中小企業白書から読み解く経営のヒント

事業継続計画(BCP)の策定と事業承継の早めの検討を

備えあれば憂いなし

2020年版中小企業白書・小規模企業白書が閣議決定を経て刊行されました。今回の白書では、中小企業・小規模事業者が生み出す「価値」に着目し、経済的な付加価値の増大や地域の安定・雇用維持に資する取組を調査・分析しています。本稿では白書のポイントを全3回に分けて解説します。

中小企業のBCP策定状況

BCPの策定状況

2019年度は、台風等の自然災害や、新型コロナウイルス感染症など、中小企業に大きな影響を与える事象が相次いで発生した1年でした。企業の事業活動に影響を及ぼすリスクは自然災害や感染症のまん延、サプライチェーンの途絶、サイバー攻撃など多岐にわたっています。こうした不測の事態が生じた際の影響を可能な限り小さくするためには、事前の備えが重要となります。

「事業継続計画(BCP※1)」とは不測の事態が発生しても、重要な事業・業務を中断させない、または中断しても可能な限り短期間で復旧させるための方針、体制及び手順などを示した「行動計画」です。図1 は、BCPの策定状況を確認したものですが、大企業に比べて、中小企業のBCP策定は進んでいないことが分かります。

※1 Business Continuity Plan

BCPの策定で様々な効果

中小企業のBCPを策定したことによる効果(上位5項目)

(注)事業継続計画(BCP)を「策定している」を回答した
企業に対して聞いたもの。複数回答。

では、BCPを策定している中小企業はどのような効果を感じているのでしょうか。図2 によれば、BCP策定の直接的な効果である「従業員のリスクに対する意識の向上」のほかに、「事業の優先順位が明確になった」「業務の改善・効率化につながった」と回答する企業が一定割合存在しています。このことから単にリスクへの対応力を高めるだけでなく、BCP策定のプロセスを通じて事業を見直すきっかけとなっていることも見て取れます。また、「取引先からの信頼が高まった」と答える企業もあり、BCPの策定は持続的な取引関係の構築にも資するといえるでしょう。

生産性向上と事業継続力強化の両方の観点から、BCPの策定やテレワークの導入検討など中小企業自身ができる取組を考えることが今後も重要となります。中小企業強靱化法では、事業継続力強化計画の認定を受けた事業者に対し、税制措置や金融支援、さらには補助金採択に当たっての優遇措置などが講じられています。私見ですが、新型コロナウイルス感染症の拡大を1つの契機に、今後に向けてBCPの策定をご検討されてみてはいかがでしょうか。

経営者の高齢化と後継者選定

社 長年齢別に見た、後継者決定状況

ここからは事業承継の動向を確認していきます。全国の社長の年齢分布の推移によれば、「70代以上」の占める割合が年々増加。直近では40代以下の構成比が減少傾向にあり、経営者の高齢化が進んでいます。

他方で図3 では社長年齢別に後継者の有無を確認していますが、60代では約半数、70代では約4割、80代では約3割が後継者不在。経営者年齢の高い企業においても、後継者不在の企業が多いことが分かります。

親族外承継も有力な選択肢に早めの事業承継の検討を

事 業を承継した社長の先代経営者との関係(%)

円滑な事業承継が喫緊の課題となる中、図4 は事業承継した社長と先代経営者との関係を示しています。これを見ると、「同族承継」の割合が最も高いものの、全体に占める割合は年々減少。他方で「内部昇格」による事業承継は増加傾向にあり、「同族承継」と同程度の割合となっています。「外部招聘」の割合も増加傾向にあるなど、親族外承継が事業承継の有力な選択肢となっていることが分かります。

事業承継の意向別の割合

また、図5 は中小企業における事業承継の意向を示しています。これを見ると、「今はまだ事業承継について考えていない」と回答する企業の割合が最も多く、特に経営者が60代以上の企業では、約4社に1社が事業承継をまだ本格的に検討するに至っていないことも明らかとなっています。

過去の白書では、後継者選定から後継者の了承を得るまで「3年超」かかった割合が約4割※2に達し、後継者決定から実際に引き継ぐまで、約半数が1年以上かけていること※3が示されています。事業承継は長い期間を要する取組であり、早めに検討を重ねることが重要なのは言うまでもありません。


※2 2017年版「中小企業白書」第2部第2章第1節
※3 2019年版「中小企業白書」第2部第1章第2節

【事例紹介】 株式会社イシイ設備工業(群馬県)
中小企業の連合体として、付加価値増大を目指す

▶ 公共施設や福祉施設の空調設備などの設計・施工を行う企業。
▶ 東京への進出をきっかけに、各地域で実績を有する同業他社の4社を買収。
▶ 同4社は買収後も地域密着型の仕事を継続。また、企業連合として大型工事を受注できるようになり、受注案件の幅も広がった。

2020年版中小企業白書では、投資育成3社の投資先企業が12社掲載されました。

最後に

人口減少に直面するわが国経済のさらなる成長のために、労働生産性の高い中小企業を増やしていくことが欠かせません。中小企業がこれまで培ってきた技術や人材を次世代に引き継いでいくことは、今後も益々重要となると言えるのではないでしょうか。

中小企業庁 事業環境部
調査室 調査係長
鈴木 崚
(2020年4月より当社から出向中)

2020年版「中小企業白書・小規模企業白書」解説動画

中小企業庁HP

2020年版「中小企業白書・小規模企業白書」では、今回新たな試みとして、中小企業庁HP内にて解説動画(約1時間)を掲載しています。ご関心のある経営者の皆様にはぜひご覧いただければ幸いです。

機関紙そだとう204号記事から転載

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