SBIC東京中小企業投資育成株式会社

ご利用企業の皆様へ
支援事例

投資育成によるビジネスマッチングで新製品を共同開発

ソメスサドル株式会社

「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と「中小企業憲章」に記されている。中小企業は日本の全企業数の99.7%を占め、国内雇用の約7割を創出している。同憲章にもある通り、中小企業は「常に時代の先駆けとして積極果敢に挑戦を続けてきた」が、各社がそれぞれの成長ステージで直面する課題を乗り越えるための支援が欠かせない。
こうしたなか、東京中小企業投資育成は、中小企業投資育成株式会社法に基づき、中小企業の自己資本の充実を促進し、その健全な成長発展を図ることを目的に、投資業務および経営相談やビジネスマッチングなどの育成業務を行っている。同社の活動を交え、果敢に市場を切り拓く中小企業の姿を紹介する。

作り手の心のこもった逸品を、ぶれずに作り続ける

馬具作りの伝統を受け継ぐ技術

北海道歌志内(うたしない)市に、日本唯一の馬具メーカーであるソメスサドルがある。ソメスはフランス語で「頂点」、サドルは英語で「鞍」を意味する。
同社は、武豊氏やミルコ・デムーロ氏を始めとする国内外のプロ騎手が使う鞍や宮内庁向けの馬車具、鞄や財布などの革製品を、手作りで製作している。
歌志内市に隣接する砂川市の砂川ファクトリー&ショールームで革製品を生産し、修理も行っている。札幌、新千歳空港、東京・青山に直営店舗を展開し、北海道、関東、東海・甲信越、近畿、九州の百貨店などに取扱店を持つ。
長年にわたる馬具作りで培った高度な技術を活かし、丈夫で使い込むほど味わいの出る高級革製品ブランドとして、同社はファンを着実に増やしている。
馬具には高い機能性と耐久性が求められる。なかでも競技用の馬具は、鞍はもちろん、騎手が全体重をかけるアブミを支えるアブミ革をとっても、人命を預かる大切な道具。そのため素材である革の選定から裁断、加工、縫製まで、一切の妥協が許されない。

職人の手作りの技がつぐむブランド価値

ソメスサドルの前身となるオリエントレザーが設立されたのは1964年。歌志内市はかつて炭鉱の町として栄えたが、石炭産業の衰退で炭鉱の閉山が相次ぎ、同市は町を挙げて企業誘致を行った。その第一号が同社である。開拓時代の伝統を受け継ぐ道内に、馬具の需要があったことから、馬具職人を集め、再雇用した炭鉱離職者の技術指導を行い、馬具製作を開始した。当初はレジャー用馬具の輸出を手がけていた。
ところが石油ショック後の急激な円高で、同社は大きな打撃を受ける。1975年、同社は自社で企画した製品を作り、販売できるメーカーになるという夢を描きながら再建に着手。そして1986年に現在の社名に変更し、社運をかけて「ソメス」ブランドで馬具以外の革製品の展開をスタートさせた。
自然素材である革には、1つとして同じものが存在しない。そのため革1枚1枚の「個性」、すなわち繊維の方向や堅牢の差といった部位の特徴を見定めて裁断を行う。ベテラン職人と若手が3、4人のチームを組み、職人たちは革製品作りに関するすべての工程を経験。1人の職人が手仕事で1つの製品を完成まで手がける体制を整えている。
「(ソメスブランドは)馬具を扱う道具屋の延長線上にある、と私は社内でつねに話しています。商品の企画やデザインについても、馬具用の分厚い革や馬具用の金具などのアクセサリーに加え、馬具作りの要である手縫いなどの要素を入れ、数あるバッグのなかでも『あれはソメスの製品だ』と思わせる雰囲気を持った製品作りを行っています」と染谷社長はいう。

投資育成によるビジネスマッチングで新製品を共同開発

ソメスサドル
代表取締役社長
染谷昇氏

ソメスサドルは2007年、経営の安定化を目的に、東京中小企業投資育成から投資を受けた。その直後にリーマンショックが起こり、商品の売れ行きが大きく落ち込んだが、同社は社員の雇用を守る決断を下した。
2008年に就任した染谷社長は、「自分たちは道具屋であるということに誇りを持つこと」と「社員と家族を幸せにすること」を理念に掲げ、社員1人ひとりと面談を行い、「ものづくりと販売、サービスが揃って一流だと評価される企業を目指そう」と呼びかけた。
そうしたなかで投資育成は、同社の投資先であるマルマン(東京都中野区)とのビジネスマッチングを提案。マルマンはスケッチブックやノートブック、ファイルノートなどの製造販売を手がける老舗メーカー。国内で質の高いものづくりを行っている両社の思いが一致し、マルマンの国産オリジナル筆記用紙と、ソメスサドルの国産牛革製品とのコラボレーションが実現し、ノートブック、ノートパッド、メモパッドなどからなる「Mnemosyne(ニーモシネ)」と、マルマンの最高級筆記用紙を使用したファイルノートの「GIURIS(ジウリス)」が2012年に誕生した。
「今後は直営店を増やし、都市圏への展開を体力相応に進めていきたいですね」と染谷社長は抱負を述べる。その一方で、ソメスブランドを育んできた地元・歌志内および砂川地区への地域貢献にも力を入れる。
同社は、馬具製品以外の革製品を作り始めて間もない頃に工場直売を始めた。「こんなところにお客様が来るはずがない」という声も少なくなったが、予想に反し、地元の人々が工場に大勢訪れて製品を買い求めた。その意味で地元の人々は、同社の革製品を他に先駆けて支持してくれたファンでもあるのだ。
ソメスサドルは、毎年7月と11月に砂川ファクトリー&ショールームでフェアを開催しているが、同フェアには普段製造現場で働いている社員も含めて全員が参加し、顧客とのコミュニケーションを深めている。アンケートをもとに、砂川ファクトリー&ショールームの敷地内に「回廊カフェ」を作り、顧客がくつろぐ憩いの場を整備し、情報発信の拠点としても活用していく計画だ。「地域ブランドは地に宿る」を信条に、ぶれずに本物を追求するものづくりを貫いていく。

コラム

企業が目指すものを大切にマッチングを提案

東京中小企業投資育成
業務第3部 上席部長代理 チームリーダー
藤原直人氏

世にブランドが数あるなかで、ソメスサドル社は、正直なものづくりを行って質の高い製品を作り、数多くのファンから高く評価を得ている企業です。
当社では、投資先企業への経営支援の一貫としてビジネスマッチングを行っていますが、各社がどんな方向性のもとで何を目指しているのかを、担当者がきちんと把握すればこそ、投資先に適した企業をマッチングすることができると考えています。
その点、ソメスサドル社も、コラボレーションのパートナーとして提案させていただいたマルマン社も、製品の品質をきちんと守りたい、自社のアイデンティティとして、地域に根ざした事業を展開したいという観点から、国内に残ってものづくりを続けられており、メイド・イン・ジャパンの高い品質と価値を守っていきたいという共通した思いをお持ちです。
そのためトップ同士がすぐに意気投合し、両社のコラボレーションによる商品開発プロジェクトは順調に進んでいきました。また当社の投資先であるインテリア家具、オフィス家具、オーダー家具メーカーのカンディハウス社(北海道旭川市)とのコラボも実現し、ソメスサドル社の製造技術を駆使した厚革張りの椅子も商品化されました。
担当者として、ソメスサドル社のことを社内で一番よく知っているのは当然として、一番の応援団としても、同社に永続する企業になっていただくために、心からの支援を行っていきたいと思います。

© Tokyo Small and Medium Business Investment & Consultation Co.,Ltd. All Rights Reserved.