投資育成60周年に寄せて

最先端で躍進する、自律と協調の力
株式会社エヌエフホールディングス 代表取締役会長 高橋常夫 氏

新時代をつくる、オピニオンリーダーに!
株式会社パイオラックス 代表取締役社長 島津幸彦 氏

グループ体制を整え、さらなる成長を狙う……
最先端で躍進する、自律と協調の力
株式会社エヌエフホールディングス

精密計測技術は、日本のお家芸ともいえる領域だ。なかでもエヌエフホールディングスは、創業以来「ユニーク&オリジナル」をモットーに磨き上げてきた精緻な技術力が、国内外で高く評価されている。
そもそも社名にある「エヌエフ」の由来は、電子回路の安定性と高性能を実現する増幅技術「ネガティブ・フィードバック」にある。同社はこのテクノロジーをコアとして、幅広い分野に事業を展開してきた。

量子コンピュータ研究向け低雑音信号処理システム

例えば、エヌエフグループが提供する微小信号測定器は、ノイズに埋もれてしまうほどわずかな信号でも、正確に増幅してノイズを除去できる装置だ。その性能は、量子コンピュータ向けの信号処理という最先端分野にも活用されている。

また、独自のアナログ回路設計技術や実装技術を活かし、人工衛星やロケットにも同社の電子部品が搭載されているという。小惑星探査で世界を驚かせた「はやぶさ」と「はやぶさ2」にも採用された。
2020年10月には持株会社制に移行し、傘下に8つの事業会社を持つグループ体制を整えている。分野別で成長を図りながら、エヌエフグループ各社が自律して事業間の連携を深めていく狙いだ。

総合力を高めて、新たな価値を創出する

同社グループは、主に4つの領域で事業を展開している。1つは計測制御デバイス関連事業で、研究開発や生産で使われる高精度の計測制御機器・ソリューションを提供。前述の微小信号測定器もこの分野だ。
2つ目の電源パワー制御関連事業では、電子機器・電子部品の評価・試験用電源機器や電源パワー制御関連機器を手がけている。水素製造装置や次世代電力網の実証実験システムなど、最先端分野を支える極めて重要な技術だ。3つ目は環境エネルギー関連事業。家庭用蓄電システムなどを開発している。AIを取り入れた充放電最適化などの先進機能が特徴だ。そして4つ目は、グループ製品の校正・修理事業である。

エヌエフグループは研究開発型企業集団として、従業員の大半を設計・開発、技術営業などの専門人材が占めているのも特徴だ。「人々に共感を持たれる新しい価値を創造し提供する」と理念に掲げる同社は、ライフサイエンスという新たな分野にも進出した。今後も研究開発力を強化し、グループの総合力を高めながら、さらなる成長を描くだろう。

 

代表取締役会長 高橋常夫 氏

株式会社エヌエフホールディングス
主な事業内容:
計測制御デバイス関連事業、電源パワー制御関連事業、環境エネルギー関連事業、校正・修理事業
本社所在地:
神奈川県横浜市
創業:
1959年
従業員数:
352人

 

[Message]
創立60周年、誠におめでとうございます。
当社創業初期にご出資いただいてから、約半世紀にわたる多くのバックアップに、大変感謝しております。おかげさまで上場後、計測・制御・電力機器を中心に事業展開し、宇宙航空分野では自社製品が「はやぶさ」などに搭載されるまでになりました。また、近年では量子コンピュータ開発分野でも、当社の低雑音増幅技術が高い評価をいただいており、日本の科学技術や産業発展に多少なりとも貢献できるようになったと感じています。これまでのご支援に恥じないように、社会の期待に応える企業であり続けるべく、取り組んでいく所存です。

開発創造型企業は、トップシェアの先へ征く……
新時代をつくる、オピニオンリーダーに!
株式会社パイオラックス

自動車関連では「より小さく、より軽く、より強い」製品で、
日本国内の業界トップシェアを誇る

自動車分野における精密ばねや工業用ファスナーで、トップクラスの国内シェアを誇るパイオラックスは、「弾性を創造するパイオニア」としてばねの機能を突き詰めてきた。

1台の自動車に使われている同社の製品は、実に1500種類以上。トランスミッションだけでも約50のばねやスナップリングなどがあり、その他にもあらゆる部分で非常に多くの部品を供給している。ダッシュボードのグローブボックスをゆっくりと開閉するエアダンパーは世界一、ボックスの掛けがね用ラッチは国内一のシェアを誇るトップ企業だ。

また、売上の95%は自動車関連だが、1999年には本格的に医療分野に参入した。形状記憶合金を活用した血管内留置カテーテルや、血管や気管・消化管などを押し広げるステントなどにも、コアテクノロジーが発揮されている。

世界を舞台に成長を描く、パイオラックスブランド

自動車業界が100年に1度の大変革期といわれる中、パイオラックスはEV革命やCASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)にも柔軟に対応してきた。その背景には、常に時代を読み、「変化に強い会社」であり続けようとする、同社の強い意志を感じる。

2022年4月に「e商品開発部」を設置し、バッテリーや先進運転支援システム関連の対応製品だけで、2030年には売上100億円を目指す。加えて、既存分野にとらわれず新規事業を創出する「MIRAI事業部」も立ち上げた。これは若手人材を中心に、海外子会社を含めて所属・性別・国籍を問わずにメンバーを公募した一大プロジェクトだ。海外進出にも意欲的で、アメリカ、イギリス、韓国、中国、タイなどに11社の現地法人を持っており、海外の自動車メーカーとも活発に取引を行っている。ドイツのデュッセルドルフに開設した駐在員事務所は、脱炭素や電動化で先行する同国のノウハウやルールなどを開発に活かすことが任務だという。

2023年度には栃木県真岡市でグローバルマザー工場の第1期工事が完了し、世界へパイオラックスブランドを発信する次世代型工場として稼働を始める予定だ。AIやIoTなどの最新技術を駆使した自動化ラインを完備し、2030年には生産性200%アップを実現する狙いである。太陽光パネルの設置など環境面にも配慮した工場で、まさにここから、パイオラックスがつくる新時代が幕を開けるのだ。

 

代表取締役社長 島津幸彦 氏

株式会社パイオラックス
主な事業内容:
コイルばね、薄板ばね、ワイヤフォーム、金属および合成樹脂ファスナー、ユニット機構部品の製造および販売
本社所在地:
神奈川県横浜市
創業:
1939年
従業員数:
592人

 

[Message]
この度は創立60周年を迎えられますこと、誠におめでとうございます。
当社は1973年に投資育成さんに出資していただきましたが、当時は過少資本であり、大変ありがたいお話でした。創業からちょうど40周年を迎え、樹脂ファスナー分野へ本格的に進出した時期です。
その後、2004年に東証一部上場を果たし、自動車産業の海外展開にあわせて事業を拡大し、現在では、医療機器事業や生活関連分野にも取り組んでいます。当社は来年、創業90周年です。今日に至るまでの安定的なご出資と経営基盤強化や会社の成長に資する多大なご支援に、心より感謝申し上げます。

 

機関誌そだとう213号記事から転載

経営に関するお役立ち資料を
お届けいたします

© Tokyo Small and Medium Business Investment & Consultation Co.,Ltd. All Rights Reserved.