SBIC東京中小企業投資育成株式会社

「黄金株」と呼ばれる拒否権付株式を使い、後継者をサポートする方法

経営権の安定化を図るには、経営者が株式を多く所有して議決権比率を高めるのが王道です。
しかし、たとえ経営者の持ち株比率が低くても、会社の意思決定に影響力を持つ方法があります。それは、通称「黄金株」と呼ばれる拒否権付株式を使う方法です。
ここでは、拒否権付株式とは何か、経営権の安定化にどう役立つのか、導入する際にはどのようなことに気をつければよいのかを、まとめてご紹介します。

拒否権付株式は株主総会の決議を拒否できる権限を持つ

拒否権付株式を活用しようとする株式会社は、まず普通株式に加えて拒否権付株式を発行し、その内容として「◯◯については、株主総会決議だけでなく、拒否権付株式を持つ株主で構成される、種類株主総会の決議も必要である」と定めます。◯◯の部分は、取締役の選解任や吸収合併、事業譲渡など、会社にとっての重大事項とするのが一般的です。
仮に、合併について前述のように定めれば、この会社が合併するには株主総会での決議だけでは足りず、拒否権付株式を持つ株主だけによる種類株主総会での承認決議も必要となります。たとえ全体株主総会で決議されようと、種類株主総会で否決されれば合併を行うことはできません。つまり拒否権付株式の株主は、株主総会の決議を拒否する権限を持っているといえます。
このように、拒否権付株式はその影響力の大きさから、通称「黄金株」と呼ばれているのです。

拒否権付株式の利用が有効な場面

拒否権付株式が役立つケースはいろいろありますが、典型的な例は次のようなものです。

持ち株比率が低い後継者の経営権を安定させる

例えば、100株発行している株式を、現在経営者が50株、経営者の配偶者が10株、経営者の子A(後継者)が5株、経営者の子Bが5株、親族が30株持っているとします。
この状態で相続が発生し、経営者の株が配偶者とA、Bに分かれて相続されてしまうと、後継者であるAは株主総会で自身の意思を通すのに十分な議決権を確保することができません。
このような場合に備えて、相続が発生する前に後継者であるAに拒否権付株式を1株発行しておきます。拒否権付株式があれば、相続後、後継者であるAの持ち株比率が低くても、後継者Aは保有する議決権以上の強い影響力を持つことができるからです。

後継者が未熟な場合の対策にする

後継者に事業承継を行いたいが、未熟なのですべてを任せてしまうのは不安というのはよくあることです。そんな場合は、現在の経営者が拒否権付株式を持つことで、引退後も会社に対して強い影響力を保つことができます。事業承継し、後継者が重要議案で誤った判断をした場合に、拒否権を発動して防ぐのです。
ただし、病気などで先代経営者の判断能力が衰えた場合は、後継者にとってリスクになってしまう可能性もあります。

拒否権付株式発行の手続きと注意点

拒否権付株式を発行するには、すでに発行している普通株の一部を拒否権付株式に変更する方法と、新たに拒否権付株式として発行する方法の2つがあります。

すでに発行している普通株の一部を拒否権付株式に変更する方法

種類株式を発行していない会社が拒否権付株式を発行するには、まず定款を変更して、拒否権付株式とする種類株式の発行可能な数と内容を定める必要があります。
定める内容とは、どんな事項において、どんな条件で拒否権付株式を持つ株主による種類株主総会の決議が必要なのか、ということです。
定款の文句に決まった形式はありませんが、例えば次のような書き方ができます。なお、定款には拒否権付株式とは記載せず、「A種類株式」「甲種類株式」など、種類株式の一種であるように表記することが一般的です。

<定款例>
(発行可能株式総数)
第◯◯条 当会社の発行可能株式総数は100株とし、99株は普通株式、1株はA種類株式とする。
(A種類株式)
第△△条 当会社は、次の各事項を実施する場合には、当会社の株主総会の決議のほか、A種類株式を保有する株主による種類株主総会の決議を経なければならない。

1. 吸収合併または新設合併
2. 事業譲渡
3. 取締役の選解任

なお、定款の変更は株主総会の特別決議事項です。株主総会で議決権を行使できる過半数の株主が出席し、その出席した株主の議決権のうち3分の2以上の賛成を得ると可決されます。
また、定款を変更に加え、全株主からの同意書も必要と解釈されます。
更に、定款変更の効力発生日から2週間以内に、法務局で発行可能種類株式総数と種類株式の内容等の登記申請を行います。

新たに拒否権付株式を発行する方法

まず、普通株式の一部を変更する場合と同様に、株主総会の特別決議で定款変更を行い、拒否権付株式の発行可能株式の総数と、拒否権付株式の権利の内容を定めます。
加えて、以下の事項についても株主総会の特別決議を得ます。

・発行する株式の種類と数(A種類株式1株など)
・拒否権付株式の発行に対して、株主が会社に払い込む金額
・株主が会社に払い込みをする期日
・増加する会社の資本金、資本準備金に関する事項

次に、株主総会の決議を得た上で、上記の4項目を株式の引受人に通知し、拒否権付株式の引き受けについて申込みをしてもらいます。
その後、引受人に拒否権付株式の株式数を通知して、株式の割り当てを行います。引受人は、拒否権付株式を割り当てられた株主として、払込期日までに指定の金額を払います。会社は、払込期日から2週間以内に変更登記を行います。

拒否権付株式を利用する際に気をつけること

うまく使えば非常に強力な武器となり、経営権の安定に役立つ拒否権付株式ですが、1株の影響力が大きすぎるがゆえに、取り扱いには注意が必要です。特に注意したいのは以下のような点です。

詳細な事案に拒否権を与えようとしない

拒否権付株式を発行するために、普通株式の一部を変更する場合は全株主の同意が必要ですし、新たに発行する場合でも定款を変更するための株主総会特別決議が必要です。
さまつな事項まで拒否権の対象にしてしまうと、既存株主の反発を招いて理解が得にくくなり、拒否権付株式の発行に賛同してもらえない場合がありますので留意が必要です。

拒否権付株式でできることは拒否のみ

拒否権付株式を保有する株主は、株主総会で承認決議がなされた事項を拒否することはできますが、自分から議案を提案することはできません。
株主間の対立が深刻化すると、会社にとって大事な議案をすべて拒否されるなどして何も決まらなくなり、経営が行き詰まるおそれがあります。

意図しない相手に渡ると危険

拒否権付株式は、普通株式と同様に相続の対象となります。
後継者以外の手に渡ってしまうと大きなリスクになりますので、経営者が持つ場合は、遺言などで確実に後継者の手に渡るようにしておく必要があります。

強力な権限を持つ拒否権付株式の取り扱いには十分な注意が必要

拒否権付株式は、持ち株比率が低い後継者の経営権を安定させたり、経営者が自身の引退後も会社に影響力を及ぼしたりすることを可能にする、非常に強力な権限を持った株式です。
経営者にとっても後継者にとっても、上手に使えば役立つものですが、リスク回避策が不十分だと、敵対者に拒否権付株式が渡ってしまうなど、思わぬ問題が起こる可能性があります。
拒否権付株式の取り扱いについて不安がある場合や、事業承継を含めて専門家への相談が必要な場合は、東京中小企業投資育成株式会社にご相談ください。

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