飛躍する企業の人材獲得メソッド

5つの切り口で、勝ち筋を見つける

~派手なPRに頼らない、自社ならではのテクニック……~

CASE①株式会社ユーゴー

 

「“超マネジメント力”を手に入れろ」この言葉が、新卒採用ページを開くと、まず目に飛び込んでくる。
「年商1億円の『多店舗マネジメント』を、あえて新入社員に任せます。他社であれば30代、40代にならないとできないようなことを入社1年目からどんどん教える。期待とプレッシャーを感じながら、大きな裁量を与えられる真剣勝負です」

掲げるメッセージに込めた想いを語るのは、株式会社ユーゴーの沼崎周平社長である。同社は、茨城県を拠点として周辺8県に事業展開する、北関東最大のクリーニング会社。190の店舗を構え、コインランドリー事業や古着事業なども手がける。

 

沼崎周平社長

株式会社ユーゴー
主な事業内容:
クリーニング事業、コインランドリー事業、古着事業、餃子販売事業
本社所在地:
茨城県小美玉市
創業:
1976年
従業員数:
754人

 

主力のクリーニング事業では、工場1カ所の周辺に5店舗単位で展開する「パッケージプラント」という独自モデルを構築し、生産性やサービスの質向上につなげている。冒頭の「多店舗マネジメント」というのは、このパッケージプラントのことだ。
「入社した若手社員たちは、『学生時代の何十倍も勉強した』『ジェットコースターのような毎日』と話します。そんな濃い時間を通じて、本気で『超マネジメント力』を身につけようという仲間を探しているんです」

 

クリーニング店「クリーニング専科」とコインランドリー「ランドリー専科」(写真左)はアットホームな空間になるよう、
家の形を模した三角の屋根や、黒いウサギ「黒田ウーサー」や黄色いインコ「コインコ」などの印象に残るキャラクターが特徴だ。
ランドリー専科では、キャストが洗濯の豆知識やアドバイスを提供する(写真右)。

 

設立45年超のユーゴーが大学生の新卒採用を始めたのは、2006年のこと。沼崎社長の案だ。同氏が入社した当時の年商は1億円であったが、先代社長である父の拡大戦略で大幅に店舗を増やし、15億円まで成長していた。
「当時はパートの方を育てて店長に据えていましたが、その地域に家族がいる女性がほとんど。商圏が県外にも広がるにつれ、転勤可能な社員が必要になりました。そこで中途採用を始めたのですが、前職の働き方が基準になるため、当社の労働環境や社風になじまず、なかなか育成するのが難しい。新卒採用で一から育てていこうと考え、私が大学回りなどを始めました」

そんな努力の甲斐あって、初年度に新卒者を1人採用することに成功する。ところが、わずか1週間で退職してしまった。
「教育の仕方を知らず、放ったらかしだったのが原因です。まったくの準備不足でした」

新卒採用ともなれば、それに合った指導も重要だ。しかし、その体制を構築しないままに新入社員を迎えてしまえば、せっかく獲得した人材をみすみす逃してしまう。
そこで、入社後の教育方法を含め、新卒採用専門のコンサルティング会社に依頼したところ、なんと3人も採用することができた。その後も、採用市場におけるトレンドの変化を受け、何度かコンサルティング会社の力も借りつつ、自力での採用活動に取り組みながら、自社独自の採用システムを構築していった。

それが奏功し、毎年数人を獲得できるようになり、2015年には過去最高の7人を採用。しかし、ここにもまた落とし穴があった。3年以内に、全員が退職してしまう。
「学んだテクニックが先行してしまい、HPなどの見せ方がかっこよすぎたんです。新入社員が想像していた仕事とは大きく異なり、ミスマッチが起きました。もちろん嘘をついたわけではなく、すべてを伝えたつもりでしたが、学生側からすると、仕事の厳しい部分が見えていなかったのかもしれません」
こうした企業側と応募者側で生まれる齟齬に、頭を抱えている経営者も少なくないだろう。できるだけ自社のいいところを知ってほしい、魅力を伝えたいと思えばこそ、無意識に誤解を与えてしまうのだ。

独自に接点を創出し、自社を伝える機会を増やす

沼崎社長はこの失敗を機に派手なPRに頼った採用をやめ、あらためて地道に自社を伝える方法を模索していく。多いときは200人ほど集めていた大手就職サイトによる母集団形成も、80人程度まで減ってしまった。この逆境もあり、いかにユーゴーに興味を持ってくれる人と出会うか、そして自社の魅力をどう表現するのかという点について、より一層考えを深めていったという。どうすればいいのかと悩む中、同社のコンサルティングを最初に担当した女性が転職することを知り、スカウトして入社する運びとなった。
「彼女は採用のプロで、当社のことを熟知しています。窮状を訴え、なんとか力を貸してほしいとお願いしました。3年前のことですが、そこから採用システムの構築が一気に加速したと思います」

プロのノウハウを自社に取り込んだ一方で、沼崎社長も独自にさまざまな手を打ってきた。会社の認知度を高め、事業に興味を持ってもらおうと、学生に直接のアプローチを試みていたのだ。地元の大学でビジネスやマーケティングについて講義をしたり、さまざまなサークルや部活動に支援金を出して応援したり、運動部のユニフォームを無料でクリーニングしたり……、どれも特徴的な取り組みである。

また、その一環として本社も移転・新築した。山中の広い敷地を購入し、黒を基調としたスタイリッシュな建屋と、フットサルコートを併設。大学生だけでなく、地元の子供たちにも練習場として提供している。
「早い段階で、学生とのつながりや接点を増やすことが狙いです。実際、これらの活動をきっかけに説明会へ来て、入社した学生もいます」

 

本社に併設された「力こぶスポーツフィールド」(写真左上)は、社員のアイデアから実現。
フットサルコートと3on3用のバスケットボールコートがあり、社員だけでなく、学生や地域住民も無料で利用できる。
本社にはバーベキューテラス(写真右)もあり、内定者を迎えての懇親会(写真左下)が行われた。

 

さらに同氏は、自社の強みをどう打ち出すかも重要だと強調する。
「仕事の魅力には、5つの判断軸があると考えています。業種・職種・人・待遇・場所です。クリーニングという業種自体に惹かれる人は少なく、ファッションに興味がある学生くらいでしょう。他方、職種としては、管理職やマネジメントを早くから経験できるのが当社の特長です。社内の風通しがよく、若手と幹部も仲がいいのは人の魅力になる。待遇や場所はそれなりですが、サービス業では珍しく定休日を設定しており、全国転勤がなく関東で働けます」
この5つの切り口は、どんな会社でも当てはめて考えやすい。すべてに突出している必要はないが、求める人材像と照らして、そこに刺さる内容を訴求するのが有効だろう。

約20時間をかけて、互いにじっくり見極める

ユーゴーが強く推しているのは、やはり20代で管理職になれること。これは、同社が「人」を重視した採用を行っていることに起因する。
「当社が求めるのは、『誠実』『熱心』『思いやり』の3つを備えている人材です。特に思いやりは大切で、困っている人がいたら助けるという文化を大切にしています。企業風土、カルチャーを知ってもらい、共感してくれる学生を採りたいですね」

とはいえ、短い期間で人柄を見極めることこそ、採用の難しさだ。ユーゴーでは、選考中の学生に対して面接以外の接点を多くつくっている。内定候補者には、入社1~3年目の若手社員がリクルーターとして担当につき、最終合否を出すまでに約20時間の接点を確保するのだ。通常は6時間程度といわれる中、かなりの時間と労力をかけているのがわかる。
「ルールは1つだけで、嘘は禁止です。残業時間などの質問にも、ありのままを答えるように言っています。ミスマッチは、お互いにとって一番不幸せですから、当社の実情を知って本当にいいなと思ってくれる、カルチャーフィットする学生を採りたい。だからゼロの年があっても、それは仕方がないでしょう。絶対、数を追わないようにしています」

 

ユーゴーでは、働き方についての心と行動、お客様とは?を定義したクレドが書かれた「サンキューカード」を全社員が携帯し、
仕事上の道しるべとして活用している(写真左)。
経営方針発表会のあとは社内運動会「ユゴリンピック」を開催し、社内の親睦を深める(写真右)。

あえて任せて育みたい、全社を挙げて取り組む姿勢

ここまでの内容からもわかる通り、同社の新卒採用活動は2006年の開始以来、沼崎社長が徹底的にコミットし、常に先頭に立ってリードしてきた。説明会にもすべて参加し、自身の言葉で想いを伝えてきたという。しかし、それを5年前にきっぱりやめた。幹部社員の成長を促すためで、現在は執行役員や部長をフロントに立たせるようにしているのだ。
「経営陣と採用担当者が、人材獲得の重要性を、共通認識として持たなければなりません。会社を成長させる上で、採用活動はもっとも注力すべき業務です。そしてそれを、全社に広げていかなくてはならない。当社では採用活動に社を挙げて取り組むというルールがあり、特に新卒1年目から5年目くらいまでは、なんらかの形で全員関わります。そのくらい本気の雰囲気と文化をつくらないと、うまくいかないのです」

こうして会社の理念や文化を学生側と徹底的にすり合わせていくことで、入社後のギャップ、ミスマッチは大幅に減った。新入社員の3年以内離職率は一般的に30%とされる中、同社はその半分ほどだという。
「もちろん母数が少ないということもありますが、ミスマッチが起きないように徹底した採用活動を行っている効果が現れているのでしょう。ギャップがゼロにはならなくても、小さいほどいい。社内みんなで、そこを埋める努力をしています」

 

沼崎社長は、若手社員の管理職育成だけでなく、起業や独立も積極的に支援している。
「私の一番の楽しみは、ユーゴーから1人でも多くの社長を生むこと。経営が一番楽しいと思っているからこそ、たくさんの人に経験してもらいたい。マネジメントのおもしろさを感じたら、分社化でもM&Aでも、出資を受けての異業種でもいいですから、起業をしてほしいのです」

そのための受け皿として17年、持ち株会社の力こぶホールディングスを設立。さらに21年には、福島県福島市と郡山市の2エリアを担当するユーゴー東北を立ち上げ、東北出身の執行役員を社長に抜擢した。
また、16年に、後継者がおらず事業承継に困っていた同業のタマサービス(東京都青梅市)をM&Aでグループ化し、ユーゴーの執行役員がトップに立った。これで同社から、2人の社長が生まれたことになる。他にも、若手社員の独立を支援し、今では個人事業主として古着屋を経営している人もいるそうだ。まさに、沼崎社長の描くビジョンが着実に形になってきている。

 

着なくなった洋服を次につなぐ「オサガリ専科」(写真左下)や、多様化するライフスタイルに
対応した「24時間お渡しロッカー」(写真右下)など、楽しく便利な新しい取り組み・工夫を欠かさない。

 

さまざまな失敗と成功を繰り返しながら、大きく業績を伸ばしたユーゴーの売上高は、現在単体で約31億円、グループでは約45億円にのぼる。コロナ禍で控えていた新規出店も来年以降は再開する方針だ。
「新卒採用をすれば、任せる店舗が必要になりますから、自然と拡大していきます。今後も積極的に出店していきたいですね」

自社にマッチする人材を採用し、店舗を任せて育成する。その好循環で、同社は今後もさらなる成長を描いていくに違いない。

 

機関誌そだとう213号記事から転載

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