SBIC東京中小企業投資育成株式会社

事業承継の3種類の方法、どれを選ぶのがベストなのか?

事業承継は、多くのエネルギーや時間を使う作業になります。自分の子供が後継者となって引き継いでくれればスムーズですが、近年では後継者不在に悩む経営者が多いもの。そのため後継者としてふさわしい人材を役員や従業員から選抜して事業承継したり、あるいは事業売却したりという方法も多くとられています。
いずれにしても、いつかは事業承継しなければなりません。事業承継はその内容によって、大きく「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3つに分けることができます。
それぞれ、メリット・デメリットがありますので、そのときの状況や求める結果を検討した上で、最適な方法を選ぶことが大切です。

事業承継の方法の決め方は?

3つの事業承継の方法は、それぞれメリットとデメリットがあり、どの方法がベストなのかはケースバイケースです。スムーズに承継を行うには、経営の引き継ぎがうまくできる体制づくりや、時間的な余裕を踏まえたおおよその計画も立てておかなければなりません。
また、株式の移動による持株比率の調整やそのコスト、贈与や相続にかかる税金なども検討する必要があります。
続いては、3つの事業承継の方法についてご紹介します。

内外から受け入れられやすい「親族内承継」

親族内承継とは、経営者自身の子供や孫、甥、姪などの親族が事業を承継する方法です。2000年以前は、親族内承継が全体の約9割を占めていたともいわれますが、現在は親族内承継の割合はどんどん下がっています。

親族内承継の具体例

経営者の子供を後継者とする場合、長い時間をかけて育てていくことが可能です。仕事に対する姿勢や経営哲学を、経営者自身の仕事ぶりや会話を通じて教えやすいでしょう。あえて他社・異業種で、後継者に経験を積ませるという方法もあります。
いずれにせよ、後継者が決まっているのであれば、あとは「いつ・どのように」事業承継するかをプランニングし、実行すれば良いことになります。

親族内承継のメリット・デメリット

親族内承継のメリットは、まず承継のための準備期間を長く取れるという点です。そのために本人の教育や周囲の体制づくりに十分な時間をかけられます。
また、周囲が納得しやすい形だというのも大きなメリットでしょう。経営者が作り上げてきた信頼や人脈、社内体制、取引先との協力関係などをそのまま受け継いでも、周囲に理解されやすいという利点があります。
さらに、後継者が先代の財産を相続することで、「財産の所有と組織の運営」が一致し、スピーディーな組織運営ができる点も挙げられます。
一方で、後継者が他社で長い経験を積んだような場合には、事業承継後に安定した経営ができるかどうかが問題になります。こうした場合、事業承継の時期を決めた上で、早めに教育にとりかかる必要があるでしょう。

親族内承継の課題

親族内承継には、いくつかの課題もあります。これらを事前に解決したり、あるいは解決の目処をつけたりしておかないと、スムーズな事業承継が難しくなります。

・親族内に適切な後継者がいるか
経営者が親族内承継をしたいと思っても、本人にその意思がなければ承継はできません。また、意思があっても、経営を引き継ぐだけの能力があるかどうかも重要です。
本人の意思と資質に加え、必要な教育やサポート体制を用意できるかどうかなど、多くの要素を勘案して判断する必要があります。
・相続紛争を回避できるか
経営者の資産を後継者に贈与・相続する場合、複数の相続人がいると紛争に発展することがあります。特に、株式については議決権と直結しているため、会社の経営権にも関わってきます。
経営安定化のためには、後継者と安定株主の持株比率を十分に高めることが不可欠ですが、それ以前に自社株を分散させないようにすることが大切です。事業承継の際には、その点にも注意して贈与・相続を行うべきでしょう。

・贈与税や相続税の支払い能力があるか
事業承継では、承継される株式や会社で使用している個人資産なども、贈与税・相続税の対象となります。自社株式を親族が引き継ぐ場合には評価額が高くなるため、相続税は後継者自身にとって、かなり重い負担となってしまいます。そのため、後継者が借金をしたり、引き継いだ株式の一部を会社が買い取ったりという方法で納税するケースが多いようです。
なお、一定の要件を満たせば、事業承継における株式の取得にかかる贈与税・相続税の納税が猶予・免除される事業承継税制という制度があります。贈与・相続にあたっては、この制度の活用も検討してみましょう。
・個人保証や担保提供は必要か
会社の債務に対して、経営者が個人保証や担保提供を行っている場合、後継者も同様の対応を求められる場合があります。後継者にとっては大きな負担となるため、早期に債務の圧縮を図ることが大切です。

経営の一貫性が保てる「親族外承継」

親族外承継は、親族内承継に対して、親族以外の人物を後継者とする承継方法です。ここでは、社内の親族ではない役職員を後継者とする場合について紹介します。

親族外承継の具体例

親族内に後継者がいない場合や、経営者に子供がいてもその意思がない場合などに、役職員を後継者とすることになります。
後継者が経営者の保有する株式をすべて買い取るのが最もシンプルな形ですが、この場合の株式は原則的評価方式で価額が算出されるため高額になりやすく、現実的ではありません。そのため、複数の役職員によって買い取りが行われるのが一般的です。
役員による買収をMBO(Management Buyout)、役員と従業員による買収をMEBO(Management and Employee Buyout)と呼び、直接買収する形があります。ほかにも、受け皿会社を設立して資金調達し、その資金で事業会社の株式を買収することで間接的に経営権を握るSPC方式もあります。

親族外承継のメリット・デメリット

社内の親族ではない役職員を後継者とするメリットは、後継者が自社の経営理念をはじめ、業務全般を熟知しているため、一貫性のある経営ができるという点です。これまでの社風や事業方針などもそのまま維持されることが多いので、顧客や取引先などにも受け入れられやすい形でしょう。
ただ、デメリットとしては、誰を後継者として指名するかによって、社内の関係者が心情的に受け入れることができない場合があります。その場合はスムーズな経営ができなかったり、有能な従業員が離脱したりということにもなりかねません。

親族外承継の課題

MBOとMEBOいずれの場合でも、承継にあたって解決すべき課題があります。ある程度、課題に対して解決の目処をつけておかないと、承継がスムーズに進まないこともありますので気をつけてください。

・後継者の資金不足をどうカバーするか
一般的に、役職員個人が経営者の株式すべてを買い取るのは、かなり難しいことです。そのため、複数の役職員で買い取る方法やSPC方式などが現実的な選択肢となります。
経営者にとっては保有株式を換金できるチャンスですが、その支払いのために会社の経営が厳しくなることは避けたいものです。

・安定性・保守性が裏目に出ることも
役職員に承継することで、先代からの一貫性ある経営ができるのはメリットですが、その安定性や保守性が、時としてマイナスに働き、発展の糸口を逃がしてしまうという可能性があります。
一貫性のある経営を行いつつ、果敢にチャレンジすることも、会社が発展していくためには必要でしょう。

大きな売却利益を得られる「M&A」

M&A(Mergers and Acquisitions)は、会社や事業の合併・買収を指す言葉ですが、親族外承継に含まれる事業承継の方法のひとつとしても利用されます。ここでは、M&Aの具体例やメリット・デメリットについて解説します。

M&Aの具体例

事業承継の方法としてM&Aが選択されるのは、親族内に後継者が見つからず、また役職員が承継することも難しいといった状況です。M&Aの方法としては、ファンドや金融機関による買い取りや他社への売却などの形があり、専門の仲介会社によるマッチングもそのひとつです。
ファンドがM&Aを行うのは、買い取った会社を数年以内に株式上場あるいは売却し、キャピタルゲインを獲得することが目的です。そのため、ファンドによるM&Aでは、短期間で企業価値の急激な上昇をしいられることになります。

M&Aのメリット・デメリット

M&Aでは、広く外部に買い手を求め、事業そのものを売却するため、後継者がいなくても会社を存続でき、従業員の雇用を守ることができます。経営者として売却益を得ることができるのも大きなメリットでしょう。
反面、買い手が現れなかったり評価額の折り合いがつかなかったりすると、いつまでも売却できないこともあります。また、企業理念や社風を維持できるかどうかは買収先企業次第です。さらに、経営者の個人保証が残っている場合、買収先の信用力によっては、金融機関から個人保証の解除を拒まれることなどもデメリットといえるでしょう。

M&Aの課題

会社ごと売却するとなると、その会社が買収先にとって魅力的かどうかが重要です。また、売却後の人事や業務方針などについても、交渉する必要があります。M&Aにおける課題について、いくつか挙げておきましょう。

・希望の条件で折り合う買い手が見つかるか
売買は、売り手と買い手の合意によって成立するものです。いくら会社を売りたいと思っても、買収先から見たあなたの会社と評価額が魅力的に見えなければ、買ってもらえることはないでしょう。
ですので、M&Aを考えるならば、できるだけ早期から会社の財務状況などをチェックしておき、自社が少しでも魅力的な会社となるよう、企業価値を高める努力をしておく必要があります。
・買い手に現経営者の株式等を買い取る資金があるか
自社と同業の企業に買い取ってもらえば、会社を存続させ、業務を継続する可能性は高くなります。だからといって、「あの会社に買い取ってもらいたい」という希望が通るとは限りません。買い手が興味を示さなければそれまでですし、たとえ買収したいと考えていたとしても、経営者が持っている株式などを買い取るだけの資金を出せるかどうかはわかりません。
M&Aは相手のあることですから、希望どおりの売却ができるかどうかは不透明です。それを理解した上で検討するようにしてください。
・従業員の待遇や業務内容はどうなるか
M&Aにおいては、売却額や売却後の体制など、多くは交渉次第になります。中でも重要なのが、従業員の雇用でしょう。
会社を売却してしまったら、その後の会社の運営は、買収先企業にゆだねられてしまいます。ですから、安易な人員整理や、給与体系の極端な改変をしないよう、売却の条件を整理しておく必要があります。
また、経営者自身の身の振り方についても、検討すべきことはあります。売却と同時に事業から離れるのではなく、一定期間は役職に就き、事業に関わりながら社内の調整をするなど、いろいろな方法が考えられます。

関係者の希望を尊重しつつ、自社に合った方法を

事業承継の3つの方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。どの方法が良いのかは経営者と後継者の希望によるところも大きいですが、会社が置かれている状況にも左右されるでしょう。税金や資金の面でハードルが高すぎるようなら、第一希望の策をあきらめ、次善の策をとらざるをえないかもしれません。
いずれにせよ、経営者にとって事業承継は経営上の重大事です。東京中小企業投資育成株式会社では、事業承継に関するご相談を随時受けつけておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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