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親族外承継とは?親族以外の人物へ事業承継を行う場合の手法と留意点

親の事業は子供が継いで当たり前という時代は、すでに過去のものとなりつつあります。親族以外の人物が後継ぎとなる親族外承継には、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか。
親族外承継のメリットやデメリットと併せて、承継の進め方や手法についてまとめました。

親族外承継とは?

経営者が世代交代を考えたときの選択肢は、大きく親族と親族以外に分けることができます。
子供や配偶者、兄弟など、親族に事業を継がせることを親族内承継、それ以外の、従業員や外部の人間に事業を継がせる場合や、外部の企業等に売却または合併する場合のM&Aのことを親族外承継と呼びます。

増加している親族外承継

中小企業庁によると、1991年当時、親族以外が事業の後継者となったケースは、わずか11.9%でした。それが、2019年の中小企業白書では44.6%まで増加しています。
かつては、事業を親族が継ぐというのはごく当たり前のことでしたが、近年では、子供の意思を尊重する風潮が強まっていることや、事業の将来性に疑問を感じた子供が後継者になることを拒否するケースがあることなどから、親族外承継の割合が年々増加する傾向にあるようです。

親族外承継の2つのパターン

親族外承継は、「株式と経営の両方を後継者が引き継ぐケース」と、「株式は現経営者がそのまま保有し、経営だけを引き継ぐケース」の2パターンがあります。
後者の場合は、現経営者の相続が発生した場合の対処法を、別途考えておく必要があります。詳細については後述します。

親族外承継のメリット

親族外から後継者を選ぶということは、それだけ選択肢が多いということです。
そのため、親族外承継には、豊富な選択肢から後継者を選べるという点でメリットがあります。具体的なメリットは、下記のとおりです

親族が承継を望まない場合でも事業が継続できる

自分の子供や親族の中に、事業を継ぎたいと考えている人がいるのであれば、その人を後継者にしようと考える経営者が多いでしょう。しかし、子供には職業選択の自由があるため、無理矢理後継者にすることはできません。また、そもそも経営者としての資質に欠けていて、事業を任せられないということもあるでしょう。

このような場合に事業を継続させていくためには、事業をたたむか、親族外から後継者を選ぶ必要があります。経営者にとって、事業をたたむというのは簡単な選択ではありません。これまで業界内で築いてきた地位や知見をすべて捨てることになりますし、従業員の生活基盤を奪うという問題もあります。
親族外から後継者を見つけて事業承継が行えれば、こうした問題はクリアできます。

社内の人間なら、経営理念や実務にも精通している

親族外承継を行う場合、最初に候補になるのは、会社で働いている役員や従業員でしょう。
社内から後継者を選ぶのであれば、改めて教育をしなくても、経営理念や実務については十分精通していますから安心です。
さらに、役員であれば、経営に関する知識もある程度持ち合わせていると考えられますから、後継者教育にかかるコストや時間を大幅に圧縮することも可能です。

現経営者が引退した後、これまでの理念や経営方針、取扱商材などが一変する可能性があるようでは、安心して後を任せることはできません。社内の人間を後継者に選ぶことで、現経営者の方針を保ったまま次世代へとつなぎやすくなります。

社内外の幅広い後継者候補の中から適任者を選択できる

親族外承継の後継者候補は、社内の人間とは限りません。社外から後継者を招聘することも可能です。
もちろん、従業員の理解を得ることは必須ですが、同じ業界で活躍している人材や、経営のプロフェッショナルを後継者として招くことができれば、今後の事業継続にも希望が持てるでしょう。

それぞれの会社の状況や現経営者の考え方によって、理想の後継者像は異なります。親族外承継では、社内外のさまざまな人材が後継者候補となるため、理想に近い後継者を探しやすくなります。

親族外承継のデメリット

親族外承継には、豊富な選択肢から後継者を選べるという観点でのメリットがありますが、反面、デメリットも存在しています。
後継者選びや資金面、実務面で起こりうる問題について、下記にまとめました。

経営知識に富んだ後継者探しが難航することがある

社内の役員や従業員を後継者として選ぶ場合、取扱商材や実務については、十分な知識を身につけている候補者が多数存在しているでしょう。しかし、どれほど実務面で優れた社員であっても、経営者として優秀かどうかはわかりません。
経営に関する知識やスキルを身につけた人材を社内で探そうとすると、簡単にはいかないこともあります。役員など、ある程度経営にも関わっている人を選ぶ場合でも、本当に会社を任せて問題ないかどうか検討する必要があります。

株式も承継する場合は後継者に資金力が必要

経営を引き継ぐだけでなく、会社の株式も次期経営者に譲る場合、後継者は株式を買い取るための資金を準備する必要があります。しかし、会社の従業員がそのような多額の資金を有している可能性は低いでしょう。そのため、できるだけ資金負担が少ない株式の承継方法を考える必要があります。

個人保証の引き継ぎが難しい可能性がある

中小企業では、会社が融資を受ける際に経営者が保証人になるケースがあります。経営者が交代する際には、この個人保証も引き継ぐ必要が出てきます。
後継者が個人保証を引き継いでくれるかどうか、また、金融機関が個人保証の解除や引き継ぎを了承してくれるかどうかについては、事前に確認しておかなければいけません。個人保証が引き継げない場合、融資が打ち切られたり、返済を求められたりする可能性もあります。

次々代承継までの期間が短くなる可能性がある

親族外承継では、親族内承継に比べて、次代を継ぐ後継者の年齢が高齢になりがちです。
例えば、70歳の経営者が60歳の後継者に事業承継した場合、10年前後で次の承継が起こる可能性があるでしょう。あまり頻繁に事業承継が起こると、株式の移動にかかるコストなどが負担になりますし、社内外問わず会社の信用にも関わりますので、安定した経営が実現しにくくなります。

親族外の承継で株式を承継するための3つの方法

親族外承継のメリットやデメリットを理解した上で、後継者として親族外の役員・社員を選択するのであれば、次に株式の承継方法について検討しなければいけません。
親族外の後継者に株式を承継する方法は、大きく3つに分けることができます。どの方法が特に優れているということはありません。状況に合わせて選択しましょう。

■親族外への株式承継の選択肢

役職員が買い取る

後継者となる個人や複数の役職員などが、現経営者から株式を買い取る方法があります。
詳細は後述しますが、買取資金を用意する必要があるため、複数の社員によって少しずつ買い取ったり、受け皿会社を設立して融資を受けたりといった工夫が必要です。

自己株式化

現経営者が保有する株式のすべてを後継者が買い取るのではなく、一部のみを後継者が買い取り、残りを会社が買い取る方法もあります。
このように、会社が買い取って保有する株式を自己株式と呼びます。自己株式化された株式には議決権がありませんから、後継者は取得している株式の割合が低くても、経営権を持つことができます。

■自己株式化による議決権割合の変化例

事業承継税制の活用

事業承継税制を活用すると、所定の要件を満たした場合には、現経営者から後継者に株式を移動させた際にかかる、贈与税や相続税の猶予および免除が受けられます。
ただし、親族以外を後継者として制度を利用する場合、「後継者が単独で株式の過半数を保有する必要がある」「先代経営者に相続が発生したとき、妻や子供などの相続人にかかる相続税率が高くなる可能性がある」「相続税を申告する際、後継者に相続財産の内容が知られてしまう」といった、留意点もあります。
さらに、多額の株式を実質無償で親族外に贈与することになることから、相続人へのフォローも必要です。

役職員へ親族外承継する場合の株式買取方法

役職員へ親族外承継を行う場合の最もシンプルな方法は、役職員が現経営者から株式を買い取ることです。しかし、株式の買い取りには、多額の資金が必要になるという問題があります。とはいうものの、買い取る方法はひとつではありません。
役職員が現経営者から株式を買い取る、主な方法をご紹介します。

個人が株式を買い取る

後継者となる個人が、会社の株式を買い取る方法です。
しかし、現経営者が保有している株式をすべて購入できるだけの資金を、個人が有しているケースはほぼありません。金融機関から後継者が融資を受けて株式を買い取り、その後、役員報酬や株式の配当金を上乗せして融資の返済にあてるといった対策方法も考えられますが、あまり現実的とはいえないでしょう。後継者個人が巨額の負債を抱えることになってしまいますし、融資が実行されるとも限りません。
方法のひとつとしてあるものの、実行できるケースはまれだと考えられます。

複数名の役職員で株式を買い取る

複数人が、共同で現経営者から株式を買い取る方法もあります。
親族も含め、議決権割合30%以上を保有する株主がいない会社の株式を取得した場合、取得した株式の議決権割合が15%未満であれば、配当還元方式による株価を目安に取得することが可能です。配当還元方式で求められる株価は相対的に安価になることが多いため、買い取ることができる可能性がでてくる場合もあるのではないでしょうか。

■複数名の役職員による買取例

この場合、株式が分散することから、経営陣の支配権は弱まりますが、次の事業承継が起こった際に、コストの面で承継がしやすくなるというメリットもあります。

反面、現経営者が受け取れる株式売却代金は安価になってしまいます。そのため、退職慰労金等によって現経営者の利潤を確保するといった対策をとることもあります。

SPC方式

後継者が、SPCと呼ばれる受け皿会社を設立し、SPCが金融機関から融資を受けて現経営者から株式を買い取る方法があります。
株式譲渡後は、後継者がSPCに出資をしていて、SPCは事業会社(事業承継を行う会社)に出資をしているという図式が成り立ちます。この場合、後継者はSPCを通して事業会社の経営権を獲得できます。

SPC方式について、詳しくはこちらの記事でご紹介しています。

親族外承継を行う際に注意すべきポイントと対策

初めに、親族外承継では、「株式と経営を合わせて後継者に引き継ぐ方法」と、「経営のみ後継者に引き継ぐ方法」の2通りがあることにふれました。
ここでは、それぞれの場合で、注意すべきポイントと対策についてまとめました。後継者が困難な状況に陥らないよう、現経営者が認識しておきましょう。

株式を含めた親族外承継を行う場合

役職員を中心に親族外承継を行った場合、従業員の株式保有割合が高くなることから、核となる株主が不在になる可能性が高いでしょう。このため、株主構成の安定化を図る対策が必要になります。

・従業員に報いる
会社にとって、役職員を含めた従業員は、長期的に安定した株主となってくれる可能性が高い存在です。とはいえ、親族が株主になる場合と比較すると、より手厚いフォローをしていく必要性があります。
株主配当を手厚くしたり、従業員と十分なコミュニケーションをとったりすることを心掛けましょう。
・役員持株会、従業員持株会を組成する
持株会を作って、退任・退職時の株式の取り扱いを決めておくことで、将来のトラブルを避けることができます。
株式を保有したまま役員・社員が退任・退職し、行方のわからない株主になってしまったというようなことがないよう、事前に取り決めをしておきましょう。

・長期安定株主を導入する
親族外承継の大きな問題が、核となる株主の不在です。これを解決する手段として、長期安定株主を導入する方法があります。
東京中小企業投資育成株式会社では、経営の自主性を尊重する長期安定株主として、経営の後方支援を行っています。東京中小企業投資育成を長期安定株主とすることで、株主構成を安定化させることができます。

経営のみの親族外承継を行う場合

経営のみの親族外承継を行う場合は、先代経営者が株式を保有し続けることになるため、相続などの際に注意が必要です。具体的には下記のとおりです。

・相続や贈与に関する税負担が生じる
相続が発生した場合、株式は先代経営者の相続人に相続されることになります。このとき、多額の税負担が発生する可能性があるため、事前の準備が必要です。相続人に生前贈与する場合も同様です。
・経営の自由度が制限される可能性がある
後継者が株式を持たないということは、議決権は先代経営者やその親族が保有しているということになります。そのため、後継者は自由な経営ができなくなるリスクがあります。事業を譲られる後継者にとって、これは大きな問題です。
回避する方法としては、先代経営者親族と経営陣の密なコミュニケーションとともに、無議決権株式や属人的株式などの活用が挙げられます。
・先代経営者の相続人等から株式の買い取りを求められる可能性がある
将来的に、会社が先代経営者の相続人等から株式の買取請求をされる可能性があります。
現経営陣は、株主の状況に気を配るとともに、トラブルに発展しないよう、あらかじめ手を打っておく必要があります。

親族外承継では親族への気配りや株主構成に注意が必要

近年、増加傾向にある親族外承継ですが、後継者が事業を引き継いだ後、長期的に安定した経営を行うためには、親族への気配りなど、事前の十分な準備が必須です。親族外承継を行う場合は、後継者が安心して事業を引き継げるよう、負担の少ない承継方法を検討するとともに、承継後の株主構成にも注意を払いましょう。
後継者の次の世代への承継や、現経営者の相続が起こった場合にどのような対処をするのかといった、将来的に起こりうるリスクについても、併せて対策しておく必要があります。
もしも、親族外承継をするとなった場合には、何を承継するのか、どのようなリスクが発生しそうかなどを考慮して、株主構成の見直しを行ったり、具体的な対策に専門家の知識を活用したりしてみましょう。
東京中小企業投資育成株式会社では、親族外承継に関するご相談も随時受けつけていますので、お気軽にお問い合わせください。

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