SBIC東京中小企業投資育成株式会社

失敗事例から学ぶスムーズな事業承継の進め方

スムーズな事業承継を行うには、長い時間を要します。まだ大丈夫だと思っていても、現実的には間に合わない場合も多くあります。早い段階から事業承継に取り組まないと、経営者が経営権を握ったまま体調を崩したり、判断能力が低下してしまったりすることで、経営の舵取りが困難になってしまうことも考えられます。

また、経営権移譲がいつまで経っても進まないために、事業のスピードが低下したり、不安定になったりするおそれがあります。さらに、相続によって株式やその他の事業資産が分散してしまうことで、経営が不安定になったり、思わぬコストが発生したりするかもしれません。

そうならないためには、スムーズに事業承継を行う必要があります。ここでは、事業承継の失敗事例とともに、各事例においてどのような点が問題だったのかをご紹介しましょう。

後継者に関する失敗事例

後継者問題は、中小企業の事業承継にとって最も大きな課題のひとつです。経営環境の激化やライフスタイルの多様化によって、子供など親族へ事業を引き継ぐ親族内承継の割合は、年々低下しています。
しかし、たとえ親族内に後継者がいても、育成や社内外関係者との調整を適切に行わなければ、さまざまな歪みを生じさせる結果になります。まずは、後継者に関する失敗事例をご紹介します。

事例1:後継者の教育不足による失敗

先代経営者である父親から、後継者が事業を承継。実力で築き上げてきたからこそ持つことができた父親の権力を、後継者はそのまま自分が引き継げるものと勘違い。自力で実績を積み上げたり、人心を掌握して人望を集める努力をしたりしないままに、高圧的な態度でワンマン経営を行った。その結果、大きな反発を受け離反者が続出。それまでうまくいっていた事業が滞り、売上も激減してしまった。

<解説>
先代がどのようにして会社をここまで大きくしてきたのか、承継後はどのような立ち位置で経営に取り組むべきかについて、後継者の自覚が不足していた結果です。また、従業員との関係も含め、早期から後継者を教育しておくことが必要だったかもしれません。

事例2:早期から後継者を決めておかなかったことによる失敗

創業社長が急病で倒れたため、大手商社の第一線で活躍していた一人娘が後継者として会社を引き継ぐことを決断。経営センスもあり非常に優秀で、意欲や覚悟も持ち合わせていた。しかし、事業について何も知らない後継者に対して疑問を抱く古参社員たちは、「余計な口出しはしないでほしい」という態度。まったく指示を聞かない状態が続き、後継者は徐々に意欲も低下。今では身売りを検討している。

<解説>
先代が急病で倒れたため、事前の根回しなどがほとんどできなかったことが原因。せっかく優秀な子供が後継者となっても、調整不足のために反発が生じてしまい、会社にとっても損失となりました。事が起こってから動いては遅すぎるということを痛感させられる事例です。

事例3:後継者の適正を見極められなかったことによる失敗

長年後継者について悩んでいたが、大手企業に勤める娘婿が後継者として会社を継いでくれることに。後継者は真面目に取り組み、社員たちとの関係も特に問題ないと思われたが、不慣れな社長業から想像以上の大きなプレッシャーを感じて体調を崩してしまい、経営に復帰できなくなった。

<解説>
能力があると思われた後継者であっても、蓋を開けてみると経営者としての適正がないといった理由で、経営者として続けていけないケースがあります。後継者選びは一筋縄ではいかず、実務能力が判断基準になるものではありません。いったん後継者を決めても、「これが絶対だ」と思わないことが肝要です。

MBOに関する失敗事例

経営陣が事業を承継するMBOにおいても、スムーズな事業承継を行うためには、しっかりとした事前準備が必要です。ここでは、MBOの失敗事例をご紹介します。

事例4:MBO後に経営陣がまとまらないことによる失敗

現経営者であるカリスマ社長から、MBOで幹部役職者が事業を承継することになった。MBO後の株式は幹部役職者間で分散して所有し、社長には生え抜きの管理畑を歩んできた人物が選ばれた。新社長にカリスマ性はなかったが、調整型のマネジメント手法で意見をまとめ、新経営陣も皆で新社長をサポートしていこうという雰囲気に。しかし、経営方針に対する意見対立が徐々に目立ち始め、他の役員からの反発によって事業がスムーズに進まなくなってしまった。

<解説>
後継者が先代ほどの求心力がない場合は、調整型のマネジメントが必要になりますが、それがうまくいかずに失敗することがあります。MBO後の経営はどのような形がベストなのか、十分に考えつくした上で、承継方法や内容を決定すべきです。

権限移譲に関する失敗事例

形の上では後継者に事業承継をしたものの、先代が実際の権限を譲らないということはよくあります。先代が権限を譲らずに、事業がうまくいかなくなった事例について見ていきましょう。

事例5:先代が実権を後継者に譲らないことによる失敗

数年前に、経営者みずから長男に社長のポジションを譲ったものの、自身は会長として君臨して、依然影響力を持ち続けていた。会長によるワンマン経営が継続され、長男への権限移譲をする気配もなく、気がつけば会長は90歳、社長は65歳に。社長も事業承継を考えるべき年齢になったが、会長が依然として実権を握っているため、社長も次の後継者を検討することができない状態になってしまっている。

<解説>
先代はいつまで経っても権限移譲をする気がない状態。先代が後継者に社長のポジションを譲った際に、株式の承継を行うなど、後継者が経営に集中できる環境を整えるべきでした。

承構成継後の株主に関する失敗事例

事業承継を行う際には、後継者がいかに不安なく経営できるかを考える必要があります。そのためには、事業承継後の経営環境をイメージした上で、株主構成を考えることが大切になってきます。ここでは、事業承継後の株主構成がうまくいかなくなった事例を紹介します。

事例6:適切な株主構成にしなかったことによる失敗

先代経営者が後継者の長男に社長の座を譲ることになったが、「子供には均等に財産を渡したい」という先代の希望から、自社の株式の30%を長男に承継。経営に関与しない次男、長女に対してもそれぞれ30%を承継した。その結果、社長の30%と役員所有の10%を合わせても40%しか経営陣が株式を所有していない状態に。その後、当初は経営に関わらなかった次男と長女が口出しするようになり、経営が不安定な状態に陥ってしまった。

<解説>
適切な株主構成は、経営安定のための必須条件です。したがって、承継時には後継者が安定した経営を行えるような株主構成を考えた上で、株式の引き継ぎを行う必要があります。経営と資産分与を分けて考え、経営に携わらない相続人には、事業とは関係のない資産を引き継がせるなどの配慮が必要です。

中長期的な視点の欠如に関する失敗事例

事業承継にあたっては、事業の中長期的な視点を持った上で、その方法を検討することが必要です。目先にある一側面からだけの事業承継でなく、会社の将来的な資産なども考慮したいところです。ここでは、中長期的視点が欠如していたことによる失敗事例をご紹介しましょう。

事例7:SPCでの事業承継で資金繰りが厳しくなることによる失敗

経営者が事業承継をするにあたり、コンサルティング会社や金融機関に相談し、その提案どおりに持株会社となるSPC(特別目的会社)での事業承継を行った。しかし、SPCが事業会社の株式購入のために融資を受けた資金の返済は、事業会社からの配当でまかなうことになるため、事業会社の資金繰りが厳しくなることに。そのため、事業会社は事業拡大できず、承継前と比べて事業を縮小せざるをえなくなった。

<解説>
事業承継で大切なことは、承継後に事業を維持・拡大できるかを考えた上で承継できるかどうかです。後継者に資金力がない場合、SPCでの事業承継が選択肢のひとつとして考えられますが、中長期的に見て適切かどうかを見極める必要があります。

事例8:企業文化の異なるM&Aによる失敗

経営者の判断で、M&Aによって事業を大手企業に売却。売却先企業は、経営資源が豊富で優秀な人材も投入し、当面の雇用の維持も約束してくれた。しかし、売却してみると、想像以上に企業文化が違っていた。期待していたシナジー効果も生まれず、優秀な人材が何人も辞めていく事態が続き、事業がどんどん縮小していった。

<解説>
M&Aの場合、シナジー効果が認められそうであっても、企業文化が異なることで事業がうまくいかなくなることは多いものです。M&Aのメリットとデメリットをしっかりと把握した上で、事業承継の選択肢のひとつとして考えてみることが重要です。

事業承継で失敗しないためのポイント

事業承継に失敗しないように、失敗事例から学んだことを活かしていきましょう。これまで見てきたとおり、事業承継で失敗しないためには次のポイントを理解しておく必要があります。

・時間をかけてしっかりと後継者の選定・育成・調整を行う
・事業承継と資産相続を分けて考える
・承継後の経営が安定するような株主構成や財務状態をイメージする

事業承継はできるだけ早く着手することも成功のポイントです。東京中小企業投資育成株式会社では、事業承継に関するご相談を随時受けつけておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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