投資先受賞企業レポート
東京商工会議所 第21回勇気ある経営大賞 奨励賞
あらゆる現場で瞬時に意思疎通を……

無線機で育む豊かなコミュニケーション

株式会社オンザウェイ

株式会社オンザウェイ
野中元樹 社長

株式会社オンザウェイ
主な事業内容:
無線機のリース・レンタル・メンテナンスサービス
本社所在地:
東京都町田市
設立:
1991年
従業員数:
50名

 

イベント会場、ホテルや工場、映画館や介護施設などでスタッフ同士が連絡を取り合う手段として重宝されている無線機。株式会社オンザウェイは、年間13万台を超える無線機のリース・レンタルをメイン事業とする企業である。同社は東京商工会議所が主催する「第21回勇気ある経営大賞」で奨励賞を受賞した。「業界では類を見ない無線機のリース・レンタルを開始。長期間にわたり安定的なサービス提供体制の構築に挑戦」が、受賞理由だ。

「業界では類を見ない」とはどういうことなのか。住宅街の大きな一軒家のような社屋で代表取締役の野中元樹氏に話を聞くと、他社が真似できないサービスの特色とそれを支える独自の組織文化が見えてきた。

メンテナンスも修理も担う、顧客との直接契約を開始

同社は、1991年にリキデン株式会社の移動体通信システムの販売部門を切り離す形で創業。移動体通信システムとは、移動しながら連絡を取り合える無線システムのことだ。創業からしばらくは、トラックやタクシーなどで用いられる車載タイプの無線システムを取り扱っていた。この事業は、車1台1台に無線システムの取り付け工事に出向く必要がある。しかし時間もコストも人手も必要であるため、遠くへは行けない。ゆえに商圏が限られていた。

こうしたリソース面でのデメリットや、連絡手段が次第に携帯電話へと移りつつあったことを鑑みて、新たに取り扱い始めたのが無線機だった。トラックが荷物を搬入する物流センターなどでの利用からスタートし、さまざまな分野に顧客を増やしていった。転機となったのは2001年に開始した無線機の「2WAYリース」サービスだ。

「それまでは、大手のリース会社を通してお客様と取引をしていました。その際、機械に不具合が生じると我々が修理に出向いて修理代をいただくのですが、“なぜリース契約をしているのに、別途代金を払わないといけないの?”と、不満を抱くお客様が少なからずいらっしゃったのです。それは我々にとっても不本意なことでしたから、お客様とダイレクトにリース契約を結ぶ事業に切り替えようと考えました」

そうして、メンテナンスや修理をはじめ保守サービスを含めた直接のリース契約事業がはじまったものの、最初はなかなか軌道に乗らなかった。リース会社からの一括入金がなくなり、契約者それぞれから個別に入金される仕組みであるため、ある程度安定的に台数が出ないと、持続的な経営が成り立たないのだ。しかし、業界で初めてのフルメンテナンスサービスが顧客に受け入れられて、少しずついろいろな分野に広がった。今では全国各地の2000事業所と取引するまでに成長を遂げている。

サービスは、長期2WAYリースと短期レンタルの2本柱で展開。長期2WAYリースの契約先は、ホテルや映画館、物流センターや介護施設、警備会社などだ。短期レンタルは、スポーツ大会、音楽フェス、国際会議などイベントでの契約が多い。2021年に東京で開催された国際的なスポーツ大会や、2025年の大阪・関西万博においても、同社から数多くの無線機が貸し出された。現在、取引先は1万事業所を超えている。

 

顧客の困りごとや要望に応じて、最適なサービスを提供。現場でのセッティングやサポートも欠かさない。
自社でメンテナンスが行えるのも、大きな特長。

無線機の利便性に加え、独自サービスが高評価

近年、連絡手段として圧倒的に携帯電話が主流な中、無線機がなぜここまで多様な場で使われているのだろう。聞くと、携帯電話で代用できない無線機の利点が複数あるという。
もっとも大きな利点は、一斉通信によりチャンネルを合わせているすべての無線機へ同時に連絡ができること。携帯電話では、通常特定の人としかコミュニケーションが取れないが、複数人へ同時に指示を出したり、情報共有ができる。

「個人担当制が多い介護施設などでは、どこかの部屋でヘルプが必要になった際でも、無線機を通してスタッフ全員に連絡が届くことによって、素早いサポート体制を取ることができます。また、無線機は新人が先輩たちの通話を聞きながら仕事を覚える学習ツールにもなります」

連絡が届くスピードの速さもメリットだ。携帯電話のように着信を受ける動作をしなくとも、イヤホンを通して瞬時に連絡が入る。何か作業をしていても聞こえるのは、忙しい現場ではありがたい。

「一斉通信の方式だと、上下関係のないコミュニケーションが成り立ちます。それに無線機は基本的に同時通話ができないので、誰かが話している間は聞いている必要があります。相手の話を最後まで聞くという丁寧なコミュニケーションが交わされる点も、無線機の良さではないでしょうか」と執行役員の飯尾氏。

多くのスタッフがいるイベントなどでは、担当業務ごとに通信系統を分け、特定のグループに絞った通話も可能。こうした多くのメリットがあるからこそ、現在でも無線機は数多くの現場で重宝されているのだ。

ホテルからの要望を受け、目立ちにくくスタイリッ
シュで、邪魔になりにくいイヤホンマイクを開発。

とはいえ、無線機そのものに高い利便性があったとしても、それだけで事業は伸びない。他社からオンザウェイのサービスに乗り換える企業が少なくないのは、同社が培ってきた優れた対応力の賜物だ。その1つが細かな要望を聞き取り、オリジナルのアクセサリを企画開発できること。執行役員の増田氏は「無線機本体は他社と同じものを扱っていますが、周辺のサービスで差別化を図ろう、当社にしかないものを取り揃えていこうと考えています」と話す。

例えば、無線機に接続するイヤホンやマイク。スタッフの身だしなみに非常に気を使う高級ホテルなどからは、お客様から見て装着しているイヤホンがなるべく目立たないようにしたいといった要望が寄せられる。そこで、イヤホンには肌になじみやすい色のシリコン製チューブを採用したり、マイクのコードは極細にしてスーツの内側にしまいやすい設計にしたりと、カスタマイズして製作する。シリコン製のチューブなら、髪を束ねている女性スタッフが髪を整える際にも邪魔になりにくい。

無線機の他に持ち歩くアイテムが多い介護施設のスタッフのために、専用の「シーバーポーチ」も開発した。汚れても洗濯しやすい素材を用いたり、ウエストポーチとショルダーバッグ、どちらのスタイルでも使用ができるようにしたりと、たくさんの工夫が詰め込まれている。

「要望をいただいた際に、『それは純正品にはありません』と答えて終わってしまうか、『もっと詳しく聞かせてください。それならばこうやったらできそうですね』と解決策を一緒に考えるか。お客様に寄り添って後者の対応を取っているから、当社を選んでいただけるのだと思います」と統括マネージャーの小島氏。

また、納品したらおしまいではない真摯な姿勢も、多くの顧客からの信頼を得ている一因だ。どんな現場であっても、担当者が必ず出向いて現場でセッティングをしたり、使い方のレクチャーをしたり、利用当日のサポートをしたりする。不具合が発生した際にフォローしてくれる人がいるのといないのとでは、現場の安心感は大きく違うはずだ。

社長の想いを手紙に込め、社内の一体感を強みに

手厚いサービスを展開している理由を、野中氏はこう話す。
「お客様が本当に必要としているのは無線機ではなく、無線機を使ったコミュニケーションや情報共有です。我々は、その部分を最大限円滑に行えるサービスを提供することにフォーカスしているのです」
顧客は無線機を通して何がしたいのか。無線機に何を求めているのか。常にその本質を見つめているからこそ、唯一無二のサービスを提供できているのだ。また、この理念を50名の社員が共通認識として持ち合わせていることも、大きな強みである。

ある朝、同社を訪れると、社員みんなで社内の掃除に取り掛かっていた。掃除が終わるとホールに集まり、全員で輪になって朝礼がスタート。その場ではひっきりなしに手が挙がり、活発に成果報告や諸連絡などが交わされるのだが、どの報告や発言に対しても必ず、他の社員から「ありがとう」や「おめでとう」といった感謝や労いの言葉と拍手が届けられる。月に1回、フルタイム勤務の社員が集まって実施される社内研修もチームワークを醸成する場となっている。時には社内にあるキッチンで共に料理をつくりながら、結束を深めるのだという。
心理的安全性が高く、互いに認め合う文化が確立されている、風通しの良い社風。同社の躍進を支える強い組織基盤は、こうした温かな社風から生み出されているのだ。

 

35年間毎日朝礼を続けてきた。情報共有だけでなく、組織の一体感を醸成する場になっている。

 

加えて、「ここにいる人たちは皆、社員というより仲間。こんな素晴らしい人と一緒に仕事ができることが幸せ」と語る野中氏が折に触れて届けるメッセージもまた、社員の一体感を高めている。特筆すべきは、毎月したためている“ラブレター”ともいうべき社員に宛てた手紙だ。
「いろいろな会社で話を聞くと、“社長が何を考えているのかわからない”といった社員の声をよく耳にします。でも、この会社ではそんなことは言ってほしくない。だから私が考えていることを手紙に書いてみようと思ったのです。どんな会社になろうとしているのか、私が夢見ている会社とはどんなものなのか。そうした想いを綴っています」

手紙は、野中氏が社員1人1人へ手渡しする給与明細書に同封している。封筒を開け、皆が社長からの手紙を読んでいる光景が毎月の風物詩だ。手紙はもう28年も書き続けているという。野中氏は今回の受賞について、「賞をもらいたくて仕事をしているわけではないけれど、我々が模索してきた組織づくりが、社会からどう評価されるのかを知る良い機会だと思います」と話す。

同社は2022年に東京都女性活躍推進大賞「優秀賞」を受賞したが、審査のために訪れた都の担当者は、あまりにも自然に助け合いがなされている組織文化に驚きの声を上げていたという。
「女性活躍を意識したことは一度もありません。男性も女性も老いも若きも同じように活躍できる会社にしたいと思ってやってきました。“子どもが熱を出したので帰ります”という人がいたら、“お大事に”と送り出す。誰かが困っていたらフォローし合うのが当たり前というお互い様精神が根付いています」

 

ひたすらニーズに応える。それが未来を開く鍵となる

日進月歩でさまざまな技術が生み出され続けている今、無線機の需要が今後どうなっていくかは「非常に読みづらい」と野中氏。まだ無線機の市場が伸びている間に次なる種をまいておこうと、2021年にAIカメラを用いた新サービスをスタートさせたが、これからより映像に力を入れるべきか、無線機のサービスをより突き詰めていくべきか、思案しているという。しかし結局、答えは顧客との接点の中にしかない。
「お客様の悩みや要望を丁寧に聞き、社内の“人財の力”によってサービスを磨き、より良い解決策を提供し続ける。そこに注力していれば、自ずと方向性は見えてくるはずです」
もし時代や市場が大きく変わっても、明るい未来にたどり着く以外ない。同社には、そう思わせてくれるポジティブさが溢れている。

 

投資育成へのメッセージ

社長
野中元樹

いつも質の高い研修プログラムを用意してくださり、ありがとうございます。社員と共にたくさん参加させていただいています。今後は、貴社がもつ豊富なネットワークを活かして、会社同士の交流やマッチングの場を設けていただくことを期待しています。貴社の投資先は素晴らしい会社ばかり。ぜひテーマ別の交流会も実施していただけるとうれしいですね。

 

投資育成担当者からのメッセージ

業務第二部 主任
永島光章

オンザウェイ様は無線機のリース・レンタルから保守サービスまでを一貫して手がける会社です。きめ細かなサービスはお客様から重宝されておりますが、その根底には野中社長をはじめとする皆様が、30年以上かけて創り上げてこられた経営理念「共に育つ」の全社員への浸透があるのだと肌で感じました。魅力溢れるオンザウェイ様のさらなるご発展に向け、弊社も微力ながらご支援してまいります。このたびはご受賞おめでとうございます!

 

機関誌そだとう225号記事から転載

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