開しています。けれど、グローバルマーケットにおいてそれだけでは勝ち抜いていけないでしょう。自分たちの独自技術を開発して、それを武器に勝負できる企業になりたい」

取材中、津田氏が何度か口にしたのは、「道半ば」との言葉。目指すべき未来像があるからこその言葉だろう。少しずつ、でも着実に前へ。さながら建設機械のようにどっしりと構えながら、邁進していく。

 

機関誌そだとう226号記事から転載

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