SBIC東京中小企業投資育成株式会社

無議決権株式とは?

経営権を強化するために知っておきたい株式活用法

非上場会社にとって、株式の分散は何としても避けたいもの。なぜなら、多くの株式が経営陣以外に渡ってしまうと、会社との関係が薄い株主が増えていき、議決権が分散してしまいます。それにより、経営者の経営権が弱まるだけでなく、スムーズな事業承継の妨げにもなりかねないからです。
そのような事態を防ぐために、会社が行える対策のひとつが、経営陣以外が持つ株式を「無議決権株式」に置き換えることです。
ここでは、無議決権株式の活用方法のほか、活用にあたっての注意点をまとめてご紹介します。

無議決権株式は何の役に立つ?

無議決権株式が役立つのは、経営者や経営陣が、保有する株式の比率より高い議決権比率を確保したい場合です。

例えば、現在の会社が普通株式100株を発行しており、経営者が60株、役員A、Bがそれぞれ15株、経営には関与していない経営者の親族Cが10株持っているとします。この状態では、経営者の議決権比率は60%です。
そこで、親族の10株を無議決権株式に置き換えると、議決権を持つ株式の総数が100から90に減るため、経営者の議決権比率は約67%となります。
無議決権株式への置き換えを通じて、すでに株式を持つ株主の議決権比率を高めることができるわけです。

■無議決権株式の活用による議決権比率の変化

株主 無議決権株式発行前 無議決権株式発行後
持株数 議決権 議決権比率 持株数 議決権 議決権比率
経営者 60株 60 60% 60株 60 67%
役員A 15株 15 15% 15株 15 17%
役員B 15株 15 15% 15株 15 17%
親族C 10株 10 10% 10株
合計 100株 100 100% 100株 90 100%

なお、発行済みの株式の一部を無議決権株式に変更するには、以下の手順をすべてクリアする必要があります。

<発行済みの株式を無議決権株式にする手順>
1. 株主総会の特別決議で定款変更を行う(会社法108条2項)
2. 無議決権株式となる株式を有する株主の同意を得る
3. 株式の内容が変更されない株主全員からも同意を得る

このうち、最もハードルが高いのが株主全員の同意・合意を得ることです。
普通株式から無議決権株式への置き換えは株主の側からみれば損とも取られるため、単純に「普通株式を無議決権株式に置き換えさせてほしい」と依頼しても、応じてくれることはまずありません。
議決権をなくす代わりに、優先的に配当を受けられるようにするなどの交渉をするのが一般的です。

無議決権株式の活用事例

無議決権株式の活用事例としては、次のようなものがあります。

従業員持株会が持つ株式を変更して経営陣の議決権比率を高める

無議決権株式への切り替えは、「普通株式を無議決権株式とする代わりに、優先的に配当を行う」旨を提案しても、株主が難色を示し、交渉が難航する場合が珍しくありません。
その点、従業員持株会は比較的交渉しやすく、合意が得やすいといわれており、従業員持株会が持つ株式を無議決権株式に変更することで、経営陣の議決権比率を高めることができます。

株式の買い戻し提案を拒否する株主との交渉材料にする

会社としては株式を買い戻したいのに、価格が折り合わない、OB株主で会社に強い思い入れがあって、株式を持っていたいなどで、株主が買い戻し提案に応じてくれないケースは少なくありません。
そんなとき、次善の策として無議決権株式への切り替えを提案することで、会社への影響を最小に抑えることができます。価格が折り合わない場合は優先的に配当を受けられるように持ちかける、会社への思い入れが強い場合は、無理に株式を手放さなくても良い方法があるとして交渉を進めましょう。

OB株主の保有株式を無議決権株式とすることで事業承継をスムーズにする

OB株主がたくさんいる会社で事業承継が行われた場合、彼らの議決権比率が高いと、OBに対して強く出られない後継者にとっては脅威の存在となり、経営権が安定しません。
OB株主と対等以上に話ができる現経営者が現役のうちに、OB株主の株を無議決権株式に変更できれば、後継者の経営権安定につながります。

事業承継に無議決権株式を利用して後継者の経営権を安定させる

100株を持つ経営者に、子であるAとBがいて、Aが後継者となる場合、Aに全株式を引き継げれば話は早いのですが、代わりに相続問題が起こりかねません。
このような場合は、経営者が現役のうちに手持ちの半分の50株を無議決権株式にしておきます。
そして、後継者Aには普通株式50株、Bには無議決権株式50株を引き継がせるようにすれば、相続争いを避けつつ、後継者が安定した経営権を確保することができます。

無議決権株式活用にあたっての注意事項

さまざまな場面で使える無議決権株式ですが、その取り扱いには次のような注意事項があります。
特に、無議決権株式といっても、すべての権利がなくなるわけではないことには注意してください。

導入には全株主の同意が必要

普通株式の一部を無議決権株式に置き換えるには、全株主の同意が必要です。そのため、敵対的株主や音信不通の株主がいる場合は、説得や同意の取り付けなどの手間がかかります。

配当金などの財務負担が増す

優先配当と引き換えに無議決権株式への変更を行った場合、会社に財務負担が発生します。

株主はすべての権利を失うわけではない

無議決権株式を持つ株主は、株主総会での決議に参加する権利はありませんが、何もできないわけではありません。
取締役が会社の利益に反する行為を行ったと思われる際は、株主代表訴訟(会社法847条1項など)を起こすことができます。
また、議決権に関係なく「発行済み株式総数の◯%を持つ」という株式数の保有割合さえ満たしていれば、会計帳簿閲覧請求権(会社法433条)や役員の解任請求権(会社法854条)、解散請求権(会社法833条)など、株主としての権利を行使できます。

種類株主総会での議決権は行使できる場合がある

無議決権株式を発行した会社が一定の行為をする場合において無議決権株式を持つ株主に損害を及ぼすような行為をするには、無議決権株式を持つ株主だけで構成される種類株主総会の決議が必要とされています。つまり、種類株主総会での決議がなければ、その行為は効力を生じません(会社法322条1項)。
そのため、無議決権株式を発行した結果として、特定の事項について無議決権株式を持つ株主に、株主総会の決定を拒否する権利を与えてしまう可能性があります。

無議決権株式を効果的に活用して経営権の安定化を図ろう

無議決権株式を利用して事業承継を行うには、株主の同意を得るための粘り強い交渉が不可欠なため、その扱いは簡単とはいえません。
ただし、うまく普通株式との置き換えを進めることができれば、経営者の経営権安定につながる、非常に役立つ方法です。
東京中小企業投資育成株式会社では、無議決権株式の活用方法といったアドバイスを行っていますので、ぜひ一度ご相談ください。

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