魁企業列伝

商品力×マーケティングで消費者のすそ野を広げる

株式会社鈴商
ハロウィンシーズン限定で 渋谷センター街に登場した 「TENGU HOUSE」 (2018年10月)。

ハロウィンシーズン限定で
渋谷センター街に登場した
「TENGU HOUSE」
(2018年10月)。

ハーシーチョコレートをはじめ、有名ブランド食品を輸入する鈴商。1919年の創業以来、圧倒的な商品力で好業績を続けてきたが、2014年3月期に初めて営業赤字に転落した。

それを機に経営改革を進め、V字回復を果たした。その秘訣を取締役財務部長の安藤丈夫氏は、こう振り返る。

「扱っている商品のブランド力が高く、それ故、ブランド力に頼りすぎてしまい、弊社自体が世の中の変化に対応できていなかった」

同社は約50にも及ぶブランド食品を輸入しているが、シリアルだけ、紅茶だけなど特定商品に絞って輸入を手掛ける同業者が参入、あるいは小売店が自ら輸入して販売するケースも増え、商流が変化。加えて、円安の進行や大手ファストフードの異物混入事件に起因する輸入食品への信頼低下という逆風もあった。

「弊社の商品を選んでもらうためにはどうすればいいのか。もう一度、考え直さなければいけませんでした」

そこで整えたのは、部署の枠を超えて上司も部下も関係なく、意見交換ができる環境だ。仕入れも営業も部署ごとに縦割りで業務を担当し、横のつながりが少なかった体制を刷新。主要ブランドにプロジェクトチームを設置、各部署からメンバーを選出して、マーケティング会議を重ねた。

結果、出てきたのは、消費者へのアプローチだった。同社は輸入商社として二次卸や問屋に商品を提供するBtoBビジネスが基本。しかし、その先にいる消費者にもっと商品を知ってもらわなければ需要は増えない。

テングブランドの ビーフステーキジャーキー。

テングブランドの
ビーフステーキジャーキー。

とくに主力商品であるテングブランドのビーフジャーキーは、消費者の高齢化が進んでいた。

「たんぱく質が手軽に摂れるヘルシー食品で、若年層にも受け入れられる要素は十分にあった。培ったブランド力もある。にもかかわらず、最近の若年世代には販売が伸びていませんでした」

安藤氏が入社したのは、2013年4月。改革が始まったときは入社から1年ほどしか経過していなかった。

「あるとき、銀行の担当者に『テングブランドのビーフジャーキーはなぜ他社の商品より高いのか』と問われ、即答できませんでした」

調べてみると1枚のステーキ肉を凝縮させて作っていた。だから商品パッケージには「ビーフステーキジャーキー」と記されている。一方で他社は成型肉を固めた商品がほとんどだった。

「わかりやすくいえば、ステーキとハンバーグの違いがあったのです」

それを知った安藤氏は、同社の理念である“Quality Foods for a better life”に立ち戻り、消費者にアピールしていく重要性を再認識した。

そもそもテングブランドのビーフジャーキーは、1970年代に米ロサンゼルスで日系2世のケン大崎氏が開発した。1980年代にはハワイ土産として日本人観光客の間で大ヒットし、それに目を付けた同社は1983年に日本総代理店契約を結び、輸入がスタート。国内でも瞬く間に大人気商品となり、同社を支えてきた。しかし、2004年に発生したBSE(牛海綿状脳症)で大打撃を受け、製造元の米テング社はカリフォルニア州の工場を閉鎖。その後、アルゼンチン工場で生産を再開したが、干ばつの影響で突然閉鎖に追い込まれた。

主力商品の供給が完全に断たれたときに同社が選択した道は、国産化だった。輸入食品は産地の環境や為替変動の影響を受けやすいのが難点だがそれも解消できる。同社はテングの商標を保有し、OEM先は国内製造会社と提携することで経営改革にも大いに役立った。国内消費者の好みに合わせた風味やパッケージの採用が可能になったからだ。

ハロウィンブームをとらえ若年層にアピール

各部門の社員が定期的に集い、新しい商材について自由に発言するマーケティング会議。

各部門の社員が定期的に集い、新しい商材について自由に発言するマーケティング会議。
左から2人目が安藤丈夫 財務部取締役。
社屋地下にあるショールームで。

消費者に近づくために取り組んだ施策の一つが、イベント開催だ。神宮球場の冠スポンサーを務めるなど、さまざまなイベントを開催してきたが、2018年には渋谷でハロウィンイベントを実施した。

「なぜハロウィンに渋谷で? とよく聞かれるのですが、複数の要素を考慮した結果、これがベストであると判断したのです」

同社が数多く扱う菓子の需要は、年間平均しているわけではない。盛り上がるのは秋から冬にかけて。なかでも以前はバレンタインデーのある2月〜3月が最大の需要期だった。

「しかし、最近の傾向を見ると、需要の最大の山がハロウィンに移ってきているのです」

一方でビーフジャーキーは、菓子として認知されていない。コンビニエンスストアでも珍味のコーナーに置かれ、若年層の目にはなかなか留まらない。菓子の最大の需要期であるハロウィンにビーフジャーキーを知ってほしいと考えて、今回のイベントとなったわけだ。

渋谷センター街のイベントスペースに「TENGU HOUSE」をオープン。ビーフジャーキーのプレゼントやハロウィンをイメージした限定フォトスポットなどを用意した。イベントには2018年にブレイクした芸人の「ひょっこりはん」も登場し、話題を集めた。新たな層への認知度も広がっているという。

神宮球場 『Tengu Beef Jerkey ナイター』 開催時のバックスクリーン。

神宮球場
『Tengu Beef Jerkey ナイター』
開催時のバックスクリーン。

数々のイベント開催には莫大な費用がかかる。同社はなぜ踏み切ることができたのか。

「予算管理をしっかり行い、社員全員が会社の目標を共有するようにしました」

業績が順調だった時代はどんぶり勘定でも問題なかったが、「これだけの広告費をかけるには、どのくらいの売上げを達成しなければならないか」など、予算を組み、部署ごとに目標数値を明確にしたのだ。

社員一人ひとりに最大限の力を発揮してもらうため、チャレンジシート制度も導入。仕事で1つ、仕事以外で1つなど、目標を設定してシートに記入する。

「9時から5時まで仕事をすればOKという意識ではなく、何事にも目標を持って取り組んでほしいと考えたからです。それはプライベートの時間も同じです」

英会話教室や社外研修など業務にかかわるものは、会社が一部費用を負担。いまでは、公私ともに充実させるという社風が醸成されつつあるという。

新たな商材の開発にも力を入れている。仕入れ担当のバイヤーと国内営業担当のタッグで海外現地へ訪問し、売れ行きの見込みも考えながら判断するようにしている。

「最終決定にあたり、まずは現場からの意見を尊重する」というのが現社長である鈴木基司氏の考え方だ。いい商品を見つけても経営層に判断を仰げば、導入までに数か月ほどかかってしまう。それではチャンスを逃しかねない。

「もちろん、添加物などさまざまなチェックをしなければなりませんが、それでも最短、従来の半分程度の期間で新商品を導入できるようになりました」

同社は2019年12月に100周年を迎える。テングブランドのビーフジャーキーは、メーカーと商社の2つの機能を持つ強みを生かして、拡販プロジェクトをさらに進めていく。

株式会社鈴商
主な事業内容:
輸入食品の卸売り
本社所在地:
東京都新宿区
代表取締役社長:
鈴木基司
資本金:
8400万円
従業員数:
60名
URL:
https://suzusho.co.jp/

機関紙そだとう198号記事から転載

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