「排出量取引制度」とは?
2025年5月に改正された「GX推進法」により、法定化された排出量取引制度。
いったい企業は何に注意すべきなのでしょうか。
制度の概要を松田綜合法律事務所の加藤奈緒先生に伺いました。
2025年5月、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)の改正法が成立しました。同法は、GX(グリーン・トランスフォーメーション)政策推進のため、2023年に成立した法律です。今回の改正の重要ポイントとして、それまで試行段階にあった排出量取引制度(GX-ETS)が法定化され、直近3年のCO2排出量の年平均が10万トン以上の事業者については参加が義務付けられることになりました。対象企業は300社~400社にのぼる見込みです。
一定のCO2排出量がある企業の排出量取引制度への参加が義務化
排出量取引とは、国が年間のCO2排出枠(上限)を企業に割り当て、その排出枠の過不足を企業間で取引する制度。改正GX推進法によると、対象の事業者は主に以下の義務を負うことになります。
❶届出
対象事業者は毎年度、排出目標量等を登録確認機関の確認を経たうえで、届け出る必要があります。その排出目標量と業種ごとの特性等を勘案して、国から一定の排出枠が無償で割り当てられます。

❷排出量の報告・償却
対象事業者は、割当年度における排出実績量を登録確認機関の確認を経たうえで報告する必要があり、当該排出実績量と同量の排出枠を償却する義務が課されます。❶で割り当てられた排出枠が排出実績量と比べ不足する場合は、市場から排出枠を購入する、あるいはCO2排出をオフセットできる適格カーボンクレジットを購入するといった対策が求められます。逆に排出枠に余剰が生まれた場合には、排出枠の売却・繰り越しも可能です。
❸償却義務不履行の場合のペナルティ
❷の償却義務を履行しなかった事業者に対しては、未償却の排出量について「排出枠の参考上限取引価格×1.1倍」の未償却相当負担金を支払う義務が課されます。
❹移行計画の提出
対象事業者は、毎年度、その年度の各社の事業計画等を反映した直接・間接の排出量削減目標等を記載した移行計画の提出が求められ、当該計画は国によって公表されます。
対象事業者は大企業が想定されますが、類型的にCO2排出が見込まれ、将来的に対象となりうる企業は、今後さらに具体化される制度の内容・運用に注意する必要があります。また、移行計画との関係で、サプライチェーン全体での排出削減を目指す対象事業者から、取引先の中堅・中小企業に対し削減協力を要請するケースが増えることも予想されます。他方で対象事業者による取引先への不当な負担の押し付けも懸念されており、独占禁止法や取適法での対応を前提に、制度内外での対応が国としての検討事項の一つとされています。

松田綜合法律事務所
弁護士
加藤奈緒 氏
渉外部門のパートナーとして、日本企業の海外進出支援、データ保護法をはじめとする各国法規制への対応など幅広い案件を手がける。環境省 国際脱炭素移行推進・環境インフラ担当参事官付JCM推進室での勤務経験から、環境案件にも携わる。
機関誌そだとう225号記事から転載










