トレカン
~Treasure Company~

“顧客主義”をエンジンに、業界の変革へひた走る

株式会社システムオリジン

 

株式会社システムオリジン
主な事業内容:
タクシー業界向けシステムの提案・導入・保守
本社所在地:
静岡県静岡市
創業:
1982年
従業員数:
79名

「自動運転技術が現実のものになれば、送迎サービスはタクシー会社でなくともできるようになるでしょう。その中でタクシー業界が生き残るためには、人が介在しなければできないサービスをどれだけ提供できるかだと思います」

今後のタクシー業界のあり方をこう語るのは、静岡県静岡市に本社を構える株式会社システムオリジンの代表取締役社長・海野知之氏だ。同社は1982年の創業以来、タクシー業界向けのソフトウェア開発を続け、全国約1200社の導入実績をもつ。40年以上、この道一筋で業績を伸ばしてきた背景には、ソフトウェア開発企業にとどまらない、業界全体を見渡す視点がある。

 

(写真左)全国約1200社のタクシー事業者で採用されている、同社のソフトウェア。
(写真右)静岡県静岡市に構える本社。

4人の若者が独立し創業。受講生の悩みをシステムに

パソコンが日本へ入り始めた1970年代後半。海野氏と前社長の清野吉光氏を含む4人は、好奇心に動かされてプログラミングを独学で学び始めた。そしてある日、パソコン教室の講師を依頼され、3カ月ほどプログラミングを教えることに。これが、同社創業の発端である。受講生の中にタクシー組合の専務理事がいたのだ。彼は各社が使うシステムを自分でつくろうと意気込んでいたものの、難易度が高いと判断。海野氏らに「システムをつくってくれないか」と話を持ちかけた。若さゆえ、「失うものはない」と意気込んだ4人は会社を辞め、独立した。

創業の翌年には、タクシー事務処理システム「タクコン」を開発。さらにその後、タクシー電話受付システム「テレハイ」を開発し、現在まで2つのシステムを柱にタクシー業界の課題解決に寄与し続けている。タクコンは、ドライバーの日報入力や拘束時間管理、配車計画といった運行管理、給与計算、未収管理、事故管理、財務会計の機能を有している。これらはすべて、開発当初に近隣のタクシー会社へ足しげく通い、とことんヒアリングした意見をもとに実装した。
「当時、多くの中堅・中小企業はいいソフトウェアがないために大半の事務作業をアナログでやっていたのです。だから、少しでも作業効率を上げられる使いやすいソフトウェアをつくろうと開発に臨みました」

テレハイは、電話でのタクシー手配が一般的だった当時、かかってきた電話のやり取りをもとに、顧客のデータベースをつくりはじめたのがシステムの起こりだ。「〇〇の交差点を100m北へ進んだお宅」や、「到着したら電話をかけてお客様にお知らせする」といった情報を蓄積して、得意先情報として管理した。現在は、地図機能を設けたり、配車アプリなどとも連携したりと時代に合わせたシステムへ進化して、配車の効率化を支援している。

「できない」とは言わない市場全体のハブへ成長

タクコンもテレハイも、今や全国約1200社の導入実績を誇り、業界内シェアは第1位。これを実現できたのは、同社がユーザー目線でさまざまなサービスを採用してきたからである。その1つがセミオーダー方式だ。企業によって使いたいシステムが異なるため、ベーシックな機能にオプションでほしい要素を追加できるようにした。もう1つは定額制の料金体系だ。
「運賃の改定や消費税の改正など、システムの更新や変更が必要な場面は少なくありません。そんなときに、ソフトウェア会社が足元を見るような金額を吹っかけるのは酷いですよね。当社は、月々決まった金額をいただけば、何でも対応するやり方にしています」

遠隔サポートの仕組みを確立したことも、全国に顧客を増やす礎となった。インターネットがなかった時代にもかかわらず、電話回線を使ってソースコードを送り、ソフトウェアの変更や修正を行える仕組みをつくったのだ。24時間365日のサポート体制を構築している点も、顧客にとっては大きな安心材料だろう。

機能の拡充も含め、こうした痒い所に手が届くサービスの数々は、「お客様の言うことは何でもやる」という創業当時から変わらない姿勢の賜物だ。

例えば、「車の消臭剤をおすすめしてほしい」や、「車内で携帯電話の充電をしたい」といったシステムに関係のない要望であっても、「専門外なので、できません」とは言わないのだという。
「消臭剤や充電器を開発するわけではありませんが、お客様に合うベストなものを探すお手伝いをします。これは会社の姿勢として大切にしている部分です」

 

全国のタクシー会社の配車室で採用されている「テレハイ(電話受付・配車管理システム)」。
地域や規模、会社ごとに異なるルールに向き合い、1社1社に合わせたチューニングで運用されている。

 

このように数多くのタクシー会社の困りごとに対応するうち、サービスや経営に関する相談が持ちかけられるようになる。そこで同社は、タクシー会社同士が手を取り合い、業界の活性化を図るためのハブの役割を担うべく立ち上がった。
「会社同士は競合相手でも協業相手でもある。それがタクシー業界の特徴です。また、特定のエリア内で商売をしているため、エリア外の新しい情報が入りにくい。それで、シンポジウムを開催して全国のタクシー会社が顔を合わせる機会を設けたり、勉強会の組織をつくったりと、互いに学び合えるようにしたのです」

勉強会には、40社以上の企業が参加。これを10年以上継続している。タクシー発祥の地であるロンドンなど、海外への研修にも出かけているという。

 

2012年から行っている同社主催の勉強会。
全国のタクシー事業者向けセミナー(写真左)のほか、整備工場の見学会(写真右)なども実施。

思い切った組織改革が成功次期経営者候補の育成も

海野氏は2016年に代表取締役社長へ就任。それと連動して、同社は大きな組織改革を実行した。この頃、一時的に退職者が増え、社内によくない雰囲気が漂っていたことが発端だった。社員にアンケートを取ってみると、「経営方針がわからない」「社員を見てくれていない」といった不満が散見され、「このままではいけない」と改革を決断したのだ。
「一番の問題はセクショナリズムでした。システムの作り手と売り手が分断され、営業がエンジニアに無理を強いて関係性がこじれていたのです。どちらもお客様を思う気持ちは同じなのに、組織として1本筋が通っていないと互いの都合をぶつけ合ってしまう。だから、組織を変えないといけないと考えました」

そうして新たに設けられたのが、通称「幕藩体制」と呼ばれるチーム制だ。「システム部」と「営業部」の2部署制を廃止し、地域ごとに4つの「藩」に分けた。藩には作り手(エンジニア)も売り手(営業担当者)もいて、それぞれが協力し合って顧客と向き合う。また、各チームにGM(藩主)を設けて売上目標を立てさせ、自主運営させることにした。藩主はあえて営業担当者ではなく、エンジニアから選出する。作り手目線で生産性を上げるチーム運営をしてほしかったからだという。

組織改革により、収益率が上がり、残業時間も減り、退職者も激減。全員が同じ方向を向いて協力し合う組織運営が成功している。

今後、事業承継を検討するに当たっても、この幕藩体制は有効的だ。藩主らはいわば、社内で“ミニ経営”をしているようなもの。自然と経営者視点で社内を見る環境にあるのだ。「我こそは次の社長になりたい人」という呼びかけに、4人の藩主と本社機能を担う幕府から2人が手を挙げ、現在6人が次期社長候補として切磋琢磨しているという。

新たなタクシー像の構築へ観光と介護に見る可能性

頼もしい社長候補たちに支えられながら思い描いているのは、これからのタクシー業界の未来だ。介護や観光といった高いホスピタリティが必要とされる分野においてこそ、タクシー会社、そしてドライバーが担うべき役割があると考えている。
「タクシードライバーは、地域のコンシェルジュになるべきです。ロンドンタクシーのドライバーは自らを“女王陛下の水先案内人”だと語っていて、プライドを感じました。路線バスが減少して生まれている地域交通の課題解決に対しても、タクシー会社が積極的に行政と協力し、新たな移動サービスを打ち出す必要があるでしょう」

ロサンゼルスのハイヤー会社を買収し、ジャパン エグゼクティブ リムジンという子会社を立ち上げたのは、業界変革への第一歩だ。国内のネットワークと現地企業のノウハウを活用し、インバウンドおよびアウトバウンド事業を展開する。

業界の生き残りには、これまでのタクシーのイメージを覆すようなアイデアが欠かせない。先駆的なシステムやサービスを構築し、なおかつ業界を俯瞰して課題を解決し続けてきた同社だからこそ、業界変革の軸になれるはずだ。

 

社内で行われたボウリング大会。
和気あいあいとした同社の雰囲気が伝わる。

 

機関誌そだとう225号記事から転載

経営に関するお役立ち資料を
お届けいたします

© Tokyo Small and Medium Business Investment & Consultation Co.,Ltd. All Rights Reserved.