経営の新流儀

若手主体でカラを破り「青いカニかま」を開発!

一正蒲鉾株式会社
商品開発プロジェクトのメンバー

新しいカニかまのサンプルを試食しながら意見を交換・共有する商品開発プロジェクトのメンバー。

「守りよりも攻めが得意な会社」と、一正蒲鉾の野崎正博社長は自社を表現する。同社は2019年に「青いカニかま」で消費者の度肝を抜いた、水産練製品を主力とする東証一部上場の大手食品メーカーだ。市場に先駆けて“カニ風味かまぼこ”のカテゴリーを確立し、16年にはうなぎの蒲焼風「うな次郎」の開発に成功するなど、業界に新風を吹き込んでいる。

「サラダスティック」新シリーズ

プロジェクトメンバーが開発
提案した「サラダスティック」
新シリーズ。
上から、「瀬戸内レモン風味」
「ソーダ風味」。一番下は通常版。

新潟県新潟市にある同社は1965年創業、看板商品の一つとなっているのが、サラダのトッピングや弁当のおかず、酒のおつまみなどでお馴染みの“カニかま”だ。79年発売の「オホーツク」は、その先駆けとなる代表作であり、2008年から発売する「サラダスティック」は、カニ風味かまぼこの売上でトップを誇る。こうした同社の革新性は、どこから来るのだろうか。実は数年前、サラダスティックの商品戦略が大きな課題となっていた。

「カニかまは、ロングセラー商品のため、主客層が高齢化していました。当社の主力商品だけに、新たな層を取り込み、ブランドを強化しなければ、という危機感がありました」

と当時を振り返るのは、入社7年目の商品開発課リーダー、石山隆一さんだ。

17年8月、社内で「商品開発プロジェクト」がスタートし、石山さんを中心に商品開発課のベテラン社員、新入社員の3人からなる「カニかまチーム」が編成され、「新しいサラダスティックの開発」というミッションを帯びて日夜、試作への試行錯誤を繰り返していた。

マーケティング課リーダー・小林朋さんと、商品開発課リーダー・石山隆一さん

マーケティング課リーダー・小林朋さんと、
商品開発課リーダー・石山隆一さん。

同時期に社内で発足した、「コーポレート・ブランディング・プロジェクトチーム(以下、CBPJ)」メンバーの一人、入社11年目のマーケティング課リーダー、小林朋さんも、こう説明する。

「練り製品は色彩や用途から、地味なイメージを持たれていました。それを刷新するため、ロゴやパッケージのリニューアル、SNSやWebを活用した若者向けのPRを展開しよう、といった議論が交わされていました」

CBPJは、同社の市場での認知度をアップさせるのがミッションで、経営企画や総務、営業、マーケティング、商品開発、生産といった社内の各部門から、20~30代を中心とした社員15人(半数が女性)を集め、先の石山さんも所属していた。ターゲットはトレンドを牽引する若年層。

“SNS映え”を意識したレシピの一例

“SNS映え”を意識したレシピの一例。着色は植物由来のクチナシ色素を使用している。

若手社員が多いだけに、既成概念にとらわれない、斬新なアイデアが次々に飛び出した。そうしたなか、「彩りを工夫した“キャラ弁”* をスマートフォンで撮影し、SNSに投稿するのが、若い主婦の間で流行っている。カニかまも弁当作りによく使われるのだから、“インスタ映え”を意識して、配色がしやすいように、もっと明るい色の商品を増やすべきではないか、といった意見が出されたのです」(小林さん)。

*弁当の中身をマンガやアニメなどのキャラクター風にアレンジして盛り付けたもの。

「新しいカニかまの開発では、味にこだわったりして、従来の発想から抜け出せずに悩んでいたのですが、目から鱗でした。それで、開発の中心テーマを“色”にしました」と石山さんも明かす。

従来のやり方を疑い顧客を驚かせる

若手社員を中心としたプロジェクトメンバー

若手社員を中心としたプロジェクトメンバーから、業界
やこれまでの常識といった既成概念にとらわれない斬
新なアイデアが次々と飛び出す。

こうして黄色いレモン風味のカニかまが試作され、商品開発部長の了解も得た後、商品化の最後の関門として、経営層で構成される「経営会議」でのプレゼンが待っていた。

「どぎつい色に驚いて、固定客が離れてしまうのではないか」

会議に臨んだ石山さんは案の定、役員から猛反対された。しかし、石山さんは、キャラ弁のデータなどを提示し、熱弁をふるう。

「新しい若い客層を開拓するには、新しい色でなければダメなんです!」

その熱意が役員を動かしたのか、その場で商品化が決まった。経営会議において商品発売が1回で承認されるのは、極めて異例だという。

このレモン風味は、発売前のサンプルが取引先からも大好評で、売上も予想を大きく上回った。そのため、続く青色のソーダ風味の提案も、「食欲減退色だが、大丈夫か」と指摘を受けたものの、1回で承認されたそうだ。

商品とコーポレート・ブランディング・プロジェクトチームの皆さん

(左)同社ではSDGs目標に貢献すべく、魚のすり身に含まれる豊富なタンパク質をもっと消費者に知ってもらうことを狙い、水産練製品を「魚肉たんぱく製品」と総称している。
(左上)カニかまというジャンルの先駆けとなった1979年発売の「オホーツク」と、(左下)うなぎの蒲焼風で話題を呼んだ「うなる美味しさうな次郎」。
(右)コーポレート・ブランディング・プロジェクトチームの皆さん。同社の認知度をアップさせるのがミッション。

「新色のカニかまシリーズは、社内外から大きな反響があって、手ごたえを感じました。みんながアッと驚いて、ワクワクするような新商品を、これからも生み出したい」と石山さんは抱負を語る。

18年3月に、第1弾となる黄色の「瀬戸内レモン風味」が発売されたのを皮切りに、サラダスティックシリーズに、カラフルな新商品が相次いでお目見えした。同年秋冬向けにピンク色の「辛子明太子風味」、19年8月に1カ月限定で青色の「ソーダ風味」、同年9月にオレンジ色の「みかん風味」が売り出された。

カニかまの色といえば、“カニの肉”を想起させる赤と白の組み合わせが一般的だが、サラダスティックの新商品は、そんな従来のイメージを塗り替えた。中でも、「青いカニかま」は、発売されるや否やインターネット上で話題をさらい、マスメディアの取材も殺到、全国に一躍その名が知れ渡った。

「シーズンに合わせて、例えば、初夏なら黄色のレモン、盛夏なら青いソーダといったように、爽やかな色合いとテイストにしました。商品名の通り、サラダに合った味わいもポイントですが、とにかく、こだわったのは“色”です。カニかまのイメージを変えるには、見た目でインパクトを与えるのが、最も大事だと考えたからです」と、石山さんは言い切る。

「青いカニかまがまさにそうですが、今までにない、新しいコンセプトというのが決め手でしたね」

野崎社長は一連の経営会議を思い返し、商品化を認めた理由について、こう打ち明ける。野崎社長が、経営でいつも心がけているのは、「新しいことに挑戦し続ける」ことだという。CBPJの狙い通りに、青いカニかまの発売後、「外部のお取引先などから、『御社はおもしろい会社ですね』『チャレンジ精神の旺盛な会社なんですね』と、言っていただけるようになりました」と野崎社長は微笑む。

アイデアと行動力で保守的な業界の常識に挑戦

野崎正博代表取締役社長

野崎正博代表取締役社長。
グローバルな視野で環境の変化をとら
え、嗜好が多様化する消費者から愛さ
れる製品作りに勇気と誠意をもって取
り組むことで、総合食品メーカーへの
道を邁進している。

人間の味覚の嗜好は保守的で、それゆえ、食品業界も既存のブランドに依存しがちだといわれる。水産練製品のような、伝統食品の分野であれば、なおさらだ。

「だからこそ、自発的にカラを破ってみる必要があるのです。食品市場は今後、人口減で縮小する一方。何も手を打たなければ、先は見えています」と、野崎社長は力説する。

新しいことに取り組むには、アイデアと行動力が必要だ。同社では、例えば、商品開発の担当者には、「“食レポ”を条件に、全国の食べ歩きを認めています。希望すれば、海外研修にも積極的に参加させ、異業種交流や芸術鑑賞も勧めています」(野崎社長)。さまざまな刺激を受ければ、商品開発につながる発想力も養われるからだ。その一方で、「ITの導入などによって業務を効率化し、社員にはその分、アイデアを練る時間を増やしてもらいます」(同)。

また、「一正の引き出し」と呼ばれる「課題案件一覧表」に、思いついたアイデアや、「自身のキャリアアップ」「部下の育成」といった各自の目標など、さまざまなテーマを書き込ませている。そして、書き留めたアイデアの提案や実現、目標の達成度などを人事考課に結びつけることで、社員に行動を促している。

さらに、前出のCBPJを若手社員中心の編成にしたり、経営会議で若手社員にプレゼンさせたりしているのも野崎社長の考えで、こう語る

「若手に活躍の場を与えるのが、経営者の責任。若い人には、失敗を恐れずに行動してもらいたい。失敗でも、それを検証して成長につながるのなら、大歓迎です。そうした社風を根づかせたい」

正蒲鉾株式会社
主な事業内容:
水産練製品の製造販売、まいたけの生産販売
所在地:
新潟県新潟市
社長:
野崎正博
従業員数:
970名

機関紙そだとう203号記事から転載

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