SBIC東京中小企業投資育成株式会社

何かが起こる前に!

今知っておきたい事業承継の必要性と適切な方法

中小企業では、事業承継について意識する機会はあまり多くないのが現状ではないでしょうか。中小企業は、経営者が株式の大部分を保有していることが多く、喫緊の課題として認識されることはありません。
しかし、企業が存続する限り、いつかは事業承継の時期が訪れます。そのときになってから対応するのでは、手遅れになってしまう可能性も出てくるので、できるだけ早期に対応を検討すべきでしょう。
ここでは、事業承継の必要性やその方法について解説します。

事業承継とは?

上場企業の場合は経営と株式所有が分離しているケースが多く、経営者や経営権の交代と株式の所有権の交代は必ずしも同時に行われるとは限りません。
一方、中小企業の場合は、事業の経営権と株式の所有権を同一の人物や組織が持っている場合が少なくありません。上場企業などの場合の経営権の交代は、純粋な経営上の判断で行われるケースが多い反面、中小企業のような非公開会社の場合は、経営権の交代が株式所有権の交代となるケースが多いため、経営的な判断だけではなく、「誰がこの会社を引き継ぐべきか?」という、資産承継の面から判断されることも多くなります。
中小企業の事業承継とは、単に経営権だけでなく、さまざまな事業資産を含めた事業全体を引き継ぐことを指しているのです。

何を承継するのか

中小企業の事業承継では、次の3つが主な承継の対象となります。

■承継の対象となるもの

経営権の承継 後継者への会社の経営権の承継
資産の承継 株式や事業用資産、運転資金などの承継
資産化できない経営資源や知的資産の承継 経営理念、経営手法などの経営資源、特許、ノウハウなどの知的資産の承継
・経営権の承継
後継者への経営権の承継を行います。後継者を選定して経営権を承継するまでには長い時間がかかるため、できるだけ早い段階で対策を検討したほうがいいでしょう。
・資産の承継
自社株式や各種事業用資産、または運転資金などの承継を行います。後継者への贈与や相続では、多額の税金がかかる場合があるため、その負担をいかに軽減するかという対策が必要です。
・資産化できない経営資源や知的資産の承継
経営理念や経営手法、得意先情報などの資産化できない経営資源のほか、特許やノウハウなどの知的資産の承継を行います。

経営理念や経営手法、得意先情報などの資産化できない経営資源のほか、特許やノウハウなどの知的資産の承継を行います。

誰に承継するのか

事業承継をする際は、誰に承継するのかが最も大きな課題となります。
大きく分けて、現経営者の子供や身内に引き継ぐ「親族内承継」と、役員や従業員などに引き継ぐ「親族外承継」、M&Aなどを利用して社外の企業などに引き継ぐ「社外への承継」の3パターンがあります。

事業承継を適切に行わない場合のリスク

続いて、事業承継を適切に行わない場合、どのようなリスクがあるのか具体的に見ていきましょう。

経営者の健康リスク

年を重ねると、どうしても健康へのリスクは高まります。また、加齢とともに判断力などの能力が低下するのも、ある程度やむをえないことです。
しかし、もし事業承継の準備もないまま急に体調を崩したり、判断力が低下してしまったりすると、経営の舵取りが正常にできなくなってしまいます。

権限移譲できないことによる経営の不安定化

経営者が株式の過半数を保有したまま会長職に就き、息子が社長として会社運営にあたっているようなケースでは、実権はまだ会長が握ったままになります。
この場合、意見対立や判断遅延などによって会社経営のスピードが低下したり、経営が不安定になったりするおそれがあります。

株式やその他の事業資産が分散してしまう

安定した経営のためには、経営者による株式の集約化が必要です。しかし、十分な事業承継の準備を行わないまま経営者が死亡した場合、相続によって後継者以外に株式などの資産が分散してしまう可能性があります。その結果、経営が不安定になったり、余分な買い取りコストが発生したりしてしまいます。

経営者の思い・技術・ノウハウがうまく伝わらない

経営者の事業に対する思いや独自の技術などが、企業経営の根幹を支えているケースも珍しくありません。これらは、言語化できないいわゆる暗黙知の状態で存在していることも多いため、短期間で伝えることが難しい場合があります。
後継者を早期に選定し、これらをしっかりと承継していかなければ、事業の引き継ぎが困難になります。

事業承継の方法とその種類

前述のとおり、事業承継には承継する対象によって次のような3種類があります。
それぞれの事業承継について、詳しく解説していきましょう。

■事業承継の種類

親族内承継 経営者の親族に株式や事業を承継する
親族外承継 経営者の親族以外の役員・従業員に、株式や事業を承継する
社外への承継 親族や社内に適切な後継者がいない場合、M&Aなどで外部へ事業を引き継ぐ

親族内承継

親族内承継では、関係者との協議、後継者の教育などを経て、経営者の親族に株式や事業を承継していきます。関係者との協議には、後継者選定や社内・取引先・金融機関に対する事業承継計画の公表で理解を得ることなどが含まれます。

後継者教育のやり方には、社内教育と社外教育の2つがあります。社内教育では現経営者からの直接指導のほかに、社内の各部門で責任ある地位に就かせることで権限委譲を進めていきます。
社外教育は、グループ会社などの経営を任せたり、ほかの企業に勤務させたりすることが挙げられます。これは、社内だけでは得ることができない広範囲の知識やノウハウ、人脈の獲得なども目的となっています。また、外部の経営セミナーなども社外教育に含まれます。

株式や事業資産の承継は、生前贈与を活用するという方法があります。税の算出の方法には、暦年贈与と相続時精算課税の2種類があり、財産構成や家族構成などの条件によって有利になるほうを選択します。
生前贈与を利用しない場合は、株式や事業資産を不用意に分散させず、後継者に集中するように準備をしておきましょう。

親族外承継

親族外承継では、親族内承継と同様の準備が必要なだけでなく、関係者の理解を得るのに時間がかかることが多いため注意が必要です。

株式や事業資産の承継では、後継者に資金力がないことが多いため、MBOなどで金融機関から出資を集めて、株式を取得するのもひとつの方法でしょう。
また、できるだけ会社の債務を圧縮したり、債務保証軽減のために金融機関と交渉したりすることも重要です。

社外への承継

親族や社内に適切な後継者がいない場合は、M&Aなどで外部へ事業を引き継ぐことも検討します。また、売却することで経営者の資金確保にもつながります。

M&Aには、会社すべてを売却する方法と一部を売却する方法があります。M&Aを検討する場合でも、早い段階で専門家に相談して進めるのがいいでしょう。

スムーズな事業承継に必要な準備と進め方

それでは、スムーズに事業承継を行うためには、どのように進めていけば良いのでしょうか。
最も重要なのは、できるだけ早く取組み始めることです。事業承継は後継者の育成期間も含めると5~10年の期間が必要ともいわれています。中小企業経営者の平均引退年齢が70歳前後と考えられているため、60歳前後には事業承継の準備に着手しなければなりません。
また、経営者が急に体調を崩したり、自覚症状がないままに判断力が低下してしまったりするなど、想定外の事態が発生する可能性もあるため、早めに準備しておく必要があります。

■後継者育成に必要な期間

後継者育成に必要な期間
※中小企業庁「事業承継ガイドライン」(2016年12月)

実際の事業承継は、「事業承継の準備の必要性の認識」から始まり「経営状況や課題等の把握」「事業を引き継ぐために必要な経営状態の改善」といった準備が必要です。
その後、親族内承継と親族外承継の場合は「事業承継計画」を策定した後に事業承継を実行します。社外への承継の場合は、まず承継先を見つけることが必要になるでしょう。

安定的な経営ができる状態での承継を

事業承継は、単に次の世代に事業を引き継ぐためだけの作業ではありません。事業をさらに飛躍させることができる貴重な機会でもあります。
そのためには、本業の競争力強化や財務体質の改善などを徹底的に行い、安定的な経営が可能な状態で承継することが求められます。
東京中小企業投資育成株式会社では、事業承継に関するご相談も随時受けつけていますので、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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