「サステナビリティ」を武器に、世界から選ばれ続ける

吉村昇 社長
- 主な事業内容:
- ポリウレタン合成皮革の製造販売
- 本社所在地:
- 東京都八王子市
- 創業:
- 1966年
- 従業員数:
- 321名(グループ合計)
2025年、最新鋭の「サステナブル・プラント」として千代田工場(群馬県邑楽郡千代田町)が稼働を開始した。東証スタンダード市場上場のウルトラファブリックス・ホールディングス株式会社(以下、ウルトラファブリックスHD)の国内子会社、高級合成皮革(ひかく)の製造を手がける第一化成株式会社の新工場だ。
工場棟および事務所棟の屋上に太陽光パネルを設置するほか、水素ボイラーを導入。また、地下水など未利用の熱源を空調設備に活用するとともに、排水処理設備の導入によって工場排水の再利用を進める。建設資金は、環境改善効果のある事業に限定した「グリーンローン」で調達した。

(写真左)新設した千代田工場で導入する不純物を除去する排水処理システム。
(写真右)千代田工場で使用する蒸気の25%をこの水素ボイラーで供給している。

今回お話を伺った、
髙野美香取締役 経営企画部長
「新設した千代田工場の投資額約55億円のうち約16億円がGX関連費用です。当社の売上のほとんどは各分野でプレミアムブランドを扱う欧米企業で、彼らは環境対応への関心が非常に高いため、GXをはじめとするサステナビリティに取り組むことが、ブランド価値の向上とともに、脱炭素要求の高い欧米市場でビジネスを展開するうえで極めて重要になるのです」
GX推進の背景について、ウルトラファブリックスHDの髙野美香取締役 経営企画部長(チーフ・サステナビリティ・オフィサー)はこのように説明する。
軽量、高品質、高耐久。環境に優しい合成皮革
同社の歴史は1966年、合成皮革を生産する第一化成の創業にはじまる。1996年以降、湿式ポリウレタンレザーの製造に特化し、本革にも負けない柔らかな質感やデザイン性、高い機能性を融合したプレミアムな素材の開発に取り組んできた。2017年にUltrafabrics, LLC(現Ultrafabrics Inc.)と経営統合し、第一化成が生産、Ultrafabrics社が販売を担う現体制となった。
同社が手がける合成皮革の特徴は4層の多重構造と、基布(きふ)や樹脂など の組み合わせにより、弾力性がある柔らかな触感にある。また、本革や塩化ビニールレザーと比べて重さが半分から3分の2程度と軽量だ。
さらに、布製生地に比べて、汚れても手入れが簡単で、耐久性が高く長期間の使用が可能。そのため、環境負荷軽減の点からも高く評価されている。
近年は動物由来の原材料を使わずにつくられたヴィーガンレザーへの関心も高まっており、旗艦ブランドの「ULTRALEATHER®」「BRISA®」などは、欧米を中心とするグローバル家具市場において、オフィスやホテル、レストラン、大学、医療機関などに製品を提供。また、自動車やトラック、小型船舶、さらには宇宙船の内装材としても使用されている。
最近の需要動向で注目されるのが航空機業界だろう。プライベートジェットから採用が広がり、現在は民間航空機のシートをはじめとする内装材として導入が増えている。
「航空各社は近年、運航時のCO2排出量を減らすために機体の軽量化を進めています。当社の製品は高級感を備えながらも軽量で、かつ布製に比べて寿命が長いため、廃棄物削減にもつながるのが強みです。そうしたサステナビリティの観点から、当社の製品は航空機向けで伸びています。また、千代田工場の本稼働を前に、世界の航空会社の関係者を招いた見学ツアーを開催しました。お客様の反応は非常によく、それと直接的な因果関係があるかはわかりませんが、航空機用事業は伸びており、それなりの効果はあったのだと感じています」

同社が提供する湿式ポリウレタンレザーは、
家具や自動車、航空機などさまざまな分野で採用されている。
社会の機運を追い風に!“攻め”の製品開発に挑む
このようにウルトラファブリックスHDの製品は、今の時代に非常にマッチしている。加えて、GXの取り組みはそのまま同社の製品価値、さらなるブランド力の向上に直結しているといっても過言ではない。
それを象徴する1つが、同社ならではのマーケティング手法に見てとれる。前述したように顧客の大半が欧米企業だが、実際に素材を選ぶ際に大きな権限を持っているのは、デザイナーだという。
「私どもの営業は、企業の購買担当ではなく、実はデザイナーに直接アプローチすることが多いのです。購買担当者は価格を重視する傾向が強いですが、デザイナーは環境やアニマルフリーなど非常にサステナビリティを大切にします。当社の製品はそうしたデザイナーのニーズに合致していると自負しています」
社会変化の後押しがあるとはいえ、同社はさらなるサステナブル製品の開発にも力を注ぐ。その1つが2019年に発売した「Ultraleather®Volar Bio」である。トウモロコシ由来成分から合成された樹脂原料や、木材パルプを原料とする繊維を一部に使⽤することにより、高い植物由来の原料比率を実現した。

トウモロコシ由来成分や、木材パルプを原料とする繊維を使用し、
高い植物由来原料比率を実現したVolar Bio。
2021年には、製造過程で発生する端切れや、販売基準を満たさなくて廃棄せざるを得なかった製品の一部を使った、アップサイクルのプラットフォーム「REDOW(リドウ)」を立ち上げた。
同社の製品特徴である耐久性が高く、しなやかで柔らかく、軽くて手入れも簡単な点を活かした、デザイン性にも優れたバッグ・クッション類を販売する。
さらに、この趣旨に賛同する企業とコラボレーション製品の開発にも取り組んでいる。最近の例では、トヨタグループの大手自動車部品メーカー、株式会社東海理化のアップサイクルブランド「THINK SCRAP」のバッグ生地として採用された。

東海理化と共同開発したバッグ。
持ち手の部分は再利用したシートベルトだ。
「東海理化様のご担当者が熱心に取り組まれ、シートベルトの端材と組み合わせたコラボレーション企画は非常に好評でした」(髙野氏)
ウルトラファブリックスHDは、製造工程における廃棄物削減を進めており、指標の1つとして廃棄率をかかげる。製造・販売過程で発生した不適合品や返品された製品の数量から再利用した数量を差し引き、製品生産数量に対する割合で算出するのだ。
当初の目標は3%以下だったが、2023年、2024年度の2年連続で1%台を維持。トラックの荷台用シートなどに再利用する取り組みが奏功したという。
CO2排出量削減に向け、積極的な設備投資を
ウルトラファブリックスHDは、CO2排出総量の削減目標として、2030年度に2021年度比42%削減を目指している。そのためにはScope1・2での大幅削減が不可欠で、その重要な鍵を握るのが生産設備の大幅更新だ。
同社の生産体制は、最新の千代田工場のほかに、行田工場(埼玉県行田市)と群馬工場(群馬県邑楽部邑楽町)の2拠点がある。4層構造から成る製品の1・2層を行田工場、3・4層を群馬工場で分業生産している。千代田工場は最終的な加工を担う。髙野氏は次のように説明する。
「行田工場はCO2排出量が多いため、同工場での取り組みがグループ全体の排出量に大きく影響します。ただ、千代田工場もそうですが、投資費用をいかに製品価格へ転嫁して回収していくかが課題です。行田工場も製品価格の動向などを見極めながら、適切な設備投資のタイミングを検討していく考えです」
GXはウルトラファブリックスHDの企業価値向上につながる強い武器となる。行田工場への投資は、そのGXを大きく前進させる次の一手になりそうだ。

機関誌そだとう225号記事から転載










