トレカン
~Treasure Company~

元Jリーガーが挑む! 業界のファイナリスト

株式会社トップ
株式会社トップ
主な事業内容:
広告宣伝の企画・立案・制作、チラシ・官公庁広報誌・カタログ・パンフレットなどの企画・制作・印刷・加工
本社所在地:
静岡県静岡市
創業:
1965年
従業員数:
130名

2000年に移転した静岡市清水区内の本社社屋。
爽やかなブルーの建物が印象的。

 

工場の中央に設けられたオペレーションルームから各機を操作。毎時約20万部(B4)もの印刷物を高速で刷り上げることができる高性能の輪転機が、5台並んで稼働している様は圧巻だ。来期、創業60周年を迎える静岡市の印刷会社、株式会社トップの静岡工場(通称:AZZURRI アズーリ)は、同社を東海エリアを代表する企業へと押し上げる礎となっている。

短納期・小ロット・高品質・低価格を実現する設備投資

創業者で前社長の杉本悦朗氏が、勤めていた印刷会社から独立して起業したのが、同社の始まり。当初は印刷業務のみを請け負っていたが、そこから事業を拡大し続け、現在は印刷物の企画・制作・印刷までを一手に引き受ける総合企画印刷会社として、さまざまなジャンルの案件を受注している。メインは新聞の折り込みチラシ。県内のみならず、関東・東海・関西圏の自治体などから依頼を受け、広報誌を中心とする媒体の制作も数多く引き受けている。

紙媒体のデジタル化が進み、印刷業界へのニーズが変化する中にあっても、「今期はおそらく、ここ10年で一番活性化している状態だと思います」と、代表取締役社長・杉本雅央氏は好調ぶりを語る。この右肩上がりの勢いを支えているのは、同社が先駆的に導入した、高品質の輪転機を含めた次世代戦略機7台だ。

「印刷産業は、装置産業です。最新の設備・技術を取り入れることによってお客様からの信頼を獲得して、事業を拡げてきました。先代からよく聞かされたのは、売上の何倍もの設備投資をして、それによって会社が大きくなってきたという話。創業から日の浅い、売上が2~3億円の頃に、3億円を超える設備を入れたのだそうです」と杉本氏。

同社の歴史の中で、最も規模が大きかった設備投資は、現在フル稼働している次世代戦略機だ。先代が工場を新設し、2006年に5台、2007年に1台と一気に6台の輪転機を入れ替えた。これは、印刷業界では驚くべきやり方だという。

「私は業界に何十年もいますが、いくら装置産業だからといって、一度に6台を新調するなど聞いたことがありません。1台ずつ購入したり、1~2年リースの据え置きで支払いを遅らせたりするのが普通です。20~30億もの設備に関する減価償却費を可能な限り一括償却し、大赤字を出したのですから、思い切った舵取りだったと思います。しかし、それによって顧客数も受注量も大幅に増えて今がある。当社にとっては非常に大きな転換期でした」

昨今の印刷業界が顧客から求められる4大要素は、短納期・小ロット・高品質・低価格。それに十分に応えることができる設備を手に入れて、同社は業界内での存在感をさらに増した。そして、企画・制作、印刷、加工、配送までをスピード感を持って社内で一括対応する「オールインワンシステム」を確立。顧客からの多様な要望に応じられる、ワンランク上の総合企画印刷会社へとステップアップしたのだ。

 

(左)目にも止まらぬ超高速で、次々とチラシが印刷されていく。
(右)マシン1台につき従業員2人が対応。省人で稼働できるのも大きな魅力。

 

工場は2交代制で24時間稼働。データ入稿から納品までを最短12時間で完了できるため、情報の鮮度が命である新聞折り込みのチラシ印刷には最適だ。受注が増えれば資材を大量発注でき、仕入れコストも削減できる。そうして低価格を実現し、会社理念にも記されている「顧客第一」を実現している。

東海エリアを代表する企業へ。実現するのは人材と設備

杉本氏が代表取締役社長に就任したのは、2008年。就任時から一貫して社員に伝え続けているのが、「名実ともに東海エリアを代表する会社になる」ということ。社長になって数カ月後に突如として訪れたリーマンショックという大ピンチの際にも、「我々の船はどこに向かおうとしているのか?」と、困難の中にあっても目標を見失わないよう、社員を鼓舞した。

代表取締役社長 杉本雅央 氏。

同社は1989年から東京支社(当時は東京営業所)を構え、東海エリアのみならず、都内の広告代理店などを介した案件を多数、受注している。杉本氏自身も28年前に同社へ入社した時から長く東京支社に勤務。受注数の増加に尽力した。だからこそ抱いているのは、「東京で堂々と戦ができ、静岡に城を構えるような会社でなければいけない」という想い。現在も東京と静岡を行き来しながら、その想いを体現すべく邁進している。

2004年には名古屋に営業所を構え、さらには大阪など関西圏へも進出して事業を拡げている。
「静岡は東京と大阪のほぼ真ん中に位置していて、どちらのエリアの案件にも問題なく対応できます。そうした立地的な好条件も武器にして、さらなる飛躍を目指しています」

とはいえ、事業拡大や会社の成長は、設備投資一辺倒で成し遂げられるものではない。躍進に欠かせないのは、人材育成だ。杉本氏は「いくらいい車を買っても、どんな操縦をし、どんな愛情をもってどんなメンテナンスをするのかによって走り方が異なるように、良い設備があってもそれを扱う人材が良くなければ結果は出ないでしょう。いつの時代も、どの業界もそれは同じではないでしょうか」と話す。

「PDCAをしっかり回すといった当たり前のこと以外、特別なことはしていない」と前置きしながらも、いくつか同社らしい人育ての考え方を教えてくれた。その1つが「社員を独りぼっちにさせない」こと。例えば、営業担当者であれば、日々、取引先やライバル企業との攻防の中でさまざまな情報をやり取りする。

「そこには良い情報もあれば、悪い情報もありますが、特に悪い情報ほど会社にきちんと報告するようにと伝えています。会社にとって都合が良くない情報は、得てして自分の中だけに留めておきがちです。でも、そういう情報はもはや、社員個人で抱えきれるものではありません。会社全体の課題として共有して、解決策を模索することが大切です。だからいつも、情報共有の重要性を説いて、意識付けを行っています」

どんな困りごとでも、会社全体のこととして受け止めてくれる土壌があれば、社員は余計な不安を抱えることなく、のびのびと活躍することができるはずだ。また、もう1つは「現場との目線合わせ」。コロナ禍でオンラインを介した会議が当たり前になったことをきっかけに、毎朝、各工場と本社をオンラインでつないで朝礼を実施するようになったのだ。

「やはり、会社の要は現場である工場なんですよ。だから、情報の共有、温度感の共有をしていくのが良いと思いました。“今日の稼働は新規の顧客です”とか、“先日こんなミスがあったから気を付けよう”とか。ささいなことかもしれませんが、丁寧に共有しています。こうしたことは紙ベースでできないことではありませんが、パソコン越しでも顔を合わせて行うことが大切だと思います。朝礼を始めてからは、ミスもクレームも減りましたね」

自社の課題と時代の要請に目を向けて生き残っていく

同社は、本社社屋にも工場内にも、いたる所に「超競争社会」と書かれたポスターが掲示してある。この意味を問うと、杉本氏は「かつては、中小企業はある程度ハンディキャップをもらって戦うことができましたが、今は大手も中小も関係なく同等に競争しないといけない状況。まさに弱肉強食の社会になっていますよね。こうした状況下だからこそ、私が社員たちにいい続けているのは、“真の競争相手は同業他社ではない。自分自身だ”ということ。時代の要請に合わせ、自社でしっかり内部改革を行っていかなければ、生き残れないでしょう。景気が悪い、国が悪い、お客さんが悪い……と誰かのせいにしてしまうのは簡単ですが、ベクトルが自社に向いていないと成長できないと思うのです」

 

(右)一度に大量に刷るために、複数のロール紙をつなぎ合わせる。経験が必要な繊細な作業。
(左)本社工場、静岡工場共に太陽光パネルを設置。静岡工場では1256枚の太陽光パネルで年間364,297kwを発電。

 

実は、杉本氏はジュビロ磐田や清水エスパルスなどのチームで活躍した元Jリーガー。こうした「己に勝つ」という思想は、実にアスリートらしい。加えて、杉本氏はまたも元アスリート独特の表現で、今後の展望を語る。

「今、印刷業界が変革を求められていることは事実です。でも、なくなる産業かと言ったら、そんなことはないでしょう。淘汰される会社はあるでしょうが、残る会社は必ずある。いわばその“ファイナリスト”に入ることが、当社の目指す道であり、私の使命です」

ファイナルに勝ち残るには、新たな決断が必要だ。

「15年ほど前に大規模な設備投資をして今の当社があります。未来を見据え、第二次設備計画をどのように実行するか。今まさに模索しているところです。時代がどう変わるのか、お客様がどう変わるのか、紙の業態でどんなものが必要とされるのか……。さまざまなニーズを読みながら、最適なタイミングで次の一手を打ちたいですね」

業界に求められるものが刻々と変化しても、決してひるまず、どうすれば勝ち残れるかをひたすらに問い、戦略を練り、実行に移す。アスリート界仕込みの経営哲学で、ファイナルカンパニーを目指し続ける。

 

静岡工場(通称:AZZURRI〈アズーリ〉)。アズーリとは、イタリア語で「青」の意味。

 

機関誌そだとう218号記事から転載

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