学生の成長に伴走し、自社の“ファン”にする
共創学部 地域共創学科 教授 今永典秀氏
採用活動をめぐる環境は、コロナ禍以降、大きく変化している。学生が企業情報を容易に収集できるようになったことで、知名度の高い大企業に応募が集中する傾向が一段と強まった。新卒の売り手市場が続き、今や大企業さえ採用に苦戦するといわれる時代。合同説明会の集客も思うように伸びず、頼るは就職活動サイトのみという状況に陥っている企業も少なくないだろう。
では、こうした逆風の中で、中堅・中小企業はどのように学生との接点を増やせばよいのか。その有力な手段の1つが、インターンシップだ。
「今や学生の8割が、何らかのインターンシップに参加している。そんな時代になっているのです」
そう語るのは、インターンシップの実践と研究に取り組み、企業やNPO法人のアドバイザーも務める今永典秀氏だ。学生の間では「就職活動は、まずインターンシップに参加することから始まる」という意識が広く浸透しているという。

企業がインターンシップを実施する本来の目的は、「学生を育て、採用につなげる」ことにある。今永氏は育てる、つまり働くことを教えるという点において、中堅・中小企業に優位性があると指摘する。
「知名度では大企業が有利かもしれません。しかし、『働くこと』の実態をより深く、リアルに伝えられるのは、中堅・中小企業なのです」大企業では業務が細分化されている一方、中堅・中小企業では一人ひとりの役割や責任範囲が広く、仕事の全体像ややりがいを実感しやすい。「業務を一貫して自社で担う企業も多いため、仕事の内容や必要なスキル、やりがいまでを具体的に伝えることができるのです」
“すぐプロポーズ”はNG。段階的なアプローチを
こうした優位性を活かすために、中堅・中小企業は実際にどのようなステップでインターンシップを展開していくべきなのだろうか。
「インターンシップは、結婚を前提としたお付き合いのようなものだと私は考えています。出会って10分で『結婚しましょう』と言われたら、誰でも引いてしまいますよね。まずは会社を知ってもらい、ファンになってもらうことが大切です」
一度のインターンシップで即座に採用成果を求めるのではなく、まずは興味を持ってもらうこと。そのうえで、仕事をより深く理解してもらう。このように、学生の心理に寄り添い、段階的な目標を設定することが重要だという。
そして、インターンシップを成功に導く上で何より欠かせないのが、学生との関係性を丁寧に築いていくことだと今永氏は続ける。
「まず意識すべきは、担当者が『笑顔で対応すること』。誠実で温かい対応は、学生に『雰囲気の良い会社だ』という安心感を与えます。次に重要なのが、『この会社で何ができるのか』を具体的に解像度高くイメージを伝えられること。業務体験を通じて、学生が入社後の自分を鮮明に描けるように導くのです」
さらに、今永氏は「他社と比較してもらうこと」も大切だと強調する。
「学生にとって複数の企業を比較検討するのは当然のことです。それを否定するのではなく、むしろ積極的に他社を見てもらい、納得した上で入社を決めてもらう姿勢が重要でしょう。また、一人ひとりの成長に寄り添う姿勢も欠かせません。『自分を理解し、育ててくれる会社だ』という信頼が芽生えれば、愛着も生まれてくるはずです」
一方で注意すべきは、プログラムの内容が自社のPRに偏りすぎること。さらに選考ではないのに、学生を根掘り葉掘り追及するような質問は、不信感を抱く原因となるのでNGだと今永氏は話す。

全社一丸となって、自社の魅力を伝えていく
学生との信頼関係を深める上では、インターンシップ中のフィードバックも重要視されているが、その手法には細心の注意が必要だ。
「ありがちなのが、学生の弱みをストレートに指摘してしまうケースです。『君は営業には向いていなそうだね』といった言葉は、学生を深く傷つけます。社内教育では許容されるかもしれませんが、そうした言葉を浴びせられた学生は、二度とその企業を訪れることはないでしょう」
フィードバックでは、体験を補足する形で、自社の取り組みや考え方を伝えるべきだと言う。
「大切なのは、学生がいかに理解を深められるよう支援するか。それこそが、企業のあるべきインターンシップの姿ではないでしょうか」
加えて、プログラムの設計は若手社員が担い、社内調整などのバックアップはベテランが務める。このように世代を超えて連携する体制が、運営の理想形といえる。そして何より不可欠なのが、全社一丸となって自社の魅力を伝える姿勢だ。
「懸命に取り組んでいる中堅・中小企業には、必ず『キラリと光るもの』があります。顧客を大切に、きめ細やかな対応を積み重ねる。その真摯な姿勢を、そのままインターンシップで学生に向ければよいのです」

Co-Innovation University 事務局長
共創学部 地域共創学科 教授
今永典秀 氏
日本インターンシップ学会常任理事。大手銀行、不動産会社勤務を経て、岐阜大学地域協学センター、名古屋産業大学地域連携センター長などを歴任。2026年4月開学のCo-Innovation Universityの立ち上げ・運営に携わる。主な著書に『長期実践型インターンシップ入門』(ミネルヴァ書房)ほか。
機関誌そだとう226号記事から転載










