SBIC東京中小企業投資育成株式会社

CASE3

実力主義、労働時間削減でIT業界の負の印象を払拭

株式会社システムエグゼ

会社説明会で社長自ら5つの強みをアピール

会社説明会では歳の近い先輩社員が直接
本音を話して学生の不安を和らげる。

「世界に通用するIT企業を目指します」
 
東京都中央区のシステムエグゼの酒井博文社長は、自ら会社説明会に出席し、学生にそう宣言する。IT業界のトップを目指す同社の強みをアピールするため、酒井社長は最初に5つの話をするようにしている。
 
その1つ目は「終身雇用」だ。リストラがあると残った社員は自分をアピールするためにトレンドの技術を習得するが、その技術は10年先、20年先まで通用するものではない。

「社員は一人ひとり、キャリアプランが違うはず。長期的な視点で自己啓発をするべきです。それが将来の会社にとってもプラスになるのです」

2つ目は「実力主義」だ。学歴や社歴は会社への貢献度と何の関係もない。スキルが高く、成果を出した社員が報われる制度がなければ、モチベーションは維持できないと考えたのだ。

「それには、現時点のスキルで給与を決めるべきですし、一定期間の成果を元に賞与を決めなければなりません」
 
昨年、客観的な評価ができる人事制度を導入した。

長時間労働が続くと社員は成長できない

3つ目は「成長可能」であること。同社では、社内教育制度にも力を入れているが、それを生かせるかどうかには労働時間が影響してくる。

「充実した教育カリキュラムがあっても、上司の理解がなく、残業や休日出勤で利用できなければ無意味です」
 
もともとIT業界は、労働時間に関してブラックなイメージが濃い。それを払拭したいという強い思いがあった。長時間労働が社会問題となる前の2015年から、同社は労働時間の短縮に取り組んでいる。その結果、2年間で年間労働時間を5.5万時間(社員500人合計)減らすことに成功した。

それを実現するため、さまざまな取り組みを行った。最初に実施したのは社員の意識改革だ。IT業界には残業・徹夜や休日出勤を自慢するような悪い風習がある。その結果、疲れて効率が悪くなり、さらに労働時間が長くなるという悪循環に陥っていく。

「その意識を変えるため、最初のころは野球とサッカーの話をしました」
 
野球は9回が終わるまで試合を続け、時間は関係ない。しかし、サッカーは90分で試合が終了する。決められた時間内にいかに結果を出すかが問われる。仕事もサッカーと同じで1日8時間の中で結果を出すことが重要だと説いた。その上で、長時間労働社員への社長面談を実施した。本人と酒井社長が1対1で面談をするものだ。

「最初のころは何十人もいましたので私自身が長時間労働になりました(笑)。しかし、長時間労働の真因を知り対処するためには、トップである私が面談するしかなかったのです」
 
長時間労働の原因はさまざまだが、上司の仕事の割り振りに問題のあるケースが多い。そういった場合、その直属の上司が長時間労働の部下と面談しても解決しない。

「10人ぐらい部下がいれば、自分の使いやすい人にたくさん仕事を振ってしまいます。そして、その部下が長時間労働で苦しんでいても、『頑張れよ』とか『気合だよ』とか言うだけです」
 
だからこそ、トップの面談が必要なのだ。酒井社長が本人に話を聞くことで、一つひとつ問題を解決していった。現在も残業時間が3カ月連続で45時間を超えた社員と、単月で80時間を超えた社員を対象に面談を続けている。
 
また、深夜残業と休日出勤は、役員承認を必須とした。簡単に深夜や休日に働けなくなれば、日中の働き方を工夫する。これにより、深夜残業と休日出勤は激減した。
 
時間を意識させるために、毎日、夜の6時と7時に「蛍の光」のメロディーを流すこともした。
 
技術者には「今日中にここまで仕上げたい」との意識があり、つい仕事に没頭してしまう。気づいたら夜の9時ということも少なくない。「音楽が流れれば『もう6時だ、帰らなければいけない』と気づきます」
 
結果、出勤した際に「6時までに終わらせよう」との意識で仕事に取り組むようになるという。

申請・承認のペーパーレス化、社内ポータル、スマホでの勤怠管理やRPA*活用で業務を大幅効率化。その他、毎週水曜日のノー残業デーや給与支給後の金曜日のプレミアムフライデーなど、早く帰宅できる制度も導入。

*ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)

内定通知は社長が手渡し1対1で相談にのる

酒井社長が内定者に
手渡す手書きのメッセージ。

このように、労働時間を大幅に削減したにもかかわらず、右肩上がりで業績が上がり、堅調に成長している。
 
その理由が4つ目の「エンドユーザー直契約」となる。IT業界はピラミッド構造になっているが、他業界と比べて、その形は歪(いびつ)だ。例えば自動車業界であれば、部品メーカーが部品を提供し、自動車メーカーが組み立てるという役割分担があってピラミッドが構成されている。しかし、IT業界では、元請けの会社が仕事を取ってくると、下請けの会社にほぼ丸投げするケースも多い。

「下請けの仕事をしていると受け身となり、社員が成長できません。ですからエンドユーザーと直契約することがとても重要なのです。皆様のおかげで直契約が約8割を占めています」
 
同社では、多様なエンドユーザーと直契約し、最近も大手不動産会社から30億円の大規模案件を直契約で受託して大成功を収めている。
 
そして5つ目は「独立系企業」であること。子会社だと親会社によって仕事の内容や役割に制約を受ける可能性があるからだ。
 
これ以外にも、会社が学生にとって魅力的に映るように、さまざまな配慮をしている。

「郊外に社屋を移転した途端に社員が辞めたり、採用がしにくくなったという話はよく聞きます」
 
それもあって同社は、東京駅八重洲口に移転した。角地のビルで家賃は安くないが、ワンフロアを借り切っている。内定通知を出すときには社内を案内して、和気あいあいと仕事をしている様子を見てもらう。
 
また、会社説明会では先輩社員と触れ合ってもらうことを重視している。会社の良いところだけではなく、悪いところも含めて本当のことを伝えたいためだ。先輩社員の本音は、不安な学生に大きな安心感を与える。
 
さらに、内定通知を出す際にも酒井社長が1対1で学生と話をすることにしている。そのときは社長としてではなく、人生の先輩として相談にのる形で30分ほど話す。ここでも、会社の課題を隠さず伝える。また、内定通知と一緒にどの点を評価し採用することにしたのかを一人ひとり手書きで記載した冊子を手渡す。学生は何を期待されているのかがはっきり分かることになり、そのおかげもあって歩留まりは高まった。60人程度の内定者のうち40人程度は入社するという。

Profile

酒井博文社長

会社名     :株式会社システムエグゼ
主な事業内容  :システム開発
本社所在地   :東京都中央区
社 長     :酒井博文
資本金     :4億7500万円
創 業     :1998年2月
従業員     :561名
会社HP                     :https://www.system-exe.co.jp/

文・撮影=編集部
写真提供=システムエグゼ

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