オフィス探訪

業界イメージを刷新。「人が集まる」モデルケース

環境のミカタ株式会社
環境のミカタ株式会社
主な事業内容:
廃棄物・資源リサイクル事業、廃棄物・資源物流事業、未来エネルギー供給事業など
本社所在地:
静岡県藤枝市
創業:
1975年
従業員数:
176人

受付前では、環境のミカタのマスコットキャラクター「ミカタくん」がお出迎え。
いたる所に置かれた観葉植物は、フェイクではなくすべて本物。ドイツから取り
寄せた特殊な土を使い、手入れに手間がかからないようにしている。

 

廃棄物処分や資源リサイクル事業などを手がける環境のミカタ。そのオフィスは都心のIT企業さながら、開放的な空間に風通しの良い社風を感じる。

同社は2021年から段階的に新オフィスへ移転した。重視したのは「駅の近く」で「働きやすい空間」であること。その背景には、採用への強い思いがあった。
「廃棄物を取り扱う私たちの業界は、昔ながらの引き出しがついたグレーの事務机が並ぶ“事務所”に、女性は制服、男性は作業着というイメージが強い。そのため、若手はなかなか集まりません。誰もが“ここで働きたい”と思うオフィスにしたいと、以前から考えていました」

そう語るのは、環境のミカタの渡辺和良社長だ。新オフィスは最寄り駅から徒歩約5分。駅から遠く、車通勤が必須だった旧オフィスとは異なり、今は電車通勤の社員もいる。もともと物流倉庫として使われていた建物を同氏が気に入り、3年かけて入札。存在感のある外観はそのままに、内部を働きやすい空間へと改装した。「世界に1つしかないオフィス」をコンセプトに、「緑をあしらうこと」と「徹底的にペーパーレスにすること」を意識したそうだ。

「緑があると落ち着くのはもちろん、当社の事業も環境に関わるので、そのイメージをオフィスにも落とし込んだのです。ペーパーレスは以前から進めていましたが、今ほど徹底はできていなかった。現在は一部を除き、書類はほぼすべてデータ化したので、書棚にもゆとりがあります。フリーアドレスで机も広々使えるようにして、圧迫感をなくしました。産廃業界でここまでやるのは珍しいかもしれませんが、従来の印象をひっくり返すような、刷新されたイメージを押し出しています」

 

(写真左)入り口の右手には、ゆったりとしたソファ席が用意されている。社内に多く飾られているアート作品は、渡辺社
長が自らセレクトしたもの。カフェやホテルのような雰囲気を味わえる。(右)靴を脱いで足を伸ばせる、畳敷きのリラッ
クススペースも完備。クッションや、膝上にパソコンを置くためのツールも用意されており、ここで仕事をすることも可能。

 

(写真左)女子トイレの洗面台には、明るい白い光が顔に当たる「女優ライト」を設置。「仕事を終えたら、ここで身だしな
みを整えて、街へと繰り出してほしい」と渡辺社長は微笑む。(中央)昼食時には、オープンキッチンのカウンターが
社員でにぎわう。モニターからは音楽が流れ、渡辺社長の提案でアクアリウムも置かれている、癒やしの空間である。
(右)2階に上がる階段の壁に書かれた文字は、企業理念「できることは、もっとある」の英訳。このフレーズは収集車にも書かれている。

間接的な投資を惜しまず「働きやすさ」を重視

イスや壁の少なさなど、細かなとこ
ろまで社員の働きやすさと雰囲気の
良さを追求していると語る渡辺社長。

新オフィスの構想は渡辺社長とデザイン会社のみで進め、社員にはサプライズだった。完成したオフィスを見た社員からは、驚きと喜びの声があがったという。環境のミカタは創業当初、社員5名で約10坪の事務所だった。そこから事業拡大に合わせて移転を重ねる一方で、時代とともに人手不足も深刻化。渡辺社長が特に悩んでいたのが、若手採用だ。いかに人材を獲得するか、若手社員の意見を聞いていく中で、働きやすい空間の大切さを感じたという。

実は現オフィスに移転する前も、おしゃれなコンテナハウス風の社屋を構えており、十分きれいだった。だが手狭になったことに加え、より新しいことに取り組んで“最先端のオフィス”をつくることが、自社のブランディングにも大きく寄与すると考えたのだ。都心のベンチャー企業を見学するなどして、これまでにない空間が完成。今では、特に女性からの応募が増え、採用にも手応えを感じていると同氏は微笑む。

「オフィスへの投資は事業設備への投資と異なり、売上などに直接的には結びつかない。けれども、オフィスをないがしろにしては、人は集まりません。当社はドライバーの制服デザインも一新しました。そうした間接的な要素を整えることで、“ここで働きたい”という人材が集まり、事業にも好影響を与えるでしょう」

新しいオフィスには、藤枝市長をはじめ、地元企業からの見学者も多く訪れるそうだ。環境のミカタは、地域に人を集めるモデルケースとしても機能している。

 

フリーアドレスの執務スペースは床から一段上がっており、コード類がきれいに納められている。
イスはすべて高機能なオフィスチェアで、疲れにくく仕事がはかどると社員からも好評だ。

 

機関誌そだとう222号記事から転載

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