SBIC東京中小企業投資育成株式会社

ESG経営の成功事例に学ぶ

女性の活躍とワークライフバランスを推進 !
目指すのは、自律的な組織づくり

エムケー精工株式会社

創立70周年を迎えたいまも独創的なものをつくり続ける

自動車はつくらないが洗車機はつくる。炊飯器はつくらないが米びつや精米機はつくる。大量生産されている製品そのものではなく、関連したちょっと便利な製品をつくり続けているのが長野県千曲市に本社を置くエムケー精工だ。
3代目の丸山将一社長(45歳)は自社の特徴をこう語る。
「『これがほしかった』とお客様に喜んでもらえる美・食・住に関わる製品を1948年の創立以来、開発し続け、現在、特許と実用新案は3000を超えました。上場企業でありながら、開発・製造から販売・メンテナンスまで手がけ、北海道や沖縄を含めて全国43拠点、全て正社員で対応している会社は珍しいと思います」
エムケー精工グループの事業の柱は4本ある。
ガソリンスタンドなどに設置される自動車を洗浄する門型洗車機や高圧洗浄機などを製造するオート機器事業。道路上に設置されている道路情報表示装置や道路工事用の表示機などを製造する情報機器事業。家庭用の保冷米びつ、精米機、レンジ台、パン焼き機や工場向け食品加工機械、撹拌機などを製造する生活機器事業。そして、子会社で製造販売する木・アルミ複合断熱建具などの住設機器事業だ。
丸山社長の言う「美」とは洗車機や表示機、「食」とは米びつやパン焼き機など、「住」とは住設機器を指す。
2018年に創立70周年を迎えた同社では、今年元旦、信濃毎日新聞に全面広告を打ち、「険しい道だが、楽しい未知だ。」という見出しを掲げた。
「人の道を外さずに独創的なものをつくる」ことを信念とした創業者の丸山盛永氏のDNAを改めて示したのだ。

社長就任で社内に変化 真の働き方改革を推進

製品の精度をチェックする開発者

丸山社長の父であり先代社長の丸山永樹取締役相談役が激動期に経営を担い、1989年には上場(当時は店頭登録、現在はジャスダック)まで育て上げた。丸山社長は大和総研で戦略コンサルティング業務などに従事していたが、2010年にエムケー精工に入社、12年に3代目の社長に就任した。
「リーマンショックの影響もあり、入社した年は苦しい時期で、11年の東日本大震災で株価が暴落、社内の士気が下がっていました。39歳で社長になりましたが、それは社内に変化を起こそうという先代社長と私の意思表明でもあったのです。先代はカリスマ的な力で牽引してきたので、その分、社員たちが自ら考えようとしなくなっていました。今後は自律的な組織に変えていかないと、生き残っていけないと決意しました」
そこで、丸山社長は組織としてのレベルを上げるために優秀な人材を採用し、育成することをまず考えた。そのためにはトップ自ら積極的にそこへ関与することが必要だ。
「大和総研時代の上司が女性で、転職後も『女性が活躍する時代が来るから、もっと女性を採用して管理職、役員を育てなさい』と助言をいただいていました。しかし、当時、まだ女性の管理職候補が少なく、女性が活躍しやすい環境や制度の整備も不十分でした」
こうして丸山社長は、女性社員の活躍とワークライフバランスをてこにした働き方改革を行い、風通しがよく、自らアンテナを張って発信できる自律的社員を育てる改革を始めた。

リーダーとなれる女性の採用に踏み切る

道路でなじみ深いLED表示機の細やかな調整が進んでいた

最初に手がけたのが、リーダーとなり、将来の管理職候補となる女性の採用だった。それまでも女性を採用していたが、本社の経営部門で総合職として採用した経験はなかった。
2012年に人事部長と協力しながら女性の幹部候補採用に動き出すと、社内からは「そうした人材を受け入れられる準備ができていない」などと不安の声も上がった。
「1人目をその後のロールモデルにしたかったので、悩みながらも採用し、社長室の海外営業担当に任命しました。東京外国語大学出身で英語に堪能な才媛でした」と丸山社長。
2014年4月に2人目の女性幹部候補生が入社してきた。採用と同時にコーポレートブランディングとインナー(社内向け)ブランディング、採用ブランディングの機能を持った部門が新設され、配属された。
対外広報活動では新製品のリリースなどを担当し、新聞や雑誌などへの掲載が増加した。社内向けには社内報をリニューアルし、内容を充実させるとともに発行回数を増やした。これによって社員の士気も高まっていったという。
「社員アンケートを取ったら、『心を込めて作っているのがわかる』と評価してもらい、うれしかったです」と彼女は語る。
その後、後輩たちも次々と入社し、将来のリーダー候補女性が12名にまで増えた。現在、開発やデザインチームなどで活躍している。
「こうした改革を行うとき、大企業はボトムアップを意識して制度設計し、中小企業はトップダウンで行うのが一般的です。当社は連結で1500人の規模ですから、ボトムアップとトップダウンのハイブリッド型である必要性があります。改革が始まればいろいろな問題、光と影が出てくる。先代とそれを何度となく話し合ってきました。出てくるであろう問題をかなり想定し、説得できるように準備もしていたので、社内で慎重論もありましたが、乗り越えることができました」
丸山社長は、採用した女性たちが会社に残ってくれるかどうかは社長としての責任だと考え、その後、ライフサイクルや生活状況に合わせてさまざまな制度を導入してきた。その一端をご紹介する。
キャリア形成では、社内研修や外部セミナーを活用した女性のキャリアアップ研修、女性リーダーの積極的登用。
結婚・出産では、結婚式をまたぐ4日間の休暇を取得できる結婚休暇。第1子5万円、第2子10万円、第3子以降25万円を支給するキッズ応援金。
育児では、時短勤務、最大2歳6カ月まで連続5日間の休暇が取れる社内育児休業休暇、運動会やPTAなど子どもの学校行事参加休暇、1人で育児をする主婦(夫)を支援する有給休暇のワンオペ支援休暇。各人の記念日に取得可能な有給休暇であるアニバーサリー休暇もある。
転勤・介護・その他では、結婚や配偶者の転勤などで退職しても復帰可能な再雇用制度、在宅勤務制度(テレワーク)、消化できなかった有給休暇を積み立てできる有給休暇積立制度、社員に万が一のことがあれば、その遺児の学費を大学卒業まで全額負担する遺児育英資金給付制度などがある。

社員の必要に応じて制度を徐々に整備

(左上)低温貯蔵庫の組み立てライン。
本体パネルの部材がリズミカルに加工されていく
(左下)コーポレートコミュニケーショングループの広報担当者
(右下)熱く意見を交わし合うデザイナーたち

これらの制度は机上の空論ではなく、実際に必要があって策定してきた。例えば、遺児育英資金給付制度は50代前半で亡くなった社員の娘のために制度化した。
テレワーク制度には、雇用型と非雇用型がある。雇用型は、設計担当として優秀な大学院卒の女性社員が夫の隔地転勤で辞めざるを得なくなったときに活用した。また、結婚退職した女性にも非雇用型テレワークなら生活に合わせて無理なく手伝ってもらえるとのことから非雇用型で契約した。
「ある幹部はアルバイトと同じじゃないかと言いましたが、まったく別だと説得しました。何らかの事情で雇用を継続できない人のための制度で、こうした姿勢もコーポレートブランドを確立することにつながるのです」
2017年よりプレミアムフライデー(毎月末金曜日)の夕方4時から5時まで部門横断で開催される懇親会「ハッピーアワー」を実施。丸山社長をはじめ幹部にとっても、各社員から近況や思っていることを聞けるいい機会となっている。
ブランド戦略の一環として官公庁の認定制度などにも積極的に応募してきた。厚生労働省が認定する子育てサポート企業に与えられる「くるみんマーク」をすでに取得していたが、丸山社長はさらに高い水準の「プラチナくるみんマーク」を2015年に取得した。また、女性活躍推進法に基づき、厚労省が認定する「えるぼし」も取得。その中でも最高ランクの「3段階目認定」を受けている。
創立70周年を機に策定した新たなコーポレートスローガンは「その手があった!の一手先。」
「当社にはキッチン家電のように女性が多く使う商品もあるので、デザインや使い勝手には女性のセンスが必須です。現在、開発やデザイン部門でも女性社員が活躍しています。女性に限らず、社員には常日頃からアンテナを張って、センスを鍛え、同社の改革は今後も続く。

文=吉村克己
撮影=石橋素幸
写真提供(女性開発者)=エムケー精工

Profile

丸山将一社長

会社名     :エムケー精工株式会社
主な事業内容  :オート機器、情報機器、生活機器などの製造販売および輸出入
本社所在地   :野県千曲市雨宮1825
社 長     :丸山将一
資本金     :33億7355万円(ジャスダック上場)
設 立     :1956年(創立:1948年)
従業員     :単体814名(男性693名、女性121名)
         連結1475名(男性1081名、女性394名)
URL      :https://www.mkseiko.co.jp/

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