中小企業支援情報

輸出代金回収のリスクヘッジとして
「貿易保険」を利用しよう

 

中小企業のグローバル化が進展する中で、感染症の影響は輸出先企業の支払い遅延やサプライチェーンにおける混乱などをもたらし、リスク管理の重要性を再認識させました。今回は、リスクヘッジとして活用できる「貿易保険」をご紹介します。公的保険機関である株式会社日本貿易保険(以下、NEXI)の藤本新調査役から、その仕組みを解説していただきます。

輸出代金回収のための「貿易保険」

「貿易保険」は1950年の制度発足以降、日本の輸出企業から保険引受を行い、輸出拡大を支えています。発足当初は日本政府が運営していましたが、2001年に独立行政法人日本貿易保険を設立し事業を移管。17年からは政府100%出資のNEXIに組織変更されました。

今回ご紹介する貿易保険の概要は図1のとおりです。非常危険(カントリーリスク)または信用危険の発生により、船積前の事故であれば船積できないこと、船積後の事故であれば代金回収できないことにより被る損失を補償するものです。輸出のみでなく、海外投資の損失を補償する保険もあります。

 

 

中小企業が輸出を行う際に対処しておくべき課題の一つに代金回収リスクが挙げられます。前払いで回収できればよいのですが、輸出先から後払いでの契約を要求されたときでも、貿易保険でリスクヘッジをすれば輸出に踏み切れるかもしれません。

中小企業・農林水産業 輸出代金保険

今回は貿易保険の商品ラインナップの中から、中小企業の皆様にご利用いただく機会が最も多い「中小企業・農林水産業輸出代金保険」をご案内します(図2)。

 

 

この保険は中小企業の輸出支援のため、2005年に専用商品として「中小企業輸出代金保険」を創設したものが起源です。資本金10億円未満の中堅企業もご利用可能であり、ニーズの高い船積後の代金回収リスクのみに補償を絞り、付保率を95%と高く設定する一方で、保険料水準は低く設定しています。

さらに全国110の提携金融機関を通してのご利用は保険料が10%割引、また、海外取引先の与信審査に必要な信用調査を中小企業者または農林水産業従事者には8件(累計)まで無料提供します。この保険は多くの中堅・中小企業等の皆様に、少額の輸出案件からご利用いただいています。

ご利用の流れ・お問い合わせ

保険のご利用にあたり、ご契約者様に行っていただく主な手続きは、(1)利用者登録、(2)海外取引先の格付取得、(3)保険契約締結(申し込み)であり、いずれもWebから手続き可能です。貿易保険の内容や手続きについて、弊社ホームページに図3の動画も用意していますので、ぜひご覧ください。また、お問い合わせ等はお気軽にお客様相談窓口までご連絡ください。

 

 

従来の輸出先から後払いを要求された、新規輸出先が後払いでないと取引開始できない、カントリーリスクが心配等々の際、皆様が輸出を行うために貿易保険がお役に立てれば幸いです。

(NEXI調査役 藤本 新)

中小企業庁 事業環境部
調査室 調査係長
鈴木 崚
(2020年4月より当社から出向中)

機関誌そだとう209号記事から転載

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