インターンで惹きつける、“好き”が集まる採用のかたち

ものづくりの面白さを伝える「現場体験型」プログラム

CASE②大日本法令印刷株式会社

田中達弥 社長

大日本法令印刷株式会社
主な事業内容:
法規関連書籍、一般書籍(文庫・新書)等の製版・印刷・仕分け・発送など
本社所在地:
長野県長野市
創業:
1911年
従業員数:
176名

 

「弊社のインターンシップは2005年から続けており、私自身もインターンシップを経て入社しました」
そう語るのは、大日本法令印刷株式会社でインターンシップを取り仕切る総務課長の手塚文子氏だ。

総務課長の手塚文子氏

1911年に創業、100年以上の歴史を誇る同社は、法規関連書籍や一般書籍の製版・印刷・製本から仕分け・発送までをトータルで受注するものづくり企業である。いわゆる製造業にカテゴライズされるが、近年では紙媒体だけでなく、電子書籍などのデジタルコンテンツ制作やシステム開発も自社で手掛け、情報加工から製品化までをワンストップで提供しているのも強みだ。拠点は長野県と東京都にあり、主な顧客は関東圏だが、近年は関西方面にも取引を広げているという。

同社が20年以上続けているインターンシップの中心は、5日間の職業体験型プログラムだ。特徴は、「現場に入り、実際の仕事を体験すること」を重視している点だと手塚氏は話す。
「本作りの仕事を一連で体感できるよう、現場での実習を中心にプログラムを組んでいます」

製版から印刷、製本までを一貫して手がける大日本法令印刷だからこそ、学生が本作りの一連の工程を学べるプログラムを構築しているのだ。インターンシップに参加した学生はDTP(製版)の現場や印刷現場などでの実習、営業同行などを通じて、本作りの一連の流れを学ぶことができる。さらに、人事担当者との情報交換や先輩社員との交流会もインターンシップ内で実施。社内の雰囲気や働く人の姿がわかるように設計されている。

 

(左)同社内には、製版から印刷・製本、発送まで一貫生産を行える体制が整っている。
そのため、スピーディーで柔軟な対応が可能だという

(右)法律書や一般書籍の製版・印刷・製本のほか、電子書籍の制作や関連システムの
設計・開発も手掛けている役職や部署の垣根を越えて、日常的に活発な意見交換が行われている

製版、印刷、製本……。本作りの工程を実践で学ぶ

「近年はオンラインのインターンシップも増えているようですが、弊社では『直接顔を合わせて、社内の実際の業務や雰囲気を体感してもらう』ことに重きを置いています」
そうプログラムについて話すのは、同じくインターンシップを担当する総務主任の坂本瞳氏だ。

総務主任の坂本瞳氏

1回のプログラムで受け入れる学生は最大5人。少人数だからこそ、工場から営業現場まで幅広い部署で実習を行うことができるが、その分、各所との調整は簡単ではない。全社をまたいだ準備や協力が必要になるからだ。
長年インターンシップを行っている大日本法令印刷では、人材採用が社長からも経営課題として全社に発信されており、受け入れ態勢は社内に定着していると坂本氏は語る。
「インターンシップの時期が近づくと『学生さんがそろそろ来るんだよね』と声がかかったり、各部署が事前に資料を準備してくれていたり、学生用に仕事を用意してくれることもありました」

まさに、全社で学生を受け入れる態勢が確立されている。
「私がインターンシップに参加したときも、『こんなに多くの社員さんにかかわれるんだ』と驚いた記憶があります。その雰囲気は、今も変わっていません」と手塚氏は当時を振り返る。

プログラムを実施する上で、同社が特に大切にしていることがあると坂本氏は続ける。それは、できるだけ実際の仕事の流れに沿った形で体験してもらうことだ。
「各部署には、なるべく本来の業務の流れに沿って、学生が体験できるようお願いしています。また単なる補助作業ではなく、その仕事の意味や、前後の工程とのつながり、やりがいや面白さまで必ず伝えられるように依頼しています」

参加した学生からは、「実際に工場に入れたのは、ここだけだった」「現場に入り込み、仕事の雰囲気やプロの仕事を実感できた」といった声が多く寄せられているという。こうした評価もあり、大学のキャリアセンターから積極的に推薦してもらえることも少なくない。
学生にとっては、いわば「大日本法令印刷へのプレ入社」のような体験だが、そのリアルさこそが大きな価値となっているようだ。

 

(左)インターンシップの参加者は読書好きやものづくりに興味がある人も多く、
本作りの過程に触れ、目を輝かせる学生も少なくないという

(中央)製版部門での実習の様子。印刷するための版をつくる過程を学ぶことができる
(右)役職や部署の垣根を越えて、日常的に活発な意見交換が行われている

気軽に参加しやすい2日間のインターンも

さらに、同社では5日間の職場体験プログラムに加え、参加しやすい2日間のオープンカンパニー型のインターンシップも実施している。
「1日目は企業オリエンテーションや社員との交流を中心にした座談会、2日目は本作りの仕事を体感できるようなちょっとした実習を行っています」(手塚氏)

工場実習や営業同行などは含まれないものの、DTPデータの作成や簡単なコーディング、印刷用紙に触ってもらう体験など、現場の雰囲気を感じられる実習を用意している。

加えて本社のある長野県は早くから産学官連携に積極的で、インターンシップの推進にも力を注いでいる。県が行っている支援制度「シューカツNAGANO応援助成金」は、学生の交通費や宿泊費などが助成される仕組み。この制度は同社のインターンシップにも適用されるため、日程調整が比較的容易な2日間のプログラムには、他県からの参加者が増えているという。

仕事内容を理解して入社。ミスマッチの少ない採用へ

大日本法令印刷が展開するいずれのプログラムも、学生が実際に手を動かしながら仕事を体験することができる内容だ。そのため、「自分はこの職種に向いているのか、向いていないのか」を応募前に判断できる場になっている。さらに、就業体験を通じて得られる自己理解が、その後の就職活動における指針になることも期待していると坂本氏は言う。
「このインターンシップが、学生が自身のキャリアを考えるうえでのヒントになればと考えています」

また、インターンシップを経て、同社に興味を持った学生に対しては、通常の選考とは別枠で案内を行い、早期の内定出しにつなげる仕組みも整えている。
「インターンシップを始めたきっかけは、学校側から『2週間ほどの職場体験プログラムを実施してほしい』という依頼を受けたことでした。そこから毎年続けてきましたが、インターンシップが直接採用につながり始めたのは、令和に入った頃(2019年)からだったと思います」
そう話すのは、開催1回目のインターンシップで主担当をしていたという取締役・総務部長の田中淳氏だ。

取締役 総務部長の田中淳氏

もともと同社は離職率が低い会社だが、令和以降インターンシップを経て入社した社員は10名。そのうち、離職したのは1人だけだという。
「仕事内容を十分に理解して入社してくれるため、ミスマッチが少ないと感じています」と田中氏。

一方で、地方の製造業にとって採用環境は年々厳しさを増している。特に同社が課題として挙げるのが、IT人材の確保だ
「印刷業界でもITの知識は不可欠ですし、弊社では自社でプログラム開発も行っています。情報系の知識を活かせる会社であることをしっかりと伝え、IT系の人材をどう獲得していくかが課題です。今後は〝業界をリードするような仕事ができる会社〟であることを、これまで以上にアピールしていかなければならないと考えています」

他社にはない「現場体験」の価値を、今まで以上にいかに工夫し魅力的に伝えていくか。そこに、同社の採用活動をさらに発展させるヒントがありそうだ。

 

機関誌そだとう226号記事から転載

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