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株式の譲渡承認請求とは?会社がとるべき対応を解説

中小企業の株式は、他人に自由に売ることができない「譲渡制限株式」とするのが一般的ですが、これで100%譲渡を防げるわけではありません。
譲渡を希望する株主から「譲渡承認請求」が出されることがありますし、承認しなかった場合、会社に対して株式買取請求がなされることがあるからです。
ここでは、譲渡承認請求が出された場合に会社がとるべき対応と、経営への影響について解説します。

譲渡承認請求とは?

譲渡制限株式は、譲渡するのに株主総会や取締役会の承認が必要な株式で、株主が自由に譲渡することはできません。そこで、株式を譲渡したい株主が、会社に対して譲渡を承認するか否かの決定を請求することができます。それが譲渡承認請求です。

株式は、原則として譲渡が自由(会社法127条)です。しかし、完全に自由な譲渡が行われると、株式が会社にとって好ましくない人物の手に渡り、経営の安定が損なわれるおそれがあります。そのため会社法では、定款で定めることで株式の譲渡を制限することが認められています。

ただし、株式に譲渡制限をつけることは、株主が投下した資本を回収する道を閉ざすことにもなります。
そこで、株主だけに不利益を負わせるわけにはいかないので、譲渡制限株式を持つ株主が、その株式を他人に譲渡したい場合は、会社に対し「譲渡承認請求」が行えます(会社法136条)。そして、もしも会社が承認しなかった場合は、会社または指定買取人による買い取りを請求することができるというルールが定められています。
つまり、株式譲渡の請求を受けた会社は、譲渡を不承認とした場合、会社がその株式を買い取るか、指定買取人を指定しなければならないのです。

譲渡承認請求の方法

株主が譲渡承認請求を行う場合、会社には「譲渡承認請求書」が出されます。
譲渡承認請求書には、会社法138条によって下記の3点が記載されています。会社はこの情報をもとに、承認の可否を決定することになります。

<譲渡承認請求書の内容>
(1)株主が譲り渡そうとする譲渡制限株式の数
(2)譲渡制限株式を譲り受ける者の氏名または名称
(3)会社が承認しない決定をした場合、会社または指定買取人による買取を請求するか否か

譲渡承認請求が出されたら行うこと

会社は譲渡承認請求を受け取ったら、定款に定められた承認機関において、譲渡を承認するか否かの決定を行わなければなりません。定款に定めがない場合は、取締役会設置会社なら取締役会が、取締役会非設置会社なら株主総会が承認機関となります。
決定の結果は、請求のあった日から2週間以内に株主に通知しなければいけません。2週間以内に通知しなかった場合は決議の内容にかかわらず、会社は譲渡を承認したとみなされます(会社法145条1号)。

譲渡を承認する場合

譲受者に問題がなく、譲渡を承認する決議を行った場合は、何も面倒なことはありません。譲渡を実行し、株主名簿の書き換えを行って、以降は譲受者を株主として扱うのみです。

譲渡を承認しない場合

譲受者が会社にとって好ましくない人物で、譲渡の承認を拒否する場合は、対象株式を誰が、どのように買い取るのかを決めて、請求を出してきた株主に通知する必要があります。買い取りの方法としては、「自社で買い取る」「指定買取人を指定する」の2つが基本ですが、指定買取人が一部を買い取り、残りを自社で買い取ることも可能です。
どの方法を選ぶかで、必要となる手続きが多少異なってきます。

・自社で買い取る場合
自社で株式を買い取る場合は、対象株式を買い取る旨と買い取る株式の数について、株主総会の特別決議での決議が必要になります。
この場合の特別決議では、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、その出席した株主の議決権のうち3分の2以上の同意を得ると承認されます。なお、この株主総会において譲渡承認請求をした株主は、議決権を行使することはできません(会社法140条)。

株主総会での決議の後、買取価格を決めて、株式を供託所に保管してもらいます。
買取価格は、原則では会社と当該株主、または指定買取人と当該株主との協議によって決めます。しかし、協議で決まらない場合などは、基準として純資産を発行済み株式数で割った「1株あたりの純資産額」に「買い取る株式数」を掛けた額で決まります(会社法144条)。
買取価格が決まったら、その金額を会社の本店所在地の供託所に供託します。そして、当該供託を行ったことの証明書を取得します。
次に、譲渡承認請求を行った株主に対して、会社自身が買い取る旨を通知すると同時に、供託所で発行された買取価格の証明書を渡します(会社法141条)。

なお、株主への通知は、譲渡の承認を拒否する旨を通知した日から、40日以内に行わなければなりません(会社法145条2号)。40日以内に、通知と供託を証明書の手続きが行わなければ、譲渡を承認したものとみなされてしまいます。

・指定買取人を指定する場合
指定買取人を指定する場合、会社は特別決議でその決定をした時点から10日以内に、当該株主に対してその旨を通知しなければなりません。なお、指定買取人は定款であらかじめ決めておくことができます。
加えて、その通知の日から10日以内に、指定買取人が「自身が指定買取人として指定を受けたこと」と「買い取る対象株式の数」を、当該株主に通知することになっています(会社法142条、145条2号)。

なお、会社が買い取る場合と同様に、通知には供託の証明書を添付する必要があります。
そのため、会社の本店所在地の供託所に買取資金を供託し、証明書を取得しましょう。買取資金は、自社で買い取る場合と同様に、当該株主との協議などで決まらない場合は「1株あたりの純資産額×買い取る株式数」の金額が売買価格となります。

注意したい買取価格の決まり方

会社または指定買取人が買い取る場合、注意したいのは株式の買取価格の問題です。

上記にあるように、買取価格は、原則として会社と当該株主、または指定買取人と当該株主との協議によって決まります。
しかし、協議が成立せず、さらに株主から裁判所への申し立ても行われなかった場合は、「1株あたり純資産額×買い取る株式数」の金額が売買価格となります。

注意したいのは、株主から裁判所へ買取価格の決定について、申し立てがあった場合です。
株主は、会社または指定買取人から通知があった日から20日以内に、裁判所に対して売買価格の決定を申し立てることができます。つまり、裁判所が当該株式の買取価格を決定するのです。
その際、裁判所は会社の資産状態やそのほかすべての事情を考慮して判断しなければならないとされています。そのため、申し立てによる価格決定では、純資産価格なども踏まえた上で行われるため、高額の買取額になる可能性があります。

このように、当事者の協議で売買価格が決まらなかった場合、売買価格が高水準になる可能性があります。自社での買い取りや指定買取人による買い取りを行うか否かを決める際には、売買価格が高水準になりうることまで想定しておく必要があるのです。

譲渡承認請求が会社に与える影響

譲渡承認請求が会社に与える負担は、決して小さくありません。
請求が出されると、会社は限られた時間の中で株主総会や取締役会を招集し、決議を行い…と、待ったなしの対応を迫られます。すみやかに供託する資金も確保しなければなりませんし、価格決定協議がまとまらなければ価格が高水準になる可能性があるなどのリスクもあります。

また、譲渡承認請求にもとづく買い取りは「自己株式の取得」であるため財源規制がかかり、剰余金の分配可能額の範囲でしか行えないことにも注意が必要です。剰余金の状態によっては、そもそも自社株式の買い取りができない場合もありうるのです。なお、買い取りができない場合は、会社法に違反したことになり、会社としての責任を問われる可能性が出てきてしまいます。

譲渡承認請求は起こされないのが一番良い

譲渡承認請求による株式の買い取りは、会社にとって好ましくない人物が株主となることを防ぐことができます。しかし、短期間に矢継ぎ早な対応を求められる上、あらかじめ剰余金の分配可能額を増やしておく、買取資金を用意しておくなどの準備も必要となり、会社への負担も小さくありません。

このような時間のロスや出費を抑えるためには、譲渡承認請求が行われる前に株主と交渉し、合意を得て譲渡してもらうように持っていくのがベストでしょう。
株主との話し合いで譲渡の同意を得られることは決して少なくないので、譲渡承認請求への備えを行うと同時に、まずは株主との交渉も検討してみてはいかがでしょうか。
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