SBIC東京中小企業投資育成株式会社

会社を10倍強くする!独自技術の深掘り法 CASE3

来る者は拒まず。難しい仕事がスキルを育てる

イオカ電子株式会社

長年培った技術を需要の変化に適応させる

経済界でも、「幸運の女神には前髪しかない」という格言が、しばしば使われる。ビジネスチャンスが舞い込んできたら、まさにそのとき、すかさずキャッチするしかないということだ。それには、必ずつかんで逃さないために普段からの努力がモノをいう。機械の組み立て受託を主力事業としている新潟県のイオカ電子は、長年培ってきた生産技術を生かし、生産システムのエンジニアリングビジネスという新規案件を獲得、第二の事業の柱づくりにつなげている。

同社は1970年設立で、創業時は縄編みを手がけていたが、大手電機メーカーが新潟に工場を開設したのを機に、その工場から電卓の組み立てを引き受けるようになった。さらに、別の工場からテープ録音機器用の磁気ヘッドの組み立ても請け負うと、事業は右肩上がりに成長していった。同社の3代目で、大手電機メーカー勤務を経て、92年に入社した井岡秋夫社長は、「当時、売上げの約90%を磁気ヘッドが占めていました」と振り返る。ところが、そんなイオカ電子にも、新しい時代の波が押し寄せてきた。

プラザ合意後に円高が進行、日本の大手電機メーカーは価格競争力を維持するため、80年代後半から生産拠点を続々と海外に移転するようになった。イオカ電子の得意先も例外ではなく、「磁気ヘッドの組み立て事業は先細りになると、先代は危機感を強めました」と、井岡社長は明かす。さらに追い打ちをかけたのが、90年代初頭に起こったバブル経済崩壊。カセットテープのニーズが落ち込んだのにともなって、磁気ヘッドの生産も激減していった。イオカ電子の工場を半ば専属工場のように扱ってきた大手電機メーカーには、「うちも今までのような大量発注ができないから、他社の仕事もどんどん取ったほうがいい」と宣告された。

だが、「捨てる神あれば、拾う神あり」で、イオカ電子には救いの光も差し込んでいた。実は、90 年からグループ会社で「リレー」という機器の組み立てを受託、その事業が軌道に乗って、増産態勢に入っていたのだ。

営業は自らかけない口コミで新たな仕事を受注

リレーとは、電磁石の働きを利用して、機械の動作の「オンとオフ」を切り替える装置。家電製品や自動車、産業機械といった、さまざまな機械の中に組み込まれている。イオカ電子は、エアコンなど家電向けリレーの組み立てからスタート、次第に車載用リレーの組み立てがメーンとなっていった。現在、同社の売上げのうち、約3分の2がリレーで、その約60%が車載用だという。自動車の電装化や電気自動車の普及によって、車載用リレーの市場は今後、さらなる拡大が予想されている。
「意外かもしれませんが、当社は営業をかけて、仕事を取ってくることはしません。それよりも、技術力を向上させることを優先します。ただし、『来る者は拒まず』という先代からの経営方針で、せっかく依頼していただいた仕事は、なるべく断らないようにしています。取引先からの紹介や問い合わせに応じて、仕事をどうやったら実現できるか考えて決めるパターンが多いですね。リレーの仕事に出合えたのも偶然、声をかけていただいたからなんですが、バブル崩壊前後は経営が厳しかったので仕事を選ぶ余裕がなく、新しい取引先を増やすことを心がけたのも、プラスに働いたかもしれませんね」

井岡社長はこう説明するが、イオカ電子は、運に恵まれていただけではない。幸運の女神を引き寄せるだけの、力を備えていたのである。

同社が営業に力を入れなくてすむのは、同社の技術力を評価した大手メーカーのほうから、引き合いがくるからだ。例えば、リレーの組み立てを委託した大手電機メーカーは、同社の磁気ヘッドの高い生産技術に目をつけた。磁気ヘッドの生産技術はリレーにも応用でき、同社なら高品質のリレーを生産できると見込んだわけだ。一方で、依頼を断らないのは、同社にそれだけの自信があるからだろう。「直接指名の場合は、是が非でも引き受けますね。というのも、大手メーカーは十分にリサーチした上で、信用できるメーカーにしか生産を委託しないからです。いわば大手メーカーにお墨付きをもらったようなものです。新しい仕事にチャレンジすれば、当社にとっても、スキルアップにつながりますから」(井岡社長)。

大手メーカーの問題を自社の技術で解決

同社の技術力を目当てに難しい仕事が舞い込み、それをこなすことで、同社の技術力はさらに高まる。また、その評価が口コミで広がり、同社に仕事が集まるという好循環ができている。

機械の組み立て受託を事業の柱とする同社は、生産技術に磨きをかけてきた。得意とするのが、顧客ニーズにそった合理的なコストで機械を組み立てる技術だ。「雪深く、首都圏や近畿圏から離れている新潟は、顧客との距離、物流費などの生産コストがかさみやすく、生産拠点としては地理的に不利だととらえています。しかも、海外とのコスト競争もある環境で生き残るには、欠かせない技術なんです」(同)

その中でも特に開発に力を入れているのが、「生産システムの自動化技術」。人件費の安さで攻勢をかける新興国のメーカーに対して、強力な武器となっている。さまざまな種類の工作機械や産業機械をつなげて、ITで制御する効率的な生産ラインを自社で設計できる。「そうした小回りを利かせた生産ラインの設計は、大手メーカーが不得手なんです」(同)。ときには、顧客メーカー仕様の生産ラインを、合理化のために組み替えるソリューションを行うといった、コンサルティング機能まで有
している。「大手からは、コストダウンが難しそうな案件しかきませんが、コストが最低条件をクリアし、生産の仕組みがわかっていれば、収支の問題の大半は、創意工夫で解決できるんです。最初は赤字でも、ドル箱に変身する仕事も少なくありませんよ」(同)

実は、そうした生産技術を生かして、同社は生産システムの外販、すなわち、エンジニアリング事業(ファクトリエンジニアリング)にも乗り出している。井岡社長が同社に入って1~2年経った頃、独立して設備設計の会社を立ち上げた大手電機メーカー時代の元上司から、「人手が足りないから、仕事を手伝ってくれ」と、頼まれたのがきっかけだった。第一号機は、ハードディスクの生産ライン向けの洗浄装置だったという。ファクトリエンジニアリングは、基本的にオーダーメードの仕事だ。これまで医療機器向けの生産システムなどを手がけてきた。完成までに時間も手間もかかり、試行錯誤を繰り返すことも少なくないが、1件当たりの売上げは大きいという。

さらに、自社の生産技術を活用し、生産システム関連の自動化機器開発にも着手している。2015年には、クリーンルームの空気中の微細な粉塵を検知し、半導体などの製造歩留まりを高める生産ライン監視システム「シーズシー」を上市した。5年前には、得意先の紹介で三重県の機械部品メーカーも傘下に収めた。「部品製造から機械の組み立てまでフルラインの生産が可能になり、より幅広いニーズに対応できるようになりました」(同)

現在、ファクトリエンジニアリング事業は、年商規模が7億~10億円で、同社の“第二の柱”になりつつある。国内だけでなく、すでに海外からの受注もあるという。「将来的には、中国などへの生産システムの輸出も増やしたい。生産ノウハウなら、コスト競争に関係なく、世界のどこにでも通用するオリジナル商品になりますから。このたび、投資育成さんから、ある専門メーカーさんとのビジネスマッチングの機会もいただき、新たな展開に期待しています」と、井岡社長は意気込んでいる。

イオカ電子株式会社

井岡秋夫社長

主な事業内容 :コネクタ・スイッチ・リレーなどの制御機器、生産システム関連機器製造ほか
本社所在地 :新潟県阿賀野市
資本金   :3800万円
創 業   :1970年
従業員数  :130名
会社HP  :http://www.ioka-kk.jp/

© Tokyo Small and Medium Business Investment & Consultation Co.,Ltd. All Rights Reserved.