SBIC東京中小企業投資育成株式会社

経営者の円満な引退を実現するために、今から始めておきたい下準備

経営者の円満な引退を実現するためには、十分な下準備が必要です。
後継者の育成や承継方法の検討、準備、そして実行には、5~10年の時間がかかるともいわれています。安心して次の世代に事業を引き継ぐために、経営者が元気なうちから準備を進めましょう。
ここでは、今から始められる引退の準備についてまとめました。

■後継者の育成に必要な期間

※参考資料:中小企業基盤整備機構「事業承継実態調査報告書」(2011年3月)

経営者がとれる3つの引退方法

経営者が事業を引退する方法は、事業承継(親族内承継・M&A以外の親族外承継)、廃業、売却(M&A)のいずれかです。このうち、これまでの企業文化や事業方針などを最も維持・継続しやすい方法は、事業承継です。

事業承継

事業承継は、親族や非同族の役員・従業員などの後継者に事業を継いでもらう方法です。
これまでの企業文化や事業方針を最も維持・継続しやすい方法ですが、後継者選びや株式の移動には相応の時間と準備、コストが必要です。

廃業

廃業は、自主的に事業をやめる、つまりみずから会社をなくす方法です。
廃業後の従業員の生活や、経営者が連帯保証人になっている融資等について対策をとる必要があります。

売却(M&A)

売却、すなわちM&Aは、他社に事業を売却する方法です。
事業や雇用を継続したまま売却代金を受け取って引退できるというメリットはありますが、売却後の従業員への待遇や、買い手が見つからない、手続きが煩雑といった問題もあります。

事業承継で引退するために行うべき6つの下準備

経営者は、いつか必ず亡くなるか、もしくは存命中に引退することになります。しかし、経営者が引退するというのは、簡単なことではありません。会社には取引先や顧客、そして働いてくれている従業員など、大勢の人達も関わっています。引退の仕方ひとつで、さまざまな人の人生にも影響を与えかねません。

もしも、事業を次に引き継ぐ事業承継を選択するのであれば、後継者が安定して経営を続けられるように準備をしておく必要があります。具体的な引退時期が決まる前から、準備を進めましょう。
引退するその日のために行っておくべき6つの準備について、順を追ってご説明します。

1. 現在の会社の状況を把握する

まず、現在の会社の状況を整理しておきましょう。
日々の仕事に忙殺されて、会社の状況が整理できていないケースもあるでしょう。しかし、それでは後継者は安心して会社を引き継ぐことができません。後継者の意思を確認するためにも、会社の現状を正しく伝えて理解を得ることが大切です。
整理しておく会社の状況とは、株主構成や経営状況、個人保証の状況などです。

・株主構成
後継者が安定経営を行うために、現在の株主構成と、事業承継後の株主構成について検討する必要があります。まずは、現在の株主構成を正しく把握しましょう。
・経営状況
自社の経営業況が把握しきれていないケースは、少なからず存在します。会社の経営状況がわからないままでは、後継者が会社を継ぐかどうかの意思決定をすることは難しいでしょう。
自社の経営状況や強み・弱みを改めて分析し、問題がある場合は、後継者に引き継ぐ前に改善を目指す必要があります。
・個人保証等の状況
後継者は、現経営者の個人保証も引き継ぐことになります。現在、どのような個人保証があるのかを整理して、解除や引き継ぎが可能かどうか検討しましょう。同時に、経営者の個人的な資産と会社の資産の貸借関係についても整理しておきます。
・財務状況
財務状況を客観的に見ることで、後継者はより正確に会社の状況を知ることができますので、引き継ぎ前に整理しておきましょう。また、財務状況の整理は、銀行からの資金調達にも役立ちます。

2. 後継者の選定と意思確認

後継者選びをするときは、必ず本人の意思確認を行わなければいけません。
社内に子供が勤務している場合でも、後継者として事業を継ぐつもりはないという可能性もあります。スムーズな引き継ぎには、経営者と後継者が共通の意思を持つことが必須です。
親族や従業員、または外部からの招聘にせよ、後継者として適しているか判断するとともに、常に時間を作るようにして、本人とコミュニケーションを図るようにしてください。

3. 後継者の教育

後継者の教育は、主に「経営」「事業」「理念」の3つを軸に行います。

・経営
会社経営に関する教育を行います。セミナーの受講や管理職経験、役員経験などを通して会社の経営を学びます。
・事業
会社の実務に関する教育を行います。現場経験や他社への勤務経験などを通して、事業への理解を深めます。
・理念
会社の経営理念に対する理解を深めます。会社を長く続けていくためには、核となる理念がぶれないことが大切です。

4. 親族と話し合い、理解を得る

後継者が安心して経営を行っていくためには、ほかの親族の理解を得ることが必須です。後継者の兄弟姉妹や現経営者の配偶者、その他、株主となっている親族などと話し合いを行いましょう。
後継者の選定について親族の同意を得るとともに、株主となっている親族が後継者をサポートする安定株主となれるよう布石を打っておくことで、安心して事業を引き継げます。

5. 従業員や取引先と後継者の関係を強くしていく

従業員や取引先に後継者を紹介したり、密接な関わりを持たせたりして、経営者が引退した後も変わらぬ関係を続けられるようにしておきます。

6. 資産の移動方法を検討し、準備を始める

経営者の引退には、株式の移動が伴う場合がほとんどです。
そのため、どのような方法で後継者に株式を渡すのかを考えましょう。株式の移動には、相応のコストがかかります。そこで、SPC方式で株式を買い取るために受け皿会社を設立することもありますし、暦年贈与を利用するのであれば、長期的に贈与を行っていくための準備が必要です。
どのような方法をとるか決めたら、それに向けての情報収集や専門家のアドバイスを受けるなど、具体的な準備を始めましょう。

経営者の引退に関して認識しておきたいこと

中小企業庁によると、後継者を育成して経営者が引退するまでには、5~10年ほどかかるとされています。実際に、事業内容や経営について後継者が十分に学び、株式移動の準備を行ってから事業承継を行うのであれば、そのくらいの時間は必要でしょう。
つまり、70歳で引退を考えるのであれば、60歳頃には後継者を決めて準備を進める必要があるということです。
ここでは、経営者に認識しておいてほしい引退に関するポイントをまとめました。

高齢化する経営者の引退年齢

中小企業の経営者の年齢は、年々高齢化が進んでいます。中小企業庁によると、1995年の経営者の年齢のピークは47歳でしたが、2018年では69歳と、23年間で20歳以上も高齢化が進んでいることがわかります。
そうなると、引退する年齢も自然と上がり、現状ではさらに高齢化が進んでいると考えられます。

■年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布

※参考資料:中小企業庁「中小企業白書」(2019年)

もっとも、この数十年のあいだで、一般の従業員の定年も引き上げられていますから、一概に引き継ぎのタイミングが遅れるようになったとはいえないでしょう。しかし、一般社員の定年が60歳、あるいは65歳であるのに対し、経営者の引退年齢がそれを大幅に超えているというのは事実です。

問題の先延ばしはデメリットしかない

日々の仕事に追われて、なかなか次の世代のことを考えられないという経営者はたくさんいます。しかし、問題を先延ばしにしていても、いつか必ず働けなくなる日がやってきます。まったく準備をしないままその時を迎えてしまっては、せっかく育ててきた事業を継続させることが難しくなってしまう可能性もあるでしょう。

また、引退直前になって慌てて準備を始めようとすると、思わぬトラブルに見舞われることもあります。後継者への事業の引き継ぎには、一般的に株式の移動が伴いますし、親族の説得や根回しといったことも必要でしょう。
これらは、失敗したからといって簡単に後戻りができるものではありません。問題を起こさないために、あらかじめ十分な準備をすることが大切です。

専門家への相談で道筋を確認しよう

後継者選びや事業承継の問題は、気軽に従業員に話せるものではありません。しかし、親族に話したところで、感情的な助言しかもらえなかったり、世間話に終始してしまったりすることもあります。
事業の引き継ぎについては、まず、身近な相手ではなく、経営の引き継ぎに詳しい専門家に相談して、しかるべきアドバイスを受けるのがおすすめです。

中小企業庁が設置している、全国47都道府県の事業引継ぎ相談窓口や事業引継ぎ支援センターのほか、地域の商工会などでも、事業承継に関する相談を受けつけています。また、中小企業の安定経営を支援する中小企業投資育成会社でも、事業承継についてのアドバイスを行っています。
その中でも特に、株式の移動については、東京中小企業投資育成株式会社が出資して安定株主となるといった支援も行っています。気になることがあれば、東京中小企業投資育成株式会社にお問い合わせください。

経営者の引退について後継者が行うべきこと

経営者の引退と事業の引き継ぎは、現経営者だけで行うことではありません。後継者も、当事者意識を持って経営者の引退と事業の引き継ぎについて考え、行動していく必要があります。
最後に、後継者目線での、先代の引退に関して認識しておいてほしいことをまとめました。

みずから学ぶ姿勢を持つ

現経営者から指示されるとおりに動いているだけでは、後継者として独り立ちすることは難しいでしょう。
自分が会社を継ぐのだという自覚を持って、率先して経営を学んだり、会社の状況の把握に努めたりする必要があります。

経営者とたくさん話をする

後継者側から、現経営者に引退時期や引き継ぎの進め方について聞くのは、はばかられると感じる人もいるでしょう。しかし、ずるずると詳しい話ができないまま先延ばしにしてしまうと、突然相続が発生してしまう可能性があります。
後継者として事業を継ぐつもりがあるのであれば、自分から経営者に対して、会社の将来について質問したり、しかるべき準備を促したりする必要があります。また、自分が後継者になるとは限らない場合でも、経営者側から話がない場合、事業をどうするつもりなのか聞いてみることで、事業承継に関する手続きを始めるきっかけを作ることができます。

引き継ぎ後のことを意識する

事業の引き継ぎにあたっては、どのように引き継ぐのかに主眼を置きがちです。しかし、本当に大切なのは、引き継ぎ後に後継者が安定して経営を行える基盤を作ることです。
引き継ぎ後の経営について、リスク要因がある場合は早期に手を打っておきましょう。また、後継者から次の世代への引き継ぎについても、早い段階から意識しておく必要があります。

遺言の状況を確認する

事業の引き継ぎにあたっては、公正証書遺言や遺言代用信託を利用する場合もあります。このような方法を経営者が利用しているかどうか、また、利用する予定があるかどうかを確認しておきましょう。

引退の準備はできるだけ早くから始める

経営者の健康状態に問題がないと、引退ということに思いを巡らす機会はほとんどないと思われます。
しかし、引退の準備を先延ばしにしていると、5~10年かかるといわれる後継者の育成と引退準備を十分に行うことができないばかりか、経営者にもしものことがあった場合にも、事業をスムーズに引き継げなくなるリスクが高くなってしまいます。

「まだしばらく引退はしない」と思っていても、先を見越して準備を始めることが大切です。専門家に相談して計画書を作ることで、いつ、何をすべきかを整理することができます。さまざまな制度やサポート機関を活用して、スムーズな引退と事業承継を目指しましょう。
東京中小企業投資育成株式会社では、経営者の引退に関する知見や事例を数多く持っています。自社の場合に、引退に必要な準備は何かなど、相談してみてはいかがでしょうか。

© Tokyo Small and Medium Business Investment & Consultation Co.,Ltd. All Rights Reserved.