SBIC東京中小企業投資育成株式会社

中小企業における事業承継の課題と解決の方法とは?

国内全企業数の約99%を占める中小企業は、日本の産業・社会基盤を支える存在として、非常に重要な役割を担っていることは、いまさらいうまでもありません。一方で、後継者を選定することのできない中小企業が多く、事業承継がうまくいかないという問題を抱えています。
事業承継の課題を解決するのは簡単ではありませんが、早期に対応することでその可能性が広がる場合もあります。ここでは、中小企業の現状を知った上で、事業承継の課題と解決方法について考えてみましょう。

中小企業の現状は?

中小企業では、経営者の高齢化が進行しています。経営者の年齢のボリュームゾーンは、1995年頃には47歳前後であったものが徐々にシフトして、2018年には69歳前後になりました。経営者の引退年齢の平均は70歳前後ですので、2020年以降、数十万人の経営者が引退時期を迎えることになります。
こういった現状を考えると、いかに早く後継者を選定するか、いかにスムーズに事業を引き継ぐかということが、大きな課題といえるでしょう。

中小企業における事業承継の現状

経営者の高齢化への対応や、安定した企業経営のためには、事業承継は重要な意味を持ちます。中小企業における事業承継の現状は、どうなっているのかを見てみましょう。

親族外承継の増加

中小企業の事業承継では、これまでは親族内承継が一般的でした。しかし近年、価値観や仕事への取組み方の多様化などにより、親族内承継が減少し、近年では6割以上が親族外承継と言われています

経営者の若返りによる成長意欲や業績の向上

事業承継などによる経営者の若返りは、経営や業績に対して良い影響が現れるといえるでしょう。
経営者の年齢が下がるほど、積極的投資や雇用の維持・拡大などに対する意欲が上がり、成長のためにリスクをとる傾向があるとも言われています。反対に、年齢が上がるとリスクを伴う成長には否定的になることもあるでしょう。

事業承継に対してネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれませんが、自社の経営や業績を活性化させることができる点を忘れてはなりません。

中小企業での事業承継における課題

ここからは、中小企業における事業承継の現状に対して、どのような課題が存在するのか確認していきましょう。

後継者不在による廃業リスク

日本政策金融公庫総合研究所の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、経営者のおよそ半数が廃業を予定しています。その理由として最も多いのは、「そもそも誰かに継いでもらいたいと思っていない」、2番目に多いのは「事業に将来性がない」という結果でした。
それに続くのが「子供がいない」や「子供に継ぐ意思がない」「適当な後継者が見つからない」といった後継者不在の理由です。このように、事業承継においては、後継者不在の問題が年々大きくなっています。

■廃業予定企業の廃業理由

※日本政策金融公庫総合研究所「『中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)』結果」(2020年1月)

業績好調の企業が廃業してしまう

現状では、業績が好調の場合でも、廃業を余儀なくされている企業が多く存在します。また、事業の将来性に不安がなくても、廃業を決断する企業も少なくありません。企業の廃業は経営の問題だけではなく、従業員や技術、ノウハウなど、さまざまな領域に影響が出ると考えられます。

事業承継の準備が進んでいない

経営者の高齢化が進む中、多くの企業で準備が進んでいないのが現状です。経営者の年齢層別に見ると、50歳代ですでに準備をしているケースが33.3%、60歳代で42.9%。70歳代、80歳代でもそれぞれ49.5%、47.7%と、準備をしているケースは半数以下という状況です

■事業承継の準備状況

※中小企業庁「事業承継に関する現状と課題について」(2016年11月)
注:法人(資産1億円以上)の経営者に対して行ったアンケート結果

株式や事業資産の分散

安定した経営をするためには、株主構成が望ましい形で、安定していることが必要です。中小企業では、たとえ現在は理想的な形でも、些細なきっかけで大きく株主構成が変わるリスクがあります。そのきっかけのひとつとなりうるのが事業承継です。

生前贈与などを利用して、経営者がみずからの意思で後継者へ資産を引き継ぐ場合には大きな問題にはなりませんが、相続が発生する場合は注意が必要です。相続が発生すると、経営者が保有していた株式は、経営者や後継者の意思にかかわらず、遺産分割などによって後継者以外の人に分散してしまう可能性があります。
そうなると、後継者以外の親族が経営に介入したり、親族間の対立が経営に影響を与えたりするなど、安定した経営の阻害要因となるおそれが出てきます。また、株式の買い取りを要請してくる場合もあり、資金面での問題が発生するリスクもあります。

事業承継の課題解決方法

中小企業における事業承継の課題はさまざまで、それを解決するための具体的な方法も、その対象や状況によって変わってきます。
ここでは、事業承継の課題をどのように解決していけばいいのか、解決のための方法について紹介します。具体的なアクションを起こす際の参考にしてください。

株式の円滑な承継と分散防止・集約化を意識する

事業承継における株式承継の課題を解決するためには、「経営者の保有株式の円滑な承継」と「株式の分散防止と集約化」という視点を持つ必要があります。
株式の承継には移動コストがかかったり、相続人との調整をしたりといった対応が必要となり、簡単に進まないケースが多くあります。そのため、トラブルを防いで円滑に承継するためには、中長期的な視点を持って取り組む必要があるのです。
この2つの視点を持ちつつ、普段から保有株の承継や株式の分散防止などを考えておかなければなりません。安定的な経営権を確保できるよう、常に意識しておきましょう。

先送りせずできるだけ早く取り組む

事業承継の取組みで最も重要なことは、できるだけ早く着手することです。経営者の高齢化が進むと後継者探しが困難になります。さらに、後継者の調整や育成を含めると、最低でも5~10年は必要だといわれています。
もちろん、親族や従業員、その他のステークホルダーとの調整も必要ですので、適切な承継のためにはそれ以上の期間がかかる可能性があります。

また、経営者が70代、80代であっても、事業承継の準備を進めている企業が半分以下しか存在しないといわれる現実を目の当たりにすると、早期に取り組む重要性を認識せざるをえません。
「何か」があってから始めたのでは、とにかく「引き継ぐことだけ」になってしまいます。円滑な調整をしたり、経営を安定させたりする方向に導いていくことは難しくなるでしょう。時間に追われてしまっては、さまざまなリスクを抱えた事業承継になってしまうおそれがあります。
事業承継の課題は、放置したままで解決することはまずありません。早期に課題として認識し、対処を先送りしないことが重要です。

経営の安定をベースに将来の株主構成を設計する

中小企業において、経営に影響を与えるような株式や事業資産の移動はあまり発生しません。しかし、事業承継はそれが大きく動く場面だといえるでしょう。その結果、経営が安定することもあれば、反対に不安定になってしまうこともあります。

繰り返しますが、事業承継の際に気をつけなければならないことは、保有株などの円滑な承継と個人株主が保有する株式の分散防止・集約化です。
株式の移動などでは、親族やその他関係者との調整が必要な場合が多く、相続税や贈与税、買い取り資金といったコストがかかるため、実行までに時間を要することも少なくありません。また、相続の際には後継者以外の相手に株式などが渡ってしまう場合もあります。
先を見越した上で、将来のあるべき株主構成をイメージし、主体的に手を打っていく必要があります。

事業承継の準備はできるだけ早期に

中小企業における事業承継には、さまざまな課題があります。ここでは、その全体像をご紹介しましたが、事業承継の方法には、企業の状況や後継者の状態などによって多くの選択肢があります。
それらの中から最適な方法を選ぶためには、できるだけ早期に対策する必要があります。
東京中小企業投資育成株式会社では、事業承継についての知見や事例を数多く持っています。事業承継について不明な点がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

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