変化の時代を生き抜く「事業再構築」

“理想の職場”追求で、改善&進化

~働き方の選択と円滑なコミュニケーション推進で効果を狙う~

CASE③株式会社リューツー

「従業員が輝いていないと、お客様は大切な車を預けてくれませんよ。だから、『楽しくってしゃあない』と思える会社をつくるんです!」

こう力強く断言するのは、北海道で、年間2万台の入庫実績を誇る、自動車整備企業・リューツーの小川信明社長だ。「従業員満足があってこそ、顧客満足が生まれる」ことを信念に、働きやすい環境を整え、変化の時代を勝ち抜こうとしている。

 

小川信明社長

株式会社リューツー
主な事業内容:
総合自動車サービス業、乗用車ならびに大型車整備全般、鈑金塗装・修理全般、国産自動車・輸入自動車の販売、中古自動車の販売、損害保険代理業
本社所在地:
北海道札幌市
創業:
1973年
従業員数:
80名

海外生活を経て感じた働き方の疑問を解消

車検、整備、販売など、自動車関連サービスを、ワンストップで提供する同社は、従業員と顧客の満足を両立させるため、“役に立つ”ことを、経営理念に掲げている。
「それは、すなわち『ありがとう』と言われること。お客様からはもちろん、社内でも『ありがとう』と声をかけ合える会社をつくりたい。従業員のモチベーションが、道内で一番高い会社を目指しています」

修理工場を併設する同社。「車検のコバック」に
フランチャイズ加盟するため、その看板が目立つ。

ビジョンを明確に語る小川社長だが、同社に入社したのは、27歳のとき。それ以前はバックパッカーとして世界中を巡っていた。
「世界各地の都市を旅してきてから、北海道を見つめ直すと、本当にすばらしい場所であることに気づきました。海外でも働く機会はありましたが、北海道で働こうと決めたのです」アルバイトとして入社した“社長の息子”に、周囲は技術だけでなく、率直に現場の意見を教えてくれた。
「リアルな現場を、経験することができました。これは、今でも大きな財産となっています」

そこで知った従業員の声や自身の経験が、「働きたいと思える会社にしていこう」という、現在の社長としての信念につながっている。また、もともと、海外での生活が長かっただけに、当時、同社で行われていた、休日出勤もいとわない働き方にも疑問を感じていた。
「月に1回は連休がないと、恋人や家族とゆっくり過ごせません。自分が満足していないのに、他人を満足させることはできないと、入社後すぐ幹部に訴えました」

今でこそ、従業員満足の追求は多くの経営者に知られているが、20年近く前はまだまだ一般的ではなかった。小川社長の考え方は、時代の先を捉えていたのだ。

人事を担当する、専務となってからは、ワークライフバランスを意識した具体策を次々導入。その一つが、2015年にスタートした「限定社員制度」だ。

これは、「介護施設に親を送るため、週3回は午前中、休みたい」「幼稚園に通う子のお迎えで、毎日午後3時には退社したい」など、個人の都合に応じて時間や曜日を、自由に決めて申請すれば認められる制度で、限定社員になるための要件・制約は、特に設けていない。

給料は、どの程度出社するかなどに応じて変わるが、福利厚生は正社員と同じだ。都度、休みの報告をしなくて済むので、気が引けることもなく、周囲の理解も得やすい。
「ライフスタイルの多様化により、今後、いろいろな働き方をする人が出てくるでしょう。そうした人が働きやすい場にしたいと考えました」

やりたいことや自分の幸せを、考える時間の創出につなげるため、休暇についても取得を奨励している。
「例えば、『半年ぐらい旅に出て、やりたいことをやって戻ってきます!』という事例があってもいい」とおおらかだ。小川社長自身も、育児休暇を率先して、しっかりと取得。「従業員から『社長が取ってくれたので、自分たちも取りやすい』と感謝されました」と顔をほころばせる。

“横の連携”強化によって部門間の垣根を低く

「ここで働きたい!」と思える会社をつくるには、何が必要なのか。給料、休み、働く仲間……、それらを改善し続けるために、小川社長は、従業員からも積極的に意見を求める。その具体的な手段として休憩室に設置したのが、「提案改善ボード」だ。

休憩室にある「提案改善ボード」。付箋に書かれた提案は、
誰でも見ることができ、採用・却下の理由も公開される
ため透明性が高い。

休憩室に設置した、このボードは、「改善案」「検討中」「実施」「却下」の4つの欄に区切られている。改善案を付箋紙に書いて貼ると、会社は、回答を書き添えて「検討中」の欄に移し、結果が出たら、「実施」か「却下」の欄に貼り出す。

提案は業務以外のことでも構わない。これまで200件以上の提案が寄せられてきたという。

このほか、社内の“横の連携”を、強化することにも注力。その一つが店舗や職種のジョブローテーションだ。かつては技術と営業をまたぐ異動はなかったが、現在では店舗のみならず職種も変わる人事異動を定期的に実施。従業員の知識が広がり、新たな気付きを得られ、それぞれが顧客からの問い合わせに、スムーズに対応できるようになった。

もう一つは、「社内部活動」の奨励だ。現在、ゴルフ、焼き肉、ミニ四駆、ラーメンなど多彩な部が活動している。結成条件は、3人以上で2部門以上にまたがるメンバーが参加し、活動の様子を撮影して報告すると年間1人1万円まで部費が支給される。
「社員間コミュニケーションが図れ、部門間の垣根が低くなりました」と、業務上でもプラスとなっている。

ただ、働きやすい環境を整えても、人手不足の問題には、頭を抱えていた。これが解決しないと結局、従業員に負担がかかる。そこで考えたのが、外国人の雇用だ。多くの自動車部品は、名称が英語なので、英語圏のフィリピンから“将来の夢”を持つ技能実習生4名を、受け入れた。「特に不安はありませんでした。むしろ、彼らならやってくれるという自信と期待しかありませんでした」

 

(左)採用した外国人実習生と小川社長。面接時には、それぞれの本国・自宅に訪問したこともあったという。
(右)整備をする外国人実習生。

“外国人実習生”効果で全社のレベルを上げる

自動車整備のメカニックは、常に人手不足だ。地元最大の自動車整備学校が廃校になるなど、人材獲得競争は激しさを増し、中途採用も同業者との取り合いが続き、同社を去っていく従業員もいた。管理職のなかには、「自分が悪いのではないか」と、考えてしまう人も。

このままでは、社内のモチベーションが上がっていかない……。そこで、小川社長は、“将来の夢”を持つ、外国人技能実習生の採用を起爆剤としたのだ。
「従業員は、不安そうでした。でも、実際に一緒に働いてみると、みんな驚くばかり。とても素直で、一生懸命。しかも現地で自動車整備を学んでからの来日だったので、即戦力にもなり、管理職も大喜び。従業員とも次第に打ち解け、プライベートでも一緒に出かけたりしています」

そして、実習生が困らないよう、よく使う「交換(change)」「調整(adjustment)」といった言葉を英単語表にして、全従業員に配布。誰でも、意思疎通ができるようにした。8名の実習生に加えて、今年度、正社員として採用したネパール人とミャンマー人の2名が働く。この両名は、もともと語学学校の留学生で、店長らが主に面接をして選抜した。

実習生たちは、「こんなに難しい整備を教えてもらった」「みんなで釣りに行った」など、SNSで楽しげな様子を発信する。

それが、「彼らの満足度」だと小川社長は捉えている。実習生の過酷な労働環境がメディアで取り上げられることがあるが、同社には無縁な話だ。いまでは、実習生受け入れのモデルケースとして、外部機関からも高い評価を得ている。

彼らの働きぶりに、日本人従業員たちは「負けてられない」と奮起。結果的にお互いが切磋琢磨して、会社のレベルが上がってきている。
「今までは、人を集めないといけなかったのが、おのずと集まる会社に変わりつつあります。これからは、人手不足のためにできなかったことにも、取り組んでいきたいですね」

 

小川社長は意気込みをこう語る。創業50周年に当たる来年は、10年来の課題だった老朽化した店舗を、移転統合して新店舗を出す予定だ。

働き方の多様化と社内環境整備、人手不足の解消により、従業員がイキイキと働くようになった。

外国人登用も、さらに積極的に進め、将来的には、母国に戻る技能実習生が独立する際の出資を通じて、海外へ展開することも視野に入れている。

加えてホームページの充実やアプリ開発、次世代の車社会に向けたIT&DXへの投資など、取り組むべきことは多い。小川社長は、従業員にあらためて自社の存在意義や施策の狙いを訴える。
「北海道の物流を守っていくのは私たち。また、車を直す仕事とは世の中の笑顔をつなぐ仕事であり、私たちはそれを担っている。だから、こうして未来に向けて走っていくんだよ、と従業員に伝えています。そのためにも、『楽しくってしゃあない』と感じてもらいたいんです。だからこそ、これからも、さらに働きやすい会社をつくっていきます!」

そう語る小川社長の目は、イキイキと輝いていた。同社の従業員満足の追求は、これからも続いていく。

機関誌そだとう208号記事から転載

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