SBIC東京中小企業投資育成株式会社

株式の分散防止と集約化の方法は?各手続きの留意点を解説

将来にわたって、長期的に経営者が安定した経営権を確保するためにも、株式の分散防止は必要不可欠といえるでしょう。中小企業で株式を集約化するにあたっては、どのような手法が考えられるのでしょうか。
ここでは、株式の分散防止と集約化について、各手法の特徴や留意点について解説します。

株式の分散防止と集約化

株式の分散防止と集約化は、どのような考え方のもとで進めていくべきなのでしょうか。また、主な選択肢についても見ていきましょう。

将来にわたって安定的な経営権を確保できるか

株式の分散防止と集約化は、早めに取り組むことが第一といえます。また、集約化をするにあたっては、経営者が安定した経営権を確保していることが大前提となります。
集約化に取り組むにあたっては、将来にわたって安定的な経営権を確保できるか、また経営者が安心して経営に集中できるかといった視点を、常に持って検討していくことが重要です。

集約化の選択肢には何がある?

社員株主や社外株主は、時間の経過とともに社員株主の退職や相続が発生することで状況が変わっていくもの。それに伴って、集約化の方法も変わってきます。
社員株主であれば、持株会の設立や取得条項付株式の活用を検討することが可能です。社外の個人株主の場合は、株式の買い取りや配当優先無議決権株式などを利用して経営への影響力を弱めるほか、スクイーズアウトといった選択肢が考えられます。
相続が発生した場合は、合意による取得や相続人に対する売渡請求を検討する必要も出てくるでしょう。

役員・社員が保有している株式を退職時に買い取る方法

まずは、役員や社員が保有している株式を、退職時に確実に買い取るための2通りの方法について、留意点を解説します。

■役員・社員の退職時に株式を買い取る方法

持株会を通じて株式を保有する

役員や社員が、自社の株式を取得するための組織が持株会です。上場会社では、信託銀行などの外部機関に運営を任せることが一般的ですが、中小企業の場合は自社で設立・運営を行っているケースが多く見られます。

持株会にすることで退任・退職時に株式を買い取ることができるようになりますが、規約でその旨の条項を盛り込んでおく必要があります。また、払い戻し株価は、税務上の配当還元価額などに設定することが一般的です。

持株会を設立する際の留意すべきこと

退任・退職時の扱いを規約で定めるほかにも、持株会設立の際は、次のような点に留意する必要があります。

・持株会の議決権比率を検討する
一般的には安定株主ですが、株主総会での特別決議を拒否できる3分の1超の議決権を与えるには不安もあります。そこで、議決権のない配当優先無議決権株式にするという選択肢も。
・会員全員の同意があれば持株会は解散できる
加入していた役員・社員の退職時には、その株式の受け皿を探す必要があります。また、会員全員の同意があれば持株会は解散でき、会社は拒否できないという点も留意しておきましょう。
・配当金を会員に支払う設計にする
配当金は、その都度会員に支払われるような設計にすることが一般的です。
・同族役員は直接株式を保有する
通常、役員は従業員持株会とは別個に持株会を設立します。しかし、同族の役員は株式の取得価格が異なるため、持株会ではなく直接保有することとなります。
・役員・社員の株式を持株会に組み入れられる
すでに役員・社員が株式を保有している場合でも、持株会に組み入れることが可能です。

取得条項付株式を活用して会社が株式を取得する

取得条項付株式とは、あらかじめ定めた事由が生じた際に、株主の同意なしに会社が取得できる株式のことです。
例えば、「取締役または使用人でなくなった場合」とした取得条項付株式にすることで、退任・退職時に強制的に会社が株式を取得することが可能となります。
なお、導入時に普通株式を取得条項付株式に転換する場合は、全株主の同意を得ることが必要です。

■既存の普通株式を取得条項付株式に転換する流れ

取得条項付株式を活用する際の留意点

取得条項付株式を活用する場合、会社が買い取り資金を確保する必要があります。
また、買い取り価格または算定方法をあらかじめ設定しているため、買い取り時の時価と差が生じる可能性もありますので、注意が必要です。

社外の個人株主の株式を集約化する方法

社外の個人株主の株式を集約化する方法は、株式を会社側で買い取る方法が基本です。ただし、買い取り先は安定的な受け皿であることが望まれます。現実的な受け皿としては、現経営者・後継者、持株会、自社(自己株式化)、法人などでしょう。

現経営者・後継者が買い取る

社外の個人株主が保有する株を現経営者・後継者が買い取る場合、必要な資金が膨らむ可能性もあります。その場合、受け皿会社を設立して、調達した資金で買い取るという方法を選択することで、現経営者・後継者が多額の個人資金を用意せずに買い取ることが可能です。売却側のメリットとしては、自己株式化した場合と比べて譲渡益への課税が約2割に減るということも挙げられます。
ただし、調達した資金の返済が負担になったり、取引相場のない株式の評価方法である原則的評価方式による価格水準よりも株価が高くなったりといった点には注意が必要です。

従業員持株会や役員持株会が買い取る

社外の個人株主が保有する株を持株会で買い取るには、会員に追加拠出を募ったり、新規入会者を探したりといった対応が必要となるでしょう。
また、持株会を新たに設立する場合は、買い取り量や入会者の検討も必要です。

自社株の流通価格を低い水準で保ちたい場合には持株会での買い取りが適していますが、その価格で売主が納得するかは不透明です。そのため、他の選択肢と組み合わせて、トータルの売却金額で納得してもらうという方法も検討してみましょう。

自社が買い取る

2001年の商法改正後、自己株式の取得は原則自由になりました。株式分散のリスクを減らせるメリットがあるといえます。
会社が自社の株式を買い取る場合の、2つの手法を見ていきましょう。

・特定の株主から自社が取得する
特定の株主から自社が株式を買い取る場合、すべての株主に知らせる必要があります。特定の株主以外の株主からも買い取り希望があった場合、特定の株主から希望数量をすべて買い取ることができない可能性もあるかもしれません。しかし、買い取りの希望がないことが明らかな場合には、問題なく活用できる手法といえるでしょう。
ただ、他の株主も売買価格を推定できるため、将来的に同水準で買い取ってほしいという希望が出る可能性もあります。
・株主と合意して取得する
社外の個人株主との合意によってその株式を取得する場合は、取得する株式数や取得総額を設定し、売却希望株主を募集することになります。どの株主からも同じ価格で買い取りたい場合には適している手法といえるでしょう。しかし、すべて同額で買い取らないといけないわけではなく、取締役会決議を分けることで、異なる価格にすることも可能です。
ただし、応募があれば、買い取りたくない株主がいる場合においても買い取らないといけないという懸念点もあります。

法人が買い取る

中小企業の場合、長期にわたり安定的に保有してくれる法人株主は、金融機関や取引先、自社のグループ会社などが挙げられます。

・金融機関や取引先に保有してもらう
金融機関は候補のひとつですが、新たに中小企業の株式を引き受けてくれることは、現状ではあまり期待できません。
親密な取引先の場合は、事業パートナーとしての関係が維持されることが前提です。ただし、良好な関係がいつまでも続くわけではないという点も、踏まえておいたほうがいいでしょう。
なお、取引先の社長に買い取ってもらう場合、社外個人株主と同様の課題が生じます。
・自社のグループ会社が保有する
長期にわたって安定的に保有できるのが、自社のグループ会社です。株式分散の心配もありません。
しかし、グループ会社がなかったり、資金に余裕がなかったりする場合もあります。
また、グループ会社間の資本関係にも注意が必要です。相互保有株式には議決権はありませんし、子会社は親会社の株式を取得できないという点も留意しておきましょう。

株主側からの株式買い取り要請

株主側から、買い取り要請があっても買い取る義務はありません。資金面の理由などで、交渉がまとまらないということはよく起こります。

しかし、交渉がまとまらないと、株主側が嫌がらせをしてくる場合もあり、対応に時間が取られるなど経営に集中できないといったことも起こりえます。とはいえ、一度でも高い水準で買い取ってしまうと、その後の買い取りにも影響することがありますので、粘り強く交渉を続けるケースが多く見られます。

なお、相続発生時は、相続人と新たに株式買い取り交渉をすることになります。相続人が複数人となり、交渉相手が増えてしまうことも多いため、なるべく相続発生前に買い取りを済ませておきたいところです。

株式の集約化が難しい場合の対策

株主の集約化が難しい場合は、経営への影響を弱めるという選択肢も考えられます。
ここでは、少数株主からの協力を前提として、経営への影響を弱めるための2つの手法を見ていきましょう。

■株式集約化が難しい場合に経営への影響を弱める方法

議決権のない配当優先無議決権株式を活用する

経営への影響を弱めるための方法として、議決権のない配当優先無議決権株式の活用が考えられます。配当優先無議決権株式に変更することで、経営への影響力を弱めることができます。

単元未満株には議決権を与えない単元株制度を活用する

単元株制度とは、定款で一定数の株式を一単元とし、単元未満の株式には議決権を認めないこととする制度。
種類株式発行会社では、単元株式数は株式の種類ごとに定めるため、少数株主の株式を配当優先株式とした後、一定の株式数を一単元とすることで少数株主の議決権を減らすことが可能になります。
また、少数株主の保有する株式を単元未満となるように設定することで、議決権行使を完全に制限する方法もあります。

株主の意向にかかわらず株式の集約化を進める方法

株主の意向にかかわらず株式の集約化を進めるには、株式等売渡請求制度や株式併合が考えられます。ただ、これらはスクイーズアウトといわれる強制的に買い取る方法なので、トラブルを引き起こしやすくなります。あくまで、最終手段であることを踏まえておきましょう。

■スクイーズアウトの方法

・株式等売渡請求制度を活用する
株式等売渡請求制度とは、特別支配株主(総株主の議決権の10分の9以上を有する株主)が、他の株主にすべての株式を売り渡すよう請求できる制度です。
・株式併合を活用する
株式併合とは、併合割合を決めて株式を併合する制度。併合で1株に満たなくなった株式は、換金されて少数株主に交付されることで、少数株主が株主ではなくなります。

相続発生時に株式を取得する場合

個人株主の相続発生時に、会社が相続人から株式を取得するケースはよくあります。
非公開会社で、相続によって承継した株式を合意により取得する場合、他の株主に売主追加請求権が生じません。相続人との合意が必要ですが、相続後にピンポイントで買い取ることができます。

この場合の留意事項としては、以下のような点が挙げられます。

・会社と相続人の合意が前提
・相続人が株主総会で議決権を行使した場合、株主として認めたこととなり、売主追加請求権が発生する
・会社に買い取り資金が必要となる
・財源規制がある
・相続発生後に会社へ売却した場合、相続人の売却時の税負担が軽減される

法人株主から買い取りを検討する場合

法人株主から自社の株式を買い取る場合でも、個人株主からの買い取りと大きな違いはありません。時間をかけて段階的に買い取るなどの選択肢も含め、株主と交渉することになります。

名義株と所在不明株を整理するには

株式の集約化にあたって早期に対応したいのは、名義株と所在不明株の整理です。名義株や所在不明株は、真実の株主がわからなかったり、株主と連絡がとれなかったりと状況の確認が難しく、集約化が困難になる場合があります。

名義株を整理する際の留意点

できるだけ早期に、真実の株主が名義人との交渉によって株式を返還してもらうことが重要です。名義人・真実の株主いずれかに相続が発生すると、過去に名義貸与が行われた事実を立証しにくくなってしまいます。

所在不明株を整理する際の留意点

所在不明株は、次の要件をすべて満たせば処分が可能です。早期に準備を始めたほうが良いでしょう。

・5年以上継続して通知・催告が届かない
・5年以上継続して配当を受領していない
・上記を満たした後、会社が3ヵ月以上の期間を定めて、当該株主・利害関係人に一定の事項を通知・公告している
・当該株主から、異議申述期間中に異議が出されない

所在不明株は、会社が自己株式として取得することが一般的です。この場合、取締役会決議が必要となります。
なお、売却代金は当該株主に支払われるものですが、受領されることはほとんどありません。売却代金は、「いつでも支払えるように準備しておく」「法務局に供託して代金支払債務を免れる」といった選択肢があります。

経営安定化に株式の集約は必要不可欠

分散した株式を集約することは決して簡単ではなく、手間も時間もかかります。また、株主とのトラブルが起こってからでは、集約はさらに困難なものとなってしまいます。
問題が起こってから対処するのではなく、株式管理に常に目を向けて、潜在的な問題の可能性があるものから、早めに対策をしていくことが大切です。
東京中小企業投資育成株式会社では、経営の安定化や事業承継などに関するさまざまなサポートを行っております。お悩み事がありましたら、ぜひご相談ください。

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