中小企業白書から読み解く経営のヒント

中小企業におけるデジタル化の取組

 

2022年版中小企業白書(以下、「白書」という)では、中小企業・小規模事業者の事業継続、成長を支えるインフラ(共通基盤)として、感染症流行直後から機運が高まった「中小企業のデジタル化」に着目し、分析を行っています。今回は、その内容を抜粋して解説します。

デジタル化の取組状況を、4つの段階に分けて確認

最初に、白書で示したデジタル化の取組段階について紹介します。図1は、DXレポート2や経済財政白書、DX推進指標、攻めのIT活用指針のフレームワークをもとに、デジタル化の取組状況を4つの段階に分けたものです。各段階は、「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態(段階1)」「アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態(段階2)」「デジタル化による業務効率化やデータ分析に取り組んでいる状態(段階3)」「デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態(段階4)」に大別しています。白書では、デジタル化の取組状況をこの4段階に分けて、調査対象企業の取組段階を確認しています。

 

次に、感染症流行後における、中小企業のデジタル化の進展状況を見てみましょう。図2は、時点別に見た、デジタル化の取組状況を示したものです。これを見ると、感染症流行前(2019年時点)は6割以上の企業が段階1~2の状況にあるものの、感染症流行下(20年時点)に入ると、段階3~4と段階1~2の割合がほぼ同水準となり、現在(21年時点)では、段階3~4の割合が、段階1~2を上回っていることが分かります。この結果からは、感染症流行前には取組が進んでいなかった、もしくは、まったく取り組んでいなかった企業が、感染症流行下でデジタル化の取組を進展させてきたことが推察されます。

 

 

一方で、依然として紙や口頭による業務が中心の企業(段階1)が一部存在するとともに、デジタル化によるビジネスモデルの変革など、DXに取り組めている企業(段階4)も、約1割にとどまることも分かっています。デジタル化の進展に取り組む余地のある企業は、まだまだ存在するという見方もできそうです。

デジタル化に取り組むことによる効果

それでは、デジタル化の取組により、企業はどのような効果を感じているのでしょうか。図3は、段階2~4の企業における、デジタル化による取組効果を確認したものです。これを見ると、取組段階が高いほど、デジタル化による個々の効果を実感する割合が高いことが分かります。また、デジタル化の取組による副次的な効果を確認したところ(図4)、図3と同様、取組段階が高いほど、個々の副次的な効果を実感する割合が高いことも見て取れます。これらの結果からは、デジタル化の取組を進展させていくことで、競争力の強化に資する多様な効果を得られ、事業を成長させる新たな可能性も期待できると考えられます。

 

最後に

今回紹介したパートでは、合計9社の取組を紹介しています。いずれもデジタル化の進展に取り組み、最終的には、新たなビジネスモデルの確立につながる段階への到達を実現した好事例です。各社の取組などをご覧いただき、経営のヒントとしていただけますと幸いです。

 

【事例紹介】株式会社ヒサノ(熊本県)

社外専門家との二人三脚で、
配車業務の効率化や付加価値向上を実現した企業

●2018年、ITコーディネータの支援を受けながら、自社の経営課題と、取り組むべきデジタル化の要点を整理。ITシステムの利活用が浸透していなかったことから、取組当初より、高度なデジタル化を目指すのではなく、まずは中核となる配車業務のシステム化を実現し、その経験を踏まえて、高度なデジタル化を段階的に目指すことが重要、と判断した。
●2019年より、ITコーディネータと二人三脚で配車業務のシステム化に着手。21年にクラウド上で受注・配車業務を行うシステムの開発に成功し、社内リソースの配分の最適化と、情報共有の迅速化を実現した。
●22年には倉庫業に本格進出。倉庫管理情報もシステムで連携し、総合物流サービス業への発展を図っている。

 

中小企業庁 事業環境部
調査室 調査係長
戸田健太
(2022年4月より当社から出向中)

 

 

機関誌そだとう214号記事から転載

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