SBIC東京中小企業投資育成株式会社

中小企業に資本政策は必要?事業承継に必要な株式管理とは

中小企業にとって資本政策に取り組むことは、株式公開をするかしないかを問わず重要なことです。資本と株主構成の最適化は企業の安定した経営につながるため、株式に関する課題をきちんと認識した上で、早めの対策を進めていくことが求められます。
そこで今回は、資本政策の必要性を踏まえて、中小企業が事業承継にどのように取り組むべきかを解説します。

資本政策とは?

資本政策とは一般的に、安定的な経営をしていけるよう、資本と株主の構成を見直していく取組みのことをいいます。株式会社の場合、運営においては株主の持株比率が経営権を確保できるかどうかに大きく関係するため、資本政策は非常に重要なのです。

また、資本政策は株式公開を目指さない中小企業にとっても極めて重要です。安定経営のためには、資本政策を検討して株式の集約化を目指すのが基本。また、株式公開を断念した場合にも資本政策の転換が必要となり、ベンチャーキャピタルなどから買い戻しを要求されるケースも。株式公開をするかしないかを問わず、資本政策を検討し実行していく必要があります。

資本政策を実行することで、企業の株主構成は変わっていきます。実行後の軌道修正は難しいため、専門家などのアドバイスを受けつつ、計画・実行に取り組む必要があるでしょう。

中小企業が資本政策に取り組むにあたって必要な視点とは?

中小企業が資本政策に取り組むにあたって、中長期的な視点で見ると、中小企業は株式に関するさまざまな課題に直面する可能性があります。そのため、将来の株主構成を考慮しつつ、対策することが求められるでしょう。
ここではまず、中小企業が株式の課題に取り組む際に意識すべき視点について紹介します。

中長期的な視点

中小企業が株式の課題に取り組むにあたって、中長期的に必要な視点は次の2点です。

・経営者の保有株のスムーズな移動
どの企業でも、経営者はいずれ交代しなければならない時期がやってきます。経営者の保有株については、後継者へスムーズに移動する必要があるのです。移動コストや他の相続人への配慮も踏まえて、経営者の保有株をスムーズに移動させる方法を検討したほうがいいでしょう。
・株式の分散防止と集約化
経営者に相続が発生すると、経営者が保有していた株式も相続人へ分散していくこととなります。個人株主は、経営への介入など、さまざまなトラブルを引き起こすリスクがあるため、株式の余計な分散をできるだけ防ぎ、安定的な受け皿へと集めることがポイントです。

常時必要な視点

経営者にとって常時必要な視点として求められるのは、安定的な経営権を確保するということです。その上で、中長期的な視点として、「経営者の保有株のスムーズな移動」「株式の分散防止と集約化」が必要になります。
株式についてさまざまな対策を考える際にも、必ず安定的な経営権を確保することを常に念頭に置いておかなければなりません。

■資本政策に取り組むにあたって必要な視点

中長期的な視点 経営者の保有株のスムーズな移動
株式の分散防止と集約化
常時必要な視点 安定的な経営権の確保

中小企業では普段は株式のことをあまり意識しないことが多い

ここまで解説した中長期的な視点と常時必要な視点の両方で考えると、中小企業があまり株式について意識しない理由が見えてきます。
というのも、中小企業は社長やその親族が大株主であるケースが多く、普段は安定的な経営ができています。また、経営者交代や個人株主の高齢化、相続発生については、短いスパンで発生するような話ではなく、そうしたことへ対する危機感も薄いのです。
さらに、中小企業の場合、資金調達は増資よりも自己資金や借入れがメインとなるため、増資によって株主構成が変化することもあまりありません。
このような理由もあり、中小企業は普段の経営において、株式に関する課題についてあまり意識しないことが多いのです。

株式の課題解決に取り組む際に意識すべきこと

株式の課題解決に取り組む際には、具体的にどのようなことを意識すれば良いのでしょうか。中小企業が資本政策に取り組む際に、上記の視点と合わせて意識すべきことをまとめました。

まずは課題として認識する

ここまでも解説してきたように、自社の株式に関する課題は、経営課題として意識されにくいという実情があります。しかし、事業承継や株式相続に対する準備が不足していると、株式が分散するなどのトラブルが発生するリスクも高まってしまいます。
まずは、資本政策を中長期的な経営課題としてしっかり認識することが大切です。

課題解決を先送りしない

自社の株式に関する課題を認識できたとしても、こうした中長期的な課題は、普段の経営にはほとんど影響がないということもあり、課題の対策は先送りされてしまうことも珍しくありません。
しかし、株式に関する課題は、解決に時間がかかるもの。早めに取り組まなければ、選択肢が少なくなってしまったり、個人株主と株式の相続や移動について話せる機会がなくなってしまったりします。先送りせず、早めに取り組むことが重要です。

株式関連の施策は後戻りが難しい

株式関連の施策は、一般的に後戻りが難しいとされています。
例えば、後継者以外の親族に相続された株式は、後継者が買い戻すことになると多額のコストがかかることになります。一度移動させた株式を元の状態に戻すことは難しいため、資本政策を考える際には移動後にどうなるかをしっかり検討した上で実行しましょう。

■株式の課題解決に取り組む際に意識すべきこと

まずは課題として認識する 資本政策を中長期的な経営課題として認識する
課題解決を先送りしない 課題解決の選択肢を減らさないよう早めに課題に取り組む
株式関連の施策は後戻りが難しい 株式移動後の状況を検討した上で資本政策を考える

あらかじめ備えておくべきこと

日頃からの備えが不十分なことで自社の株式に関して無用な分散やトラブルを招いてしまってはいけません。あらかじめ備えておくべきこととしては、定款の整備や株式・株主の管理が考えられます。
それぞれ、具体的にどのような取組みが必要かを解説します。

定款の整備

自社の株式の無用な分散やトラブルを防ぐために、定款で整備しておきたい事項としては、次の4点が挙げられます。

・株式の譲渡制限
株式の譲渡にあたって、取締役会の承認を得なければならないといったような譲渡制限を設けます。株式の分散を防止するために活用できます。
・株券不発行
株券不発行会社へ移行することで、株券の紛失や盗難などのリスクに備えることができます。
・相続人への売渡請求
株式を相続した人に対して、会社が強制的に株式を売り渡すよう請求できる制度もあります。
・自己株式の取得における売主追加請求権の排除
特定の株主が保有する株式を会社が自己株式として買い取りたい場合、ほかの株主にも売主追加請求権が認められており、売却の機会を与えられています。自己株式の取得における売主追加請求権の排除を定款で定めることで、特定の株主からのみ株式を買い取ることができるようになります。

株式の日常的な管理

株式会社は、自社の株主を把握・管理するために、株主名簿を作成しなければならないと会社法で定められています。株主名簿には、株主の氏名・住所・保有株式の種類と数、取得年月日を記録し、株券を発行している場合はその番号も記載します。

中小企業の場合、株主数が少なく異動の機会もあまりないということもあり、そもそも名簿を作成していなかったり、更新していなかったりということも珍しくありません。
しかし、株主名簿を作り、更新などの管理をしっかり行わなければ、名簿上の株主と真の株主が異なる場合にトラブルの原因になることもあります。また、全株主の同意が必要となる手続きをとるときに、所在不明の株主がいると手続きを進められません。日頃から名簿の管理を通して、株主の正確な所在を把握しておくことが大切です。

■あらかじめ備えておくべきこと

定款を整備する 株式の譲渡制限
株券不発行
相続人への売渡請求
自己株式の取得における売主追加請求権の排除
株主名簿を作成・管理する

株式を移動・増資する際の留意点

中小企業の場合、株主が異動するケースは限られてきます。ただし、役職員へ株式を移動させたり、増資したりすることなども考えられるため、そのような場合の留意点を把握しておく必要があるでしょう。

株式を役職員に移動する場合

例えば、経営者の保有株の一部を役職員へ移動する場合、移動後も経営者が安定した経営権を確保できる状態であることが前提条件となります。そのため、万が一のことも考えて、役職員が株式を保有する比率は全体の3分の1未満に抑えることを意識しておくとよいでしょう。

また、将来的に後継者へ株式を移すことを踏まえて、経営者の保有株の一部を役職員へ持たせることで、後継者が引き継ぐ株式を減らす方法もあります。そうすることで、後継者が引き継ぐ際のコストを抑える効果が期待できます。

ただし、役職員に株式を直接保有させた場合、退職時にトラブルが生じる可能性も考えられます。トラブル防止のためにも、あらかじめ役職員の持株会を設立するといった手法をとる必要があるでしょう。

増資する場合

中小企業が増資する場合、経営者が引き受けるケースが多くなります。この場合は、経営者の持株比率が高まるため、特に問題はありません。
ただし、経営者が引き受けるケースでない場合は、調達額が多くなるほど経営者の持株比率が下がります。調達額や引受先の属性によっては、安定した経営権が阻害されるリスクも出てくるため、注意が必要です。

なお、将来的に後継者へ株式を移すことも考慮すると、中長期的な安定株主となりうる人に保有してもらうことで、移動コストを抑える効果が期待できます。
後継者がすでに決まっており、資金的な余裕もあるという場合は、経営者ではなく後継者が増資を引き受けることで、その部分の移動コストを考慮する必要がなくなるため、選択肢のひとつとして検討してみてもいいでしょう。

将来の株主構成を考慮した上で早期対策を

中小企業の資本政策において将来の株主構成を考える場合、まず安定的な経営権を確保し、株式の分散防止と集約化を進めることが基本です。
中長期的に自社の変化や経営課題を見据え、それに対して必要な対策を経営者主体となって検討し、できるだけ早めに施策を講じることが大切です。
東京中小企業投資育成株式会社では、経営の安定化や事業承継などに関するさまざまなサポートを行っております。お悩みがありましたら、ぜひご相談ください。

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