SBIC東京中小企業投資育成株式会社

CASE4

AIで錦鯉を識別!?最先端技術で注目を集める

株式会社メビウス

新分野への挑戦状況を学生に強くアピール

学生に会社を知ってもらうためには、目立つことも重要だ。AI技術で錦鯉の個体を識別するシステムを開発し話題を集めた会社がある。新潟県新潟市のメビウスだ。以降、さまざまな企業からAI技術を応用した仕事の相談が舞い込んでいる。2019年度の新卒採用にも好影響を与えるだろう。
 
同社はソフトウエアの受託開発や保守をメインにしている。しかし、業務の幅を広げるために新しい技術の開発にも力を入れなければならない。そこで以前より、資本関係のある三井情報のR&Dセンターに技術者を一定期間派遣し、共同研究をさせている。今回の錦鯉の個体識別システムも、共同研究による機械学習の研究成果を事業化へ繋げた事例だった。その経緯を山田新一社長はこう説明する。

「新事業の検討をしているときに、機械学習と地場産業を組み合わせて何かできないかとのアイデアが出てきました。ちょうど社員の知り合いの養鯉場から協力が得られそうでしたので具体的な検討を始めたのです」
 
錦鯉は体格や色、模様の優れた個体が選別される。稚魚の成長に応じて数回の選別を行うが、時間がかかる。同社はAIに錦鯉の動画をスライスした画像を学習させ、鯉の骨格やひれの形で判別できるようにした。このAI技術は、さまざまなビジネスに応用が可能だという。
 
開発を進めると同時に助成金も申請した。すぐに、にいがた産業創造機構の「先進技術開発支援事業」に採択され、とんとん拍子に事業化が進んでいった。新しい分野への取り組みは、興味を持つ学生も多いので、会社説明会でも積極的にアピールしている。とくに理系の学生から反響が大きいという。
 
同社が採用に力を入れるのは、IT業界特有の事情もある。

「どんな業界でも人材は重要だとは思いますが、とくにIT業界は人がすべてです。採用できない会社は淘汰されていくでしょう。ですから、新卒採用にも中途採用にも積極的に取り組んでいるのです」

IT業界であっても文系の学生を積極的に採用

新卒は毎年10人程度を採用しているが、今後は社員数のおよそ1割、15人程度を確保していきたいと考えている。
そのためには、働きやすい環境を整える必要がある。同社の特徴は勤務地の希望を出せることだ。

「新潟市、長岡市、東京と3カ所の事業所がありますが、社員全員が勤務地の希望を出せるようになっています」
 
一人ひとりの希望を実現するのは難しいのではないかと思われるが、ほぼ希望通り叶えられているという。長年、この仕組みを続けているので、それぞれの事業所を希望する人がどのくらいいるか、おおよそ把握できている。とくに新入社員には積極的に希望を聞くようにしている。
 
実際の採用活動はどのように行っているのか。新卒ではまず、就職支援サイトを活用して応募者の母集団を作ることに力を注いでいる。少しでも多くの学生に会社を知ってもらうため、学生が検索したときに上位に表示されるようなオプションサービスにも投資している。検索で気になった会社が見つかれば、多くの学生はホームページをチェックする。そこで社内のデザイン担当社員に会社のホームページを作成させ、学生に会社の内容が伝わりやすい工夫をしている。
 
総務部人事担当の古泉ゆかり氏は「3月の解禁までに、会社をいかに認知してもらうかが勝負です」と言う。
 
そのため、夏ごろからインターンシップを受け入れ、業務体験などをしてもらいながら、解禁までつなげていく。解禁後は会社説明会やセミナーを積極的に開催する。東京と新潟の双方で実施し、社長が自ら話をする。

「セミナーにトップが参加する会社は少ないので、『社長と先輩社員に会えるセミナー』とアピールしています」と総務部副部長の上村京子氏は言う。
 
同社はできるだけアットホームな職場環境を作るため、社内を私服にしている。学生にも気楽に参加してほしいとの思いから、会社見学やセミナーには私服で来ることを推奨している。
 
実際の選考は、書類選考、適性検査、面接と段階を進めるが、良い学生が見つかれば、個別で柔軟に進めていく。

「本当に良い学生であれば、社長に伝えて面接のときに内定通知を出したりすることもあります」(上村氏)
 
IT業界ではあるが、文系の学生も積極的に採用している。

「財務など業務系のシステム開発も数多く受託していますので、お客様とのコミュニケーション能力も重要になります。その点では文系の学生のほうが向いていることもありますね」(山田社長)
 
お客様と話し合いをしながら、システムを設計していくような仕事では文系の学生のほうが能力を発揮するというわけだ。文系でも興味がある人なら1、2年の勉強をすれば、技術をマスターできるという。

夏休み研修で内定者の絆を深め辞退者を減らす

にいがたBIZ EXPO 2018で錦鯉個体
識別システムを実演するスタッフ。

採用が決まった学生に対しては、夏休みに1週間程度の研修を実施している。それは、文系の学生に同社の仕事がどんな内容か触れてもらう機会でもある。入社してから適性がないことに気づけば、本人も苦しむことになる。事前に経験してみることで、興味を持てるかどうかを判断してもらうのだ。
 
加えて内定者同士、同期としての連帯感を高めてもらう目的もある。研修の実施によって交流が深まり、翌年の春までに辞退する人はほとんどいないという。
 
IT業界は長時間労働のイメージがあるので、採用の際には残業時間のデータを公開している。1人当たりの残業時間は現在、月12時間程度だ。

「とはいえ、仕事には山や谷があって、夜遅くまで仕事をしなければならないときもありますから、その点も正直に説明しています」(古泉氏)
 
できるだけ仕事量を平準化することと、残業時間を減らすことを目的に、協力会社を積極的に利用している。

「以前は自分たちで抱え込んでやっていましたが、6、7年前から協力会社を活用するようになりました。現在では全体の35%程度を協力会社にお願いしていますね」(山田社長)
 
自社で抱え込むと受託できる仕事にも限界があるが、協力会社を利用することで余裕ができるし、仕事の幅を広げることにつながっている。
 
2018年からは多様な働き方を実現するため、テレワークも開始した。きっかけは2017年の大雪で、電車もバスも止まってしまい、出勤できない社員が大量に発生したことだという。
 
社員は天気予報を見ながら翌週の予定を決めて、テレワークを申請できるようにしている。将来は育児や子育ても対象にしていく予定だ。
 
そもそも同社は、事業所が3カ所に分かれているため、社員がどこにいてもわかるように1週間分の仕事の内容や残業時間を事前に申請するようにしている。その仕組みがあったからこそ、テレワークも簡単に導入できた。
 
新卒採用に力を注ぐ一方で、即戦力として中途採用も積極的に行っている。数社のリクルート会社と契約し、いい人材が見つかれば随時面接をする。

「東京の大企業で働いていた人が、新潟にUターンするために転職してくるケースも少なくありません」
 
新潟出身の女性と結婚して新潟に転居する人も多いという。そういったケースでは地方に事業所があることはメリットとなり、優秀な人材を確保しやすくなる。同社は自社が置かれた環境を最大限に活用し、採用に成功しているといえそうだ。

Profile

山田新一社長

会社名     :株式会社メビウス
主な事業内容  :ソフトウエアの受託開発
本社所在地   :新潟県新潟市
社 長     :山田新一
資本金     :1億2000万円
創 業     :1983年10月
従業員     :177名
会社HP                     :http://www.mob.co.jp/HP/

文=向山勇
撮影=編集部
写真提供=メビウス

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