SBIC東京中小企業投資育成株式会社

CASE2

「大量行動」を武器に大卒、院卒の人材を確保

株式会社南雲製作所

学生の目に留まるよう就職支援サイトを活用

人手不足が深刻になるなか、大卒、院卒の新入社員を順調に確保している中小企業がある。新潟県上越市に本社を置く精密金型メーカーの南雲製作所だ。過去5年間で新潟大学から5名を採用し、さらに富山大学や長岡技術科学大学からも採用している。人材の確保に頭を悩ます経営者から見ればうらやましい限りだが、同社も以前は国立大から応募がくるなどとは夢にも思っていなかった。同社に何が起きたのか。米桝弘社長はこう語る。

「5年前に偶然、国立の新潟大学の学生から応募がありました。面接をしてみると、私と対等に話ができるほど専門的な知識を持っている。正直、驚きました」
 
この経験で大企業と中小企業の差を思い知らされた。優秀な人材が数多く集まるからこそ、大企業はさらに発展していく。すべては“人”次第である。

「入社してからの教育も大事ですが、採用はさらに重要です。会社に合った優秀な人材をいかに確保できるかが会社の将来を左右します」
 
何としても優秀な人材に来てほしい──。そんな思いで採用活動を見直すことにした。それまではハローワークを利用したり、自治体の会社説明会などに参加したりしていたが、それでは大学生の目には留まらない。どうすればいいのか。調べてみると、大学生の就活はリクナビやマイナビなど就職支援サイトへエントリーすることから始まることがわかった。

「就職支援サイトへ登録するには、100万円単位の費用がかかります。しかし、登録しなければ学生にとっては存在しない会社に等しいのです」

思い切って登録してみると、少しずつ学生から問い合わせがくるようになったが、メリットはそれだけではなかった。採用担当で総務部管理部部長の渡部賢一氏はこう語る。

「採用にあたっては、学生との接触回数をいかに増やすかが重要です。就職支援サイトは合同説明会を開催して学生を集めてくれますので、そこに参加することで直接、大学生にアプローチする機会が得られました」
 
さらに合同説明会に参加することで、大学の就職課や新潟県庁などとも関係が深まり、さまざまなイベントにも出席するようになったという。
 
米桝社長も学生を前に、会社の理念を直接話す。

「山登りに例えると、現在は標高2540メートルの妙高山。2020年には富士山の山頂、2025年にはエベレストの山頂を目指している。そんな話をします」(米桝社長)
 
そのためには、社員も人間的に成長して、社会に貢献しなければならない。勉強をしたくない人はこの会社に向かないことを、トップ自らが伝えているのだ。

「会社は良くも悪くもトップが思ったことしか実現しません。入社してから『こんなはずじゃなかった』と思われたくありませんから、私が自ら学生に伝えるのです」

インターンシップを積極的に受け入れる

合同説明会では採用担当者は積極的に動く。ただ待っているだけでは学生は来てくれない。チラシを配ったり、声を掛けたり積極的にアプローチをする。
 
その背景には米桝社長の信条がある。それは「大量行動」だ。何事も効率よくできれば、それに越したことはないが、100名規模の会社では効率にも限界がある。であれば、足で稼ぐしかない。そう考えているのだ。あと一押しで入社を決断しそうな学生には、社長自ら大学に行き、説得する。採用も営業も、必要ならばトップが動く。

「それが無駄になることも少なくありません。しかし、行動をしなければ成功も失敗も奇跡も起こらないのです」
 
もう1つ取り組みを始めたのがインターンシップの受け入れだ。インターンシップは、学生が就職前に企業で就業体験できる制度で、希望する学生が最近増えている。マイナビの「2020年卒マイナビ大学生インターンシップ前の意識調査」によると、現在3年生の学生のうち7割が2018年6月末までに、インターンシッププログラムへの申し込みなど、何らかのアクションを起こしているという。また、在学中に体験を希望する回数も平均「4.2回」と、積極的な参加を望んでいる。

「インターンシップが直接、採用につながるとは考えていません。参加した学生が口コミで弊社のことを少しでも広めてくれればと思っています」(渡部氏)

採用担当の渡部賢一
総務部管理部部長

実際にインターンシップを受け入れるのは簡単ではない。専任担当者を付ける必要があるし、宿泊先なども手配しなければならない。会社としては大きなコストが発生する。それでも徐々に効果は出つつある。同社ではインターンシップに参加した学生を就職に誘ったことはないが、後に採用試験に応募してくるケースは増えているという。
 
同社がインターンシップを積極的に受け入れることが広まり、さまざまなところから声がかかるようにもなった。インターンシップを必須科目にしている大学が多く、新潟大学からは定期的に参加者がいる。それが同社を知ってもらういい機会になっている。
 
新潟県庁の職員をインターンシップで受け入れてほしいとの打診もあった。民間企業を体験する目的だから同社の採用活動に直接貢献するわけではないが、繋がりが何かの役に立つかもしれないと考え、受け入れた。

トップが自ら動いて最後の一押しをする

インターンシップの学生も会社を
知ってくれる大切な存在。

実は、米桝社長は新潟大学で学ぶ現役の大学院生だ。会社から大学までは約130キロメートルあり、車で1時間以上かけて通っている。その目的は2つある。
 
1つはトップ自らが能力を高めること。
「一般社員が研修を受けるのも大事ですが、トップが受ければその効果はさらに大きくなります」(米桝社長)
 
日々の仕事に追われている一般社員は研修に参加しても、それきりになってしまうことが多い。それに対してトップは、学んだことを次の日から実践することも可能だ。即効性の意味で一般社員よりも絶大な効果があるというわけだ。

「私の肩には、社員とその家族300人の生活がかかっていますから、常に危機感があります。そんな思いもあって通っているのです」
 
もう1つは、リクルートだ。優秀な学生と出会えれば一本釣りで採用したいと考えている。それがなくても新潟大学の学生が応募してきたときには、自分も大学院生であることを明かして「一緒にがんばろう」とダメ押しすれば、効果は大きいという。

「大量行動」によって、応募者は徐々に増えてきたが、新たな悩みもある。ここ3年ほどで内定辞退が増えていることだ。同社では10名ほどに内定を出すが、半数程度が辞退するという。

「おそらく弊社が大企業の滑り止めになっているのでしょうね。それでも構いません。以前は滑り止めにさえならなかったのですから」(米桝社長)
 
少しでも辞退を減らしたいとの思いから、渡部氏は学生のもとに赴き、直接内定通知書を手渡すことにしている。

「効果があるかどうかはわかりません。しかし、会社の思いを伝えるには直接会うしかないと思っているのです」
 
米桝社長自身が出かけていくこともある。

「『社長自ら来てくれたので入社しました』という社員が2名いますよ」(渡部氏)
 
まさに行動の積み重ねが、採用につながっているのだろう。

Profile

米桝弘社長

会社名     :株式会社南雲製作所
主な事業内容  :精密金型の設計・製作
本社所在地   :新潟県上越市
社 長     :米桝弘
資本金     :9500万円
創 業     :1947年7月
従業員     :95名
会社HP                     :https://nagumo-ss.com/

文=向山勇
撮影=編集部
写真提供=南雲製作所

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