インターンで惹きつける、“好き”が集まる採用のかたち

100年企業が挑む、「次代」を育てる人材戦略

CASE③鈴木治作株式会社

鈴木謙三 社長

鈴木治作株式会社
主な事業内容:
ステンレスバルブ、パイプ等の配管資材の販売など
本社所在地:
東京都千代田区
創業:
1922年
従業員数:
164名

「年々採用が厳しくなり、人が採れない状況が続いていました。インターンシップに取り組まなければ、このまま取り残されてしまうのではないかという危機感があったのです」
そう語るのは、創業から100年以上の歴史を誇る鈴木治作株式会社の常務取締役・鈴木朗氏だ。

今回お話を伺った
常務取締役の鈴木朗氏

「私たちのような中堅・中小企業は、常に『現状維持は衰退』という意識で仕事をしています。次の100年を迎えるにあたり、新しいことに挑戦しなければならない。そうした思いから、インターンシップの導入を決めました」
その言葉からは、この100年企業でさえ、大採用難時代に強い危機感を抱いていることが伝わってくる。

鈴木治作は、石油化学、医薬品、食品(飲料)、半導体、水処理など、社会インフラに欠かせないプラントで使用されるバルブやパイプなどの配管資材を扱う専門商社だ。自社にエンジニアを抱える1922年創業の老舗で、自動弁組立の認定工場も保有する。業界内では「ステンレスバルブといえば、鈴木治作」といわれるほど確固たる地位を築いている。

そんな同社で、2027年卒向けインターンシップのプロジェクトが動き出したのは2025年6月のことだ。
「インターンシップの立ち上げにあたり、まず社内でプロジェクトを発足させました。そこには、東京本社の営業部の若手メンバーほぼ全員に参加してもらっています」
こう語るのは、プロジェクトを取りまとめた管理部副部長の松田佳之氏だ。

採用担当の
管理部副部長・松田佳之氏

しかし、同社はインターンシップの経験がなく、社内にノウハウも存在しなかった。

さらに、大手企業のように人員に余裕があるわけでもない。本当に費用対効果が見込めるのかという不安もあったという。
「35歳くらいまでの若手10人ほどが集まり、『どんなテーマでやるか』『どのくらいの時間で実施するか』『開催時期はいつにするか』など、ゼロから議論を始めました」

ちょうどその頃、投資育成の「インターンシップ伴走支援プログラム」を紹介してもらい、専門家のコンサルティングを受けることになった。
「インターンシップの目的や進め方、コンテンツの内容、プログラムの構成、さらにはアンケートやチャットを活用した学生とのコミュニケーション方法まで、さまざまなアドバイスをいただくことができました。おかげで、なんとか形にすることができたのです」

 

(左)東京都千代田区にある本社。
全国15カ所に事業所があり、スピーディーな納品ができることも同社の強み

(中央・右)鈴木治作の主力製品である「バルブ」は社会インフラの構築に欠かせない。
専門商社でありながら、自社にエンジニアが在籍しているため、柔軟な対応が可能だという

試行錯誤でつくり上げた“刺さる”プログラム

プログラムは、経営陣だけではなく、学生に近い年齢の若手社員が中心となり、「どんなテーマなら興味を持ってもらえるか」を議論した。

そのコンセプトは「堅苦しくなく、楽しみながらバルブ・配管業界や商品、会社に対する理解を深めてもらう」こと。松田氏は、プログラムに込めた狙いを次のように語る。
「参加した学生が『来てよかった』と思える“お土産”のようなものを持って帰ってもらいたいと考えました。当社だけではなく、バルブ・配管業界の会社を受ける際にも、役立つ知識をインターンシップで身につけてもらえたらと思ったのです」

その狙いをもとに、鈴木治作は2つのプログラムを作成した。

1つ目は、「専門商社探検ツアー」と名付けたプログラム。同社の商流を確認しながら、専門商社が果たす役割を学ぶ。そのうえで、営業職として顧客に商品を提案するまでのロールプレイを体感してもらう。顧客ニーズの確認、提案、見積書の作成、発注、納品までの流れを体験でき、営業の仕事をリアルに理解できる内容となっている。

もう1つのプログラムが「バルブ探偵団」だ。主力製品であるバルブについて、どの業界のどのようなプラントで使われているのか、そしてどんな役割を果たしているのかを、学生がイメージしやすい形で学べる内容で組み立てた。
「バルブは学生にとって馴染みの薄い商材なので、どうしてもプログラムの内容が難しくなってしまうことが課題でした。そこで、コンテンツのネーミングを好奇心をそそるものにしたり、先輩社員が登場してアドバイスをする仕組みを入れたりと、さまざまな工夫をしました」

その根底にあるのは、「まず業界を知ってもらい、そのうえで自社を選んでもらいたい」という考えだと松田氏は続ける。
「いろいろな業界や企業をみたうえで、当社を選んでもらえればうれしいですね」

 

2025年、内定者向けに実施した1DAYインターンシップの様子。
このときは「バルブ探偵団」のプログラムを開催。
参加者からは業界や製品のことがよく理解できたとの声が

インターンの取り組みが従業員のスキルアップに

このプログラムづくりを通じて、部署を超えた若手社員同士のコミュニケーションも増えたという。横のつながりが強まり、営業社員も採用活動に積極的にかかわるようになった。鈴木氏はその変化をこう語る。
「毎年、会社説明会では『先輩インタビュー』というコーナーを設けています。そこで、学生に自社の特徴や強みを積極的に話す社員が増えてきていると感じています。プログラムづくりを経て、採用も自分たちの仕事の1つだという当事者意識が、従業員により強く芽生えてきたのではないでしょうか。インターンシップは、若手社員の育成にもつながっていると感じています」

人事部門である管理部では、営業社員のスケジュールを確認しながら丁寧に日程調整を行い、できるだけ無理のない形で採用活動に参加してもらえる体制を整えている。その結果、多くの従業員の協力を得ることができていると松田氏は言う。
「学生にはこのインターンシップを通じて、当社の社風に触れてもらい、『ここなら楽しく働けそう』『将来こんな仕事がしたい』と感じてもらいたいですね」

採用イベントではなく戦略的採用チャネル

大手企業と比べて、中堅・中小企業の採用情報は、就職情報サイトに掲載するだけでは学生の目に留まりにくい。説明会やセミナーへのエントリーもなかなか集まらないのが実情だ。そうした中で松田氏は、インターンシップの位置づけをこう語る。
「インターンシップは単なる『採用イベント』ではなく、『戦略的な採用チャネル』だと考えています。短い期間で応募者を獲得するための有力なコンテンツの1つです」

まずは短期の就業体験型プログラムから始め、学生の反応を見ながら内容をブラッシュアップし、本格的なインターンシップにつなげていく予定だと松田氏は話す。
「そのために大切なのは、気軽に参加でき、わかりやすくて楽しいこと。そして他社との差異化が感じられ、学生にインパクトを与えられる内容であることが重要です。インターンシップは1回1回が勝負。回を重ねるごとに改善していかなければいけないと思っています」

実は、このプログラムでもっとも苦労したのは、若手社員から出てくるアイデアが多すぎて、それをまとめることだったという。

社長室のドアは常に開かれており、若手も直接社長へ相談できる。そんなオープンな社風を持つ同社ならではの“贅沢な悩み”だろう。

若手社員を中心につくり上げたインターンシップは、今年から実施予定。次の100年を担う人材を迎える挑戦は、今始まったばかりだ。

 

 

機関誌そだとう226号記事から転載

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