「ムダ」を減らすコア事業で、会社をさらなる高みに
「会社を継いだときは正直、父親も困ったことをしてくれたものだなと思いました。しかし、今となっては、非常にいい加工方法を考案してくれたなととても感謝しています」
こう笑って話すのは、株式会社共進の2代目、五味武嗣(たけし)社長だ。

五味武嗣 社長
- 主な事業内容:
- 金属製品の製造販売
- 本社所在地:
- 長野県諏訪市
- 創業:
- 1962年
- 従業員数:
- 130名
同社は1962年に父で先代の五味和人氏が創業。自動車関連を中心に建設機械や産業機械、農業機械向けの金属加工部品を手がける。共進の最大の武器は、和人氏が1997年に独自開発した「カシメ接合法」だ。同社の従来の加工方法は金属の丸棒から部品形状を削り出す方法であったが、材料のムダが多く出るほか、加工に時間がかかるため、結果として製品価格が高くなってしまった。
一方、カシメ接合法は、最小限の材料から最適な加工方法でつくった複数の部品をプレス加工し接合する。この方法だと材料費が抑えられ、加工機も小型ですみ、加工時間も短くなるため製品価格も安くなる。
「カシメ接合法は、苦肉の策から生まれたものだったようです。当時は会社の資金力が乏しく、大きな機械設備や大量の原材料を仕入れる資金がなかったため、父は製造法を工夫したのだと思います。小さな機械で、極力少ない材料から部品をつくり、それを組み合わせる。ただ、カシメ接合法は従来に比べ低価格になるので、売り上げの観点でみると厳しいのが実状でした」
これが冒頭の五味社長の言葉の背景にあるのだが、時代が大きく変わり、今ではカシメ接合法に強い追い風が吹いている。
「サステナビリティ経営を重視する時代になり、省エネルギーや省資源、省廃棄物などのカシメ接合法の利点が大きな強みになっています」

切削加工・研削加工・カシメ接合法による組み立て加工で製造している、同社製品の一部。
自動車部品、建設機械部品、農業機械部品、産業機械部品など、幅広い分野で採用されている。
排出量の“見える化”が経営の矢印を定めた
この社会の変化を敏感にとらえ、共進はGXに力を入れている。CO2を中心とした、Scope1・2の温室効果ガス排出量の算出にいち早く着手。Scope1は、燃料の燃焼や製品の製造工程で直接排出するCO2が算定対象。Scope2は、自社が購入した熱・電力の使用に伴う排出が対象となる。いずれも自社でマネジメントでき排出量の管理が容易なので、削減目標や計画が立てやすい。さらに昨年からは、顧客からの強い要請を受け、自社以外の排出量をとらえる、Scope3の算出も始めた。
「Scope3については、細かい排出量の内訳まで求められていません。しかし、いい加減に算出して後で辻褄が合わなくなると困るので、長野県産業振興機構の支援を受けて最初からしっかり取り組みました」
算出にあたっては環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」の排出原単位データベースを利用。国が推奨していることに加え、顧客も利用していたからだ。費用や時間などのコストを抑える狙いもある。
CO2排出量算出にあたり、Scope1・2・3、各活動量の整理が必要となるが、思ったほど苦労しなかったと五味社長は振り返る。
「当社は品質ISOや環境ISOのほか、管理が非常に厳しい自動車産業向けの品質マネジメントシステム(IATF16949)も取得しており、さまざまなデータを取っていたのでそのまま活用できました。Scope3に関しても、当社は金属材料を部品に加工して販売するというシンプルな事業なので、購入した製品、資本財、廃棄物などから簡単にCO2排出量は算出できました」
CO2排出量を算出した結果、大部分を占めているのは購入した材料であることが判明。CO2排出量削減のためには節電や再生可能エネルギーへの切り換えも効果的だが、より大きな効果を出すには不良品削減などで材料の使用を減らすことがもっとも有効だとわかった。
そこで力を発揮するのが、「カシメ接合法」だ。カシメ接合法のCO2削減効果を試算したところ、たとえばフランジ付きシャフトを製造する場合、CO2排出量は約10分の1に減り、製品単価も約35%ダウンできる。
現在、同社製品の約4割がカシメ接合法でつくられている。残り6割の従来手法製品をいかにカシメ接合法に転換していくかがCO2削減の大きな鍵となるだろう。それには顧客企業の理解が必要なため、同社は提案営業に力を注いでいる。
通常、共進には顧客から部品の設計図が渡され、その図面に基づき部品を製造する。ただ、この設計図が切削での加工が前提であっても、カシメ接合法へ転換可能なケースもある。その場合、省エネや省資源、コストダウンなどのメリットを顧客に説明し、製造方法の転換を促すのだ。
他方、生産面においては、設備更新にも余念がない。2016年、本社工場の洗浄設備を全面刷新した。金属加工後の部品の洗浄のために、洗浄設備は24時間稼働していたが、最新の装置に入れ替えることで、1日11時間の稼働ですむようになった。これにより製品1個あたりのエネルギー使用量は従来比で約43%減と大幅に削減した。設備更新にかかった約3000万円の投資額のうち、約1000万円は一般社団法人環境共創イニシアチブの「エネルギー使用合理化等事業者支援補助金」を活用したという。

(写真左)共進の独自技術である「カシメ接合法」の作業風景。
(写真右)長野県諏訪市にある本社。
サステナビリティの推進で“人”が集まる企業へ
GXを全社で推進していくためには、従業員の協力が必要となる。
「おそらく従業員の多くはGXという見方はしていないと思います。それよりも費用削減です。CO2を1トン減らしたといってもピンときませんが、電気料金がいくら減ったというのは一目でわかります。実際の取り組みでは、各部署で年間の費用削減目標を設定し、現場で実践してもらっています」
共進は、GXをはじめ早くからサステナビリティ経営に力を入れてきた。その効果は、人材採用にも広がっているという。
今や小学校からSDGsなどを学習する。若い世代の社会貢献に対する意識も高まっている。同社は長野県の教育関係者への講演を実施するほか、近隣の小・中・高・大学から多くの見学者を受け入れている。
「実は2019年のコロナ禍前に見学者や研修生、企業説明会などに参加する学生が激減しました。カシメ接合法など当社の技術力を全面に押し出していたのですが、どうにも響かないのです。どうしようかと打開策を考えていたとき、GXをはじめとするサステナビリティやワークライフバランスなどを打ち出したところ、Ⅴ字回復して非常に驚きました」

若手の女性スタッフの採用も多く、現場では多様な人材が活躍している。
GX推進法の改正案により、日本の排出量取引制度(GX-ETS)は、2026年4月から義務的な制度へ移行する予定だ。企業は温室効果ガスを排出できる量が定められ、それを超える企業は市場で排出枠を購入しなければならない。年間のCO2排出量が10万トン以上の事業者(単体)は、排出量取引制度への参加を義務づけられる。
五味社長は、「中堅・中小企業にとっても、その影響は必至です。特に東証プライム市場上場企業と取引を行うためにはGX推進は不可欠となるでしょう。一気にすべてを行うのは難しいですから、できるだけ早く、小さなことから始めることが大切だと思います」とアドバイスするとともに「当社もカシメ接合法の普及促進を図りながら排出削減に取り組んでいく考えです」と気を引き締める。

機関誌そだとう225号記事から転載










