SBIC東京中小企業投資育成株式会社

会社を10倍強くする! 独自技術の深掘り法 CASE2

受託開発で培ったノウハウでオリジナル製品を開発

株式会社コスモスウェブ

設計に専念することで技術力に磨きをかける

「メード・イン・ジャパン製品」の品質・性能が優れている理由の一つとして、大手メーカーのモノづくりを支える日本の中小メーカーのレベルが高いことがよく挙げられる。中小メーカーは、取引先である大手メーカーの難しい要望に応えるうちに鍛えられ、高度なスキルやノウハウを自然に修得しているのだ。ところが、中小メーカーの多くは、そうした自社の経営資源の価値に気づかず、「宝の持ち腐れ状態」になっているケースが少なくない。そんな中、大手メーカーからの受託開発事業で培った技術を活用し、オリジナル製品の開発につなげているのが、宮城県仙台市にあるコスモスウェブだ。

同社は1989年創業で、電子機器の回路の受託設計によって事業基盤を築いた。顧客企業のニーズに対応して、プリント基板の設計や実装も請け負うようになり、さらにはコンピュータで機械を制御したりする「メカトロニクス」の受託開発へと、事業領域を広げていった。また、プリント基板などのハードウェアだけでなく、プログラミングなどのソフトウェアの開発もこなすようになった。同社の特徴はハードやソフトの"設計"に特化している点。創業以来、同社の経営に携わってきた吉村直幸社長は、「当社は受託生産も手がけていますが、生産はすべて外注化しました。設計に専念することで、技術力に磨きをかけやすくするためです。また、生産機能を必要に応じて外部から調達するファブレスのほうが、生産効率が高いからです」と説明する。現在、社員約70人のうち、約30人が設計を担うエンジニアだという。

同社の取引先の顔ぶれには、電力会社や大手電機メーカーグループ、大手自動車メーカーグループなどがズラリと並ぶ。「事業拡大にともない、自社製品開発を見据えて電子工学だけでなく、電気工学や機械工学のエンジニアの採用も5年以上かけて人員を増やしていきました。その結果、エレクトロニクスに関わる幅広いスキルやノウハウが、社内に蓄積されていったのです」と、吉村社長は振り返る。

ただし、同社はメーカーとはいえ、受託開発専業だったので、いわば"テクニカルサービス"に近い事業内容だった。また、基本的には"一品限り"のオーダーメードの仕事なので、精魂こめた製品でも、顧客企業に引き渡された後は手元に残らないケースも多かった。

簡易操作で価格も抑えた競合を上回る独自機能を開発

そんな同社に転機が訪れたのは、小型産業用ロボット「SPLEBO(スプレボ®)」を独自開発、2009年に発売してからだ。その経緯について、吉村社長は次のように明かす。「ある大手メーカーから、卓上ロボットの設計を依頼されたのが、開発のきっかけでした。調べてみると、汎用の卓上ロボットは、すでに約20社のメーカーが販売していました。ところが、確かに人間と同じように小回りが利くのですが、機能が限られていたのです。そうしたネックを解消した新型の卓上ロボットなら、『いけるんじゃないか』と閃いたんですね。さまざまな電機メーカーや電子機器メーカーと取引してきた経験から、卓上ロボットの導入に適した生産ラインが、とても多いことを知っていたからです」

スプレボ®は、ほかの卓上ロボットに比べて、作業の自由度が高いのが特徴。ネジ締め、研磨といった基本機能別のタイプを用意しているが、「上下・前後・左右の動きができるので、さまざまな生産ラインに対応して、カスタマイズしやすいのが強みです」(吉村社長)。例えば、スプレボ®にカメラを取り付ければ、生産ラインの検査業務に役立てることもできる。また、PCで簡単に操作できるので、新人の作業員でも使いこなせる。さらに、価格も抑えて、生産ラインに導入しやすくした。そのほか、卓上ロボットを遠隔操作するための「モーションコントローラ」、超音波機器用の高周波電源といったオリジナル製品を、次々と世に送り出している。

オリジナル製品は当然のことながら、開発から販売まで時間がかかる。多額の先行投資が必要で、利益もすぐには出ない。製造・販売の責任・リスクも自社で負わなければならない。実際に、スプレボ®は、ソフトを1年がかりで修正し、発売後も2年間は赤字が続いたという。しかし、メリットも大きいと吉村社長はいい切る。
「一つはプライシングですね。オリジナル製品の場合、市場の動向に左右されるとはいえ、当社が値決めの主導権を握れます。もう一つは社員の能力アップです。ゼロベースからの製品開発なので、エンジニアは思考力が高まるし、幅広いスキルが身につきます。基板の受託設計にとどまらず、自社製品やブランドを持てるとなれば、モチベーションも違いますしね」

多くの大手メーカーと取引があることは、オリジナル製品の開発・販売にも有利に働くと、吉村社長は見る。「大口顧客のニーズが初めから見えているので、製品開発の方向性を決めやすいんですね。それに、製品が完成したら、どの業界にどのくらいの顧客がいるのかも予想できるので、市場調査や販路開拓に、余分な力を割かなくてすむわけですよ」

開発難易度が高くライバルが少ない分野へ進出

オリジナル製品では2016年、医療機器領域にも参入した。医学界に縁が深い吉村社長の知人のエンジニアが独立、それを機に共同事業を立ち上げることにしたという。宮城県など自治体の支援を受けられたことも追い風になった。
「基板の受託設計からスタートし、卓上ロボットが自社ブランドに育った。次は医療分野で社会に貢献していきます」(吉村社長)

医療機器の第1弾として、聖マリアンナ医科大学などと共同で「呼吸機能測定装置」を開発した。センサーの開発などで得た技術を生かしたものだ。肺に挿入する内視鏡と組み合わせることで、肺胞(気管支の先端にある袋状の器官)のガス交換の状況を確かめ、肺の呼吸機能や血流の状態をモニタリングできる。肺胞内の酸素や二酸化炭素の量をミクロン単位の高精度で測れる医療機器は世界初で、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や気管支ぜんそくといった肺疾患の診断や治療に役立つという。厚生労働省の承認手続き中だが、発売後は年間数億円以上の売上げを目指す。そのほか、手術室のLED照明(無影灯)の照度自動制御システムなども開発している。

吉村社長によれば、自前の医療機器の製造・販売は、国の許認可が下りるまで数年かかるという。「医療機器は、ほかの機械よりも開発が難しいのですが、それだけに他社が進出しにくいので、ライバルが少ないという利点もあります」(同)。現在、同社の売上げの約90%を受託開発事業が占めるが、今後は医療機器事業を第三の柱として育成、売上げ構成比で20~30%の達成を目指す考えだ。

そのほか、ソフト開発のノウハウを活用し、店舗や医療機関といったメーカー以外の業種からソフト開発を請け負う新規事業にも意欲を示す。さらに、東北地方の電子機器メーカーをM&A(企業合併・買収)で事業承継したことで、「生産機能もグループ内に取り込み、一気通貫の受託生産サービスも提供可能になりました」と、吉村社長は意気込む。今夏には新社屋への移転も行った。これまでにまいたさまざまな種が芽を吹き、一挙に花を咲かそうとしている──それが、進化を続けるコスモスウェブの今の姿のようだ。

株式会社コスモスウェブ

吉村直幸社長

主な事業内容 :電子回路・ソフトウェア・プリント基板の設計、卓上ロボット開発製造ほか
本社所在地 :宮城県仙台市
資本金   :7000万円
創 業   :1989年
従業員数  :71名
会社HP  :http://www.cosmosweb.com/

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