SBIC東京中小企業投資育成株式会社

種類株式を使った事業承継で後継者に安定した経営権を確保するには?

事業承継で重要なのは、経営権を支える根幹である株式を、後継者にスムーズに引き継ぐことです。
しかし、元々株式が多数の株主に分散していたり、後継者以外の親族に対する財産分与が必要だったりした結果、後継者に十分な株式数を渡せない状況も出てくるでしょう。
そんなときに有効なのが、株式の権利内容に特別な条件をつけた「種類株式」をうまく使うことです。
ここでは、種類株式とは何かを中心に、持株数が少ない後継者が安定した経営権を確保する方法をご紹介します。

経営権のカギを握る議決権とは?

安定した経営権の継承を図る上で、「議決権」についての理解を避けては通れません。
議決権とは、株式会社における最上位の意思決定機関・株主総会で、提案された議案に賛否を表明し、会社の経営方針や重要な決定に対する決議に参加できる権利のことです。

株主総会における議決権は「1株につき1議決権」が原則であり、決議は多数決で決まります。そのため、経営者が自身の思うとおりに経営を行いたければ、1人で承認決議を成立させられるだけの議決権を持っている必要があります。

議決権比率と、その比率があれば確実に成立可能な主な決議の内容をまとめると、次のようになります。

■議決権の保有比率と成立可能な決議の種類

議決権の保有比率 左記の議決権を保有していれば成立可能な決議の種類 主な決議内容
総議決権の2分の1超を保有 普通決議(会社法309条1項) 取締役・監査役の選任、役員報酬の決定、剰余金の配当、剰余金の額の減少、自己株式の取得(株主との合意による取得を除く)、準備金額の増加・減少など
総議決権の3分の2以上を保有 特別決議(会社法309条2項) 譲渡制限株式の買い取り、特定株主からの自己株式取得、譲渡制限株式の相続人などへの株式売渡請求、株式の併合、募集株式の募集事項の決定、資本金の額の減少、定款の変更、解散、事業譲渡の承認など
特別決議(会社法309条2項) 譲渡制限株式の買い取り、特定株主からの自己株式取得、譲渡制限株式の相続人などへの株式売渡請求、株式の併合、募集株式の募集事項の決定、資本金の額の減少、定款の変更、解散、事業譲渡の承認など
総議決権の4分の3以上を保有 特殊決議(会社法309条4項) 株式譲渡制限会社において、配当受領権、残余財産分配権、議決権につき、株主ごとに異なる取り扱いをする旨の定款変更

議決権の保有比率が下がると、経営者がみずからの意思のみで決議できる範囲が狭まってしまいます。
経営権を安定させるためには、できれば1人で特別決議が可能な総議決権の3分の2以上、少なくとも普通決議が可能な、総議決権の2分の1超、つまり過半数の議決権は持っておきたいところです。
スムーズに事業を承継するためには、後継者にも同じように、できれば総議決権の3分の2以上、少なくとも総議決権の過半数を渡す必要があるわけです。

後継者に多くの議決権を渡す方法として種類株式を活用する

後継者に多くの議決権を渡す方法として、単純に多くの株式を引き継がせることが考えられます。ほかにも、「種類株式」を利用する方法があります。

経営権の強化に使える議決権制限株式と拒否権付株式

さまざまな種類株式の中で、持ち株数が少ない後継者の経営権強化に役立つのが、「議決権制限株式」と「拒否権付株式」の2つです。

・議決権制限株式
議決権制限株式は、名前のとおり議決権を制限する株式で、議決権制限株式の中でも一切の事項について議決権を行使できない株式のことを「無議決権株式」といいます。
利用例の多くは、配当優先株式との組み合わせで「配当優先無議決権株式」として使われます。配当優先無議決権株式を持つ株主は、ほかの株主より優先的に配当を受けられる代わりに、株主総会での決議に参加できなくなります。そのため、事業承継後の経営に、関わることのない株主の保有株式を無議決権株式に変更しておけば、後継者の議決権比率を高めることが可能です。

例えば、100株発行している株式を、現経営者が60株、古参幹部が20株、そのほか経営者の親族が20株持っている状態で、現経営者の子A(後継者)とBがいるとします。

このまま相続が発生すると、特別な取り決めをしない限り先代経営者の株式がAとBに30株ずつ分かれ、Aは経営者でありながら十分な議決権を持てない可能性が高くなってしまいます。
しかし、あらかじめBが相続する分や古参幹部、親族の持ち株を配当優先無議決権株式に変更しておけば、Aは持ち株比率にかかわらず、100%の議決権を持つことができるわけです。

議決権制限株式について詳しくは、下記の記事をご覧ください。

経営権を強化するために知っておきたい株式活用法

・拒否権付株式
拒否権付株式は、別名「黄金株」とも呼ばれるもので、株主総会の決議を拒否できるという強い力を持つ株式です。この株式が発行されていると、特定の重要議案について、株主総会決議に加えて拒否権付株式を持つ株主だけが参加できる「種類株主総会」の決議が必要とされます。拒否権付株式を持つ株主が1人なら、当該株主1人の意思で株主総会の決議を拒否することができるわけです。
そのため、後継者にこの株式を持たせておけば、たとえ持株比率は低くても重要事項の決定に強い影響力を及ぼすことができます。なお、経営者自身が持ち、事業承継後も会社の重要決定に影響力を及ぼすという使い方もできます。

拒否権付株式について詳しくは、下記の記事をご覧ください。

「黄金株」と呼ばれる拒否権付株式を使い、後継者をサポートする方法

属人的定めも事業承継に利用可能

種類株式と似て非なるものとして「属人的定め」があります。属人的定めとは、定款に定めることによって株主ごとに異なる権利内容に設定できる取扱いのことです。
株式の扱いは、会社法109条1項にて「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない」とあり、株主平等が原則になっています。
しかし、同条の2項では、この例外が認められており、すべての株式に譲渡制限をつけている非公開会社に限っては、株主ごとに異なる扱いをすることができます。
例えば、同じ普通株式を持つ株主A、B、Cがいたとして、「Aの持つ株式については、1株10議決権とする」と特別な条件を定めることができる、というわけです。

この属人的定めを使い、「後継者の保有する普通株式は1株10議決権を付与する」などと定めることで、後継者の議決権比率を高めることができます。

属人的定めについて詳しくは、下記の記事をご覧ください。

属人的定めとは?より柔軟な株主対策を可能とする方法

種類株式をうまく利用してスムーズな事業承継を実現しよう

経営権の安定化に必要不可欠な後継者の議決権確保は、現経営者の持つ株式をそのまま譲り渡すだけでなく、種類株式や属人的定めをうまく使うことでも確保できます。
種類株式はさまざまあり、中でも議決権制限株式や拒否権付株式が事業承継に利用することができます。これらの株式を発行するためには、経営者一人の決定ではできませんので、経営陣や親族、そして後継者との話し合いが必要です。専門的な知識が必要な場合は、第三者の手を借りることも検討しましょう。
東京中小企業投資育成株式会社では、種類株式の活用法を含め、事業承継に関するさまざまなサポートを行っております。事業承継に関するお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。

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